ソードワールド2.5におけるシナリオ作成の手引き

0.はじめに

 本記事は「ソードワールド2.5(著者:北沢 慶先生/グループSNE)」におけるシナリオ作成初心者に対して、シナリオを作成する上での参考となることを願って書いたものである。
 他システムでのシナリオ執筆経験の有無はひとまず置いておいて、筆者の考えと経験を元に「ソードワールドのシナリオを書いてみたい」と思う人の助けになれば幸いである。

 本記事では、ベーシックなシナリオを作成するために必要な最低限の考え方と実際に必要なデータを挙げつつ、シナリオ作成に取り組んでいく。

本記事は、「グループSNE」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『ソード・ワールド2.0/2.5』の、二次創作です。
(C)GroupSNE
(C)KADOKAWA

1-1.「シナリオ」とは?

 筆者と本記事は「シナリオ」を3つの情報から構成されるテキストデータとして定義し、話を進めたいと思う。

・プレイヤーの選択や判定結果に応じて
 シーンやイベントの演出分岐、ゲーム的な処理を行う「処理」

・GMからプレイヤーに語られ、物語を共有するための「描写」

・各種アイテムやエネミーの情報など、
 ゲーム中に効果や数字などを参照する「データ」

 これら3つを取り回しの良い配置でテキストファイルとしてまとめたものを、筆者は「シナリオ」として扱っている。

1-2.「シナリオ」と「物語」について

 TRPGのシナリオ作成についてそのノウハウを語る際、「起承転結」や「序破急」といったストーリーラインに即した「物語」を作り、それに応じてゲーム的な処理を付け足していく……といった手法が語られることが多い。
 このため、「シナリオ」を作成する際には「物語」の創出が必須スキルであるかのように語られることも往々にして見受けられる。

 しかし、筆者は(少なくともこの「ソードワールド2.5」においては)「シナリオ」を作成することと「物語」を創出することは完全なイコールにはなりえないと考えている。

 前項で述べた「シナリオ」は言い換えれば「セッションを遊ぶために参照する筋書きとデータ集」であり、凝った物語が常に求められる訳ではないからだ(もちろん物語性に優れたシナリオは評価の対象にもなる)。

 本記事で述べる「シナリオの作成」という言葉は「物語を作る方法」ではなく、「できるだけ物語を作らずとも“遊べる”シナリオを作成する方法」という意味で用いることにする。

2-1.物語ではなく事象を配置する

 「“遊べる”シナリオ」とはどのようなものかについて説明する。
 ソードワールド2.5は「冒険者であるPC達が、持ち込まれた依頼に応じた困難や危険を解決する」ことを基本的なプレイスタイルとしている。

 即ち、背景や因縁などが無くても「PCが解決すべき課題」に対してPCとPLが技能や知恵で取り組めば、ゲームとしては十分成立する、と考える。

 このため、本質的にシナリオにおいて要求されるモノは以下のポイントに絞られる、と筆者は考えている。

・PC達がその冒険に参加するに足る動機

・PC達が解決するべき課題

 そこで、上記2点を元にそれ以外の要素を配置していき、シナリオの骨子として必要な情報を付け足していく。
 いわば「起」と「転」だけを先に設定し、そこから必要最低限を逆算して話を作る手法になる。
 この骨子を基にして、1-1にて述べた3つの情報を当てはめていく。

2-2.冒険者が必要なシチュエーション

 実際に前項で述べたポイントには何が当てはまるかについて考える。
 前者の「PC達がその冒険に参加するに足る動機」については、ほぼ「依頼の報酬」がその役割を果たすと考えて良い。
 たとえばキャンペーンセッションなどで複数のPCが何らかの因縁や事情を抱えている場合はともかく、単発セッションを想定した汎用的なシナリオにおいては 「報酬が相場と同じか、それ以上ある」や「その危険に見合っただけのメリットがある」とPCに明示できるようにした方が手間がかからずに済む。
 具体的には基本ルールブックのP399を参照すれば良い。

 後者の「PC達が解決するべき困難や危険」については様々な要因を設定することができる。

 第一に「蛮族の侵攻」が挙げられる。
 アルフレイム大陸における人族の生息領域は限定的であり、主要都市以外は常に一定の危険がある、と考えて良いだろう。
 主要都市から徒歩で半日ほど歩いた農村や山岳地帯にある集落など、「守りの剣」の結界から離れ、多くの人族が行き来しない場所には蛮族の魔の手が迫ることが多い。
 この場合、「村の近くの森に住み着いた蛮族を追い払って欲しい」や「街道に蛮族が出るので、町に作物や医薬品を運ぶ時に護衛して欲しい」といったものが主要な依頼になる。

 第二に「魔剣の迷宮」が挙げられる。
 ラクシアの魔剣は放置されると使い手を求めて迷宮を作り出す、という厄介な性質を持っている。優れた使い手を呼び寄せるため、相応の宝と番人たる魔物を召喚するのも特徴である。
 迷宮の最奥部には魔剣があるため、この迷宮の情報が冒険者ギルドに持ち込まれることも多い。

 第三に「奈落の魔域」が挙げられる。
 システムが2.5に版上げされてから導入された、アルフレイム大陸に固有の現象である。
 アルフレイム大陸の各地には「奈落の魔域」と称される直径数m~数十mの漆黒の球体が出現する。
 この球体は内部が異空間と通じており、どことも知れない古代遺跡や無人の村、物理法則がめちゃくちゃで荒唐無稽な空間など、様々なバリエーションが存在する。
 「魔神」がこの魔域の番人となることが多く、遺跡や迷宮とは違った雰囲気のダンジョンが広がっている。
 より具体的に表現するなら、「魔剣の迷宮」では表現しずらい「外界から隔絶された広大な空間」を冒険の舞台とできる点が特徴といえる。

 第四に「前時代の遺跡」が挙げられる。
 アルフレイム大陸各地には魔動機文明時代や魔法文明時代の遺跡群が点在しており、鉱物資源を得るために坑道を掘っていたら遺跡にぶつかった、というのも珍しい話ではないと考えられる。
 そういった遺跡の中には希少な遺物が眠っていることがあるし、同時に魔法生物や魔動機といった遺跡の番人が今も稼働している可能性がある。
 そのような危険性から、冒険者に遺跡の内部調査や坑道の安全確保を依頼することが多い。
 また、既に探索され尽くした“枯れた遺跡”であっても、そこを根城に幻獣や蛮族が住み着いている、という形で討伐依頼が出ることもある。

 ともかく、上記の理由から適当に好きなものを選び、
1.冒険者であるPC達は依頼で〇〇に向かうことにした
2.〇〇には危険な××が居たので倒した
 
という流れを作れば既にシナリオの骨子が完成しているという訳である。

3-1.処理と描写とデータについて

 前項にて、とりあえず決定したシナリオの骨子に肉付けを行っていく。
 また、大雑把にであるがこの時シナリオの想定レギュレーションを決めておくと良い。PC作成時に使える経験点や成長回数を厳密に決める必要はないが、「参加するPCの冒険者レベル(=最も高い技能レベル)」を決めておくと、報酬額をはじめ種々の判定難易度やエネミーの選定がラクである。

 まずシナリオの導入部であるが、このチャプターの主目的は「冒険者であるPC達が依頼を引き受け、冒険に出発する」ことにある。
 このため、このチャプターを処理する上での流れは以下のようになる。

1)セッション開始。PC達を登場させる。

2)冒険者ギルドの受付がPC達に声をかけるか、PCから接触させる。
   依頼の話を持ち出す。

3)依頼の概要などについて、補足説明などあれば受付から説明する
 ※無くてもOK

4)PC達が依頼を承諾したら次チャプターに移行する。

 上記の流れを実際のセッション時に行うため、筆者はシナリオ作成時、以下のような書式でチャプター内容を記述している。
 ◆描写◆や◆依頼内容◆などの部分は、セッション時には直接コピペで貼り付ける。

◆解説◆
シナリオ導入部。いつもの。

◆描写◆
アルフレイム大陸北西部、ドーデン地方。
その中心部《キングスレイ鉄鋼共和国》。
魔動列車の線路の発見・復興に力を注ぐ同国家では、
今日も冒険者達に仕事が舞い込む。

第二都市《ヒスダリア》に拠点を構える冒険者ギルド
《黒曜石の小剣》亭に所属するPC達は仕事を求め、
ギルドホールを訪れたばかりであった。

◆処理◆
PC達を登場させる。
全員が登場したら受付から声を掛ける。

◆台詞◆
受付「おぉ、君たちか。君たちにちょうど良い仕事が入っているぞ」
  「話だけでも聞いていかないか?」

◆依頼内容◆
・依頼主は〇〇村の村長
・依頼内容は××の□□
・報酬額はひとり辺り△△G

◆補足説明◆
・依頼のあった村はこの町から徒歩で半日ほど
・村の住民の目撃情報によると、■■らしき影が……

◆処理2◆
PC達が依頼を承諾したら次チャプターに移行。ギルドから出発すること。

実際にセッションを行う際は適宜調整を加えることもあるが、概ね1)~4)の流れが実行できれば問題はない。

3-2.探索パートと戦闘(VS雑魚)

 シナリオ導入部が完成したら、次はシナリオの中盤部分を作る。
 2-2で決定したシナリオのメインテーマによって冒険の舞台は異なるが、概ね冒険者が活躍するのは人気の少ない森や山、荒野や遺跡などである(シティシナリオ除く)。
 従って、マップを幾つかの部屋を通路で繋いだ「ダンジョン」としてしまうのが最も手っ取り早く、手軽にセッションを楽しめると筆者は考える。

 また、ダンジョンマップを作らずイベント進行のみでセッションを展開することも可能である。
 あまり凝ったギミックを盛り込むのでなければ、ダンジョン式のマップ(とダンジョン内の各部屋に割り振られた各種のイベント)はセッション中に起こるイベント順序を視覚的に表現したものとほぼ同じだからだ。
(しかし、ダンジョンマップを用意するといかにも“それっぽい”ので筆者はダンジョンマップに頼りがちである)

 このシナリオ中盤部分はセッションに要する時間的なボリュームに影響するため、何日かに分けてじっくりと楽しみたい場合はPCと同じくらいのイベントを用意すれば良いだろうし、1日でさっくり終わらせたい場合は2~3程度に収めるのが良い。

 このチャプター群の主目的は、「PC達に冒険者的活動を行わせ、シナリオボスに近づかせてゆく」ことにある。

 上記の例で言えば、「蛮族が潜んでいる森」を舞台とした蛮族討伐シナリオであれば「足跡追跡判定(スカウト or レンジャー)」や「探索判定(スカウト or レンジャー)」によって蛮族達の動向や居場所を探るようなシーン、イベントを入れると良い。

 また「魔剣の迷宮」や「奈落の魔域」であれば道中に奇想天外な罠が仕掛けられていることもある。人工的な迷宮ならスカウトが活躍するし、自然物を利用した罠が仕掛けられているシチュエーションであればレンジャーにも活躍の機会がある。

 「前時代の遺跡」を探索する場合、スカウトやレンジャー以上に対応する言語の解読能力を持つセージにスポットを当てると、遺跡のフレーバー的な要素を演出しやすい。
 たとえば魔動機文明では魔動機を用いた高度な仕掛けが遺跡の隠し扉や通路の監視システムを制御していることが想像できるため、特定の部屋で魔動機文明語によるパスワードを入力する必要がある、など。

 また、「ザコ敵との戦闘」はセッション中盤の盛り上がりにちょうど良いイベントになる。 シナリオボスが蛮族であればその手下、ボスが魔動機や魔法生物であれば巡回中の仕掛けなど、様々な理由をつけてザコ敵との戦闘が発生するチャプターを作成しよう。

 この時点で使用したいエネミーが居るなら、シナリオにデータと共に書き込んでおくと良い。特に決まっていない場合、とりあえずザコ敵との戦闘が発生する旨だけ書いておけば良い。

 以下に筆者がシナリオを作成するとき、よく使うイベントを記述する。

・蛮族退治シナリオの場合
→足跡追跡判定を行わせ、成功すれば蛮族の巡回部隊を発見できる
 相手の不意を突く奇襲ができるため、先制判定に+1
 失敗した場合は探索中に蛮族の巡回部隊に見つかり、襲撃を受ける
 その際は先制判定に-1

→探索判定を行わせ、木の幹や岩陰に記号のような傷跡を見つける
 汎用蛮族語の読文能力があるPCであれば、妖魔達が仲間あてに書いたメッセージ(宝を隠した場所やアジトなど)を読み取ることができる

・奈落の魔域や魔剣の迷宮の場合
→迷宮のモチーフとなっているものにちなんだ罠(森なら丸太が倒れてくる、石造りの迷宮なら落とし穴など)を配置し、罠感知判定や異常感知判定で避けさせる
失敗した場合、2d6+2点ほどの物理ダメージを与える

・前時代の遺跡を探索する場合
→魔動機文明語や魔法文明語など、その遺跡の年代に合わせた言語のヒントを配置した上で、合言葉や特定の鍵によって開く扉などを配置する

→魔動機文明時代の遺跡であれば、レーザー状の光線で動くものを狙うトラップを通路に設ける
 回避力判定で避けたPCがトラップに近づき、解除判定によって解除させる

 上記に挙げたような探索パートやザコ敵との戦いというイベントを使い、PC達がダンジョンの最奥部やシナリオボスの潜むアジトに到達する過程を演出していく。

 また、ここで用いる判定の殆どは探索系技能(スカウト、レンジャー、セージ)になるため、「想定冒険者レベル-2+各種ボーナス2」を難易度の目安にすると良い、と考える。
 たとえば想定冒険者レベルが3のセッションであれば、探索系技能はせいぜいLv1(Lv2にしているPCは、探索好きか先制重視なのだろう)だと考えるのが無難である。
 そこに各種ボーナス(器用や敏捷や知力)が2だと仮定して、更に2d6の期待値である7を加えれば、難易度は10くらいがちょうど良い(PCが何人か居れば、2d6の出目が6や5でもなんとかなる可能性は高い)。

 中盤のチャプターも導入部と同じく「処理」「描写」「データ」に分けて記述しておくと、セッション時に使いやすいと考える。
 以下に例を記載する。

6-1.道具保管庫

◆解説◆
シナリオクリアに必須ではない部屋。
魔動機文明時代の道具が幾つか置いてある。

◆描写◆
通路を進むと、再び5m四方の部屋に到着する。
金属製の簡易な柵が扉の代わりに付いているが、施錠はされておらず簡単に開けることができた。

部屋の中央には高さ約1.0m、直径約0.7m程の円筒状の台座が設置されており、天面には何やら文字が刻まれている。
また、この部屋は通路に面している側以外の壁面が岩を削り出して作られた棚になっており、魔動機道具類と思われるものが置かれている。

◆処理1◆
魔動機文明語の読文能力のあるPCは、台座に刻まれている文字が魔動機文明語であることを理解できる。内容を要約すると以下の通り。

◆描写2◆
・この遺跡は魔動機文明後期に岩山を削って造られた、魔動機や魔動機械の試作品工場であること
・当時はこの工場の近郊の山からマナタイトを豊富に採ることができ、立地的に最適であったこと
・北の部屋の奥に非常口があり、脱出用の魔動エレベーターがあること

◆処理2◆
台座を解読した後、PC達に「宝物鑑定判定(スカウト or セージ+知力)」を難易度10で行わせる。
成功した場合、以下の一覧からランダムに一つアイテムを手に入れることができる(PC全員で一つ)。
失敗した場合、PC達はアイテムを見過ごしてしまう。

◆獲得アイテム一覧(判定成功時)◆
マナチャージクリスタル(4点) ※ET P128
エフェクティブカートリッジ ※ET P132
韋駄天ブーツ ※ET P148

3-3.シナリオボスとの戦闘

 シナリオ中盤のイベントやザコ敵との戦闘を設定したら、セッションの最後を華々しく飾るクライマックスパートを作成していく。

 このチャプターの目的は「PC達が解決すべき課題」の元凶と対峙し、戦闘によってこれを打破することにある。

 特にギミックなど考えない場合はこのチャプターを作るのが一番ラクで、とりあえずシナリオボスを威圧感たっぷりに登場させたり、強襲させたりしておけば良い。

 このチャプターにおいて重要なのは、「PCにそこそこ手こずらせながらも戦闘を繰り広げ、倒されてもらうこと」にある。
 すぐに決着がついてしまうような相手では少し物足りないし、かといってギミックや「剣のかけら」などでHPをたくさん盛ってもストレスになる。

 本記事ではオリジナルデータの作成については触れない。
 ルールブック1巻P397に記載されている通り、シナリオボスとの戦闘が発生する場合は「PC達の平均レベル(=想定冒険者レベル)より1~2程度魔物レベルの高い敵をボスとして登場させ、PCと同レベルの取り巻きをPCと同数~少し多い程度登場させる」
 という指標が設定の助けとなる。

 新規作成PCを対象としたシナリオを作成するのであれば、PCの冒険者レベルは殆どが2となる(作り方によっては3)ため、「取り巻き」にはレベル2~3、「シナリオボス」にはレベル3~4の魔物がちょうど良い、ということになる。

 更にシナリオボスの魔物には「剣のかけら」による強化を施すことができる。「剣のかけら」による強化は個数に応じてHPとMP、生命/精神抵抗の固定値が増えるため、シンプルに場持ちが良くなる。
 ルールブック1巻P399を参考に、ある程度の「剣のかけら」をボスに搭載すればシナリオボスの完成である。

 以下に、カテゴリ別の初期作成~低レベルPC向けシナリオのボスとして使いやすいと考えられる魔物を記載する。

カテゴリ:蛮族

・ボルグ(初期作成向き)
→ゴブリンやフッドを力で従える凶暴な妖魔。特殊能力の【痛恨撃】はダメージ決定時の2d6の出目が「10」以上だとダメージが増加するため、GM的にも緊張感がある(事故りやすいとも言う)。

・ボルグハイランダー(初期作成~レベル3までのPC向き)
→ボルグの戦士階級。【斬り返し】の能力を備え、ギリギリ攻撃を躱せるかどうかといったPCに圧力をかけられる。遠距離攻撃手段を持たないが、その分後述のレッサーオーガと比べて安心して運用できる。

・レッサーオーガ(初期作成~レベル3までのPC向き)
→魔法を扱い、人に化ける能力を持つ蛮族。とはいえ、人に化けるのも(シナリオの用意が)楽ではないためゴブリンやフッド、ボルグを従える蛮族の頭として登場させても良いと思う。
 真語魔法を使えるため、鎧で固めたPCにもある程度の脅威となる。

・ボルグヘビーアーム(レベル3のPC向け)
→重たい鎧と盾に剣を携えたボルグの重装歩兵。【全力攻撃】の能力を備え、【痛恨撃】まで発動した場合のダメージ固定値は2d6+16(≒期待値で23)とかなりの数値になる。また防護点8点もかなりのもの。
 回避力はさほど高くないため、マギシューの存在によって驚異度は大きく変わる。

カテゴリ:野生動物

・ディノス(レベル3のPC向け)
→冷気の吐息を吐く、大型の二足歩行爬虫類。2部位であり、胴体の【攻撃障害】と頭部の【冷気のブレス】を併せ持つ、多部位エネミー入門に最適な魔物。【冷気のブレス】を使用すれば魔術師や射手のような後衛PCを攻撃することができ、しかしこのブレスは連続使用ができないため、程よい緊張感を与えられる。

カテゴリ:魔法生物

・ガストナイト(レベル3のPC向け)
→古代の魔法王が生み出した兵士のような何か。単部位で特殊能力を持たず、攻撃命中時の打点が8点と高い以外は平凡な性能をしており、特殊な処理が必要ないのがGM視点で見てうれしい。
 また、蛮族に召喚・使役されることもあるとされる点がシナリオへの登場させやすさに繋がっている。
 特にドレイク族はこの種の魔物を召喚できる特殊な石の製法を修めており、配下の蛮族に持たせることが知られている。そのため、「ゴブリン退治に赴いたが、追い詰められたゴブリンがガストナイトを召喚した」という展開も可能である。

カテゴリ:魔動機

・ブルドルン(レベル3のPC向け)
→ディノスと同じく2部位エネミーであり、かつ【ハンマースロー&引き戻し】による遠距離攻撃手段を備える。こちらは与えるダメージが物理ダメージである点、連続使用できる点がディノスの【冷気のブレス】との違い。
 【機械の身体】は刃武器によるクリティカルが発生しなくなるため、【ソード】や【スピア】などを装備しているPCがシナリオに参加する場合、中盤のどこかでメイスやアックスなどを入手できるようにしてやると良い。

カテゴリ:幻獣

・ヘルハウンド(レベル3のPC向け)
→3体までのPCに同時に炎属性魔法ダメージを与える【炎の吐息】を持つ。
 炎属性である点に着目し、ドワーフPC(炎ダメージ無効)の魅せ場を作ったりすることが可能。カテゴリは幻獣だが、「奈落の魔域」に生息する、と設定されているため「奈落の魔域」探索シナリオのボスにも都合が良い。

カテゴリ:アンデッド

・デスソード(初期作成~レベル3までのPC向け)
→剣を振り回す死体ではなく、死体を操って自分を振るう剣。
 特殊能力【死の刃】は実質的に近接攻撃によって魔法ダメージを与える、割と珍しい部類の攻撃となる。この能力で与える魔法ダメージは呪い属性かつ「10」点なので、軽減されにくく事故が起こりにくい。

・ファントム(レベル3のPC向け)
→強い怨念で現世に残った悪霊。地味に回避力が高く、レベル3の戦士系PCであっても命中へのバフが無ければやや不利な上に【通常武器無効】の特性を持つ。プリーストの【セイクリッド・ウェポン】の有無が大きく難易度に関係することが予想される。
 戦場に存在する他のアンデッドの命中・打点を一気に強化できる【死者への祝福】を持つ。この能力が適用された場合、「ゾンビ」が中々侮れない命中と【全力攻撃】による爆発力を持った厄介な敵になる。
 反面、防護点を持たないため、前衛の攻撃が頻繁に当たるような局面では意外に脆い。

3-4.結末とアフタープレイ

 シナリオボスとの華々しい戦いに決着が付いたら、最後にやることは一つ。即ち、物語の締めである。

 このチャプターの主目的は「PC達の活躍によって課題が解決されたことを再確認し、PC達の冒険を締めくくる」ことである。
 筆者は基本的に、以下の順番でシナリオボスとの決着後を演出する。

1)シナリオボスが倒れる

2)シナリオボスを排除したことで、危険が去ったり遺跡の調査が進展したりするなど、PC達の活躍が価値あるものであったことを改めて伝える

3)セッション場面をギルドや依頼人の元に移す
 依頼人やギルドの受付から労いの言葉を贈り、PC達に今回の冒険を振り返ってもらう

4)適当に本シナリオのまとめをGM視点から述べ、セッション終了

 また、シナリオ執筆時に魔物のレベルと登場数を予め設定しておき、以下の点がすぐにわかるようにしておくと楽である。

・PCが獲得できる経験点

・PCが獲得できる報酬の合計

・成長回数(基本的に1回)

4.まとめ

 以上の手順で、簡単なシナリオであれば作成が可能であると思う。

 「冒険者が必要となるシチュエーション」を一つ決定し、それに合わせて物語の骨子を作る。そして目的に応じて各チャプターに「処理」「描写」「データ」を入れ、導入からクライマックスまでを作っていく。
 その結果「PC達が冒険に出発し、事件を解決して帰ってきた」という流れができればシナリオは完成したと言っても良いのである。

 簡単なシナリオ作成に慣れたら、中盤に謎解き要素を入れてみるとか、シナリオボスとの戦闘に何らかのギミックを施してみるとか、オリジナルの魔物データを作成してみるとかを試みても良い。

 ソードワールド2.5は設定が緻密でありながら自由度が高く、比較的どんなシチュエーションもシナリオに組み込めるのが魅力である。
 是非色々なシナリオの作成に本記事を役立てていただけると幸いである。

5. 作例

下記に、筆者が今まで書いたシナリオの一部をnote記事にしたものを掲載する。基本的には上記の考えに則って作成したものなので、そのまま使ったり適宜変更・調整したりして使ってもらえると幸いである。

「水源を取り戻せ」 2021/04/24投稿

新米冒険者としてギルドに入門したPC達が挑む、農村近くの川を舞台にした蛮族退治シナリオとなる。
川の上流に住み着いた蛮族を対峙するため、PC達は川辺を歩いて水源に向かい、ボルグ率いる妖魔の一団と戦う、というシンプルな構成になっている。
ダンジョンマップなどは使わず、イベント進行のみで話が進む。
機械仕掛けの回廊 2021/12/08投稿

冒険を1~2回経験した駆け出し冒険者のPC達が挑む、ダンジョンアタックシナリオ。
坑道拡張中に発見された魔動機文明時代の遺跡を舞台に、魔動機仕掛けのギミックを解除したり警備モードの魔動機兵との戦闘が発生する。
簡易的なダンジョンマップを記事に掲載しているが、部屋の数と構成が同じならGM各位は凝ったものを使っても良い。

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