蝉も蚊も暑さで死んでるから、暑さのせいにしておこうか。
「だから!そう言う事言ってるんじゃないでしょ!」
「オレが全部悪いんだろ!」
「結局そう言って思考停止してたら意味ないじゃん」
「オレの気持ちも分かれよ、
仕事で疲れて、やってんじゃん掃除だって洗濯だって」
「分かってるよ、ありがたいと思ってるよ」
「じゃあ、なんでつっかかってくんだよ」
同棲3年目、今年の夏は熱い。
オンボロアパートの2階は照り返しでカーテン引いて、クーラーをかけても汗がしたたる。
「なんで私が貴方の隣に座らないだけで、こんなケンカになってんか分かってんの?!!」
「オレだって疲れてるんです。」
ずるい、ずるい、私が疲れてて腹たってって、疲れてるって言った時スゴく怒こったくせに。
「隣に座って一緒にTV観て欲しかっただけじゃん」
私にだって予定もやりたい事もあったから、先に夕飯の下準備して、初める時にそんな事言われても断るわ!。
「嫌って言っただけじゃん。なのに何?『今日はじゃあもう終了、今じゃないと一生触らないで』ってバカなの?何その脅迫。
そんな言い方嫌いだし辞めてって言ってるよね?なんで私が触りたい時は拒否して、自分が望む時はその言い草?はぁ?それで挙げ句の果ては自分が全部悪い?違うでしょ」
「もういい」
彼は立ち上がりタバコと鍵をまとめてポケットに入れる。
「貴方は結局、ケンカ両成敗にはしてくれないよね」
「それじゃあ、つっかかってきた両成敗にしてください」
「うん、そうする」
「ふー」
「貴方が、来てくれればよかったのに」
「ん?」
「貴方が連れにきてくれればよかったのに、
いつも私ばっかり触りにいくじゃん、貴方が来てくれれば連れてってくれたら私だって貴方の隣に座ったのに」
何を置いても。
「結構してるつもりだった」
彼が階段を降りる音が聞こえる。
いつもそうだ。いつも残るのは私だ。
この現状維持、停滞という穏やかな死に向かう行為が。
夕飯の時間まであと1時間20分、その時間になればしれっと彼は帰ってきて、不機嫌にご飯を食べる。
砂を噛むような時間。私が3時間かけて煮込んだカレーを不機嫌なまま食べ、私は気をつかい無理に明るく振る舞う。オイ生理前だぞ!PMSだぞ、こんな負の空気のままここにゃ居れんわ。
ノートとペン、資料をまとめてたバインダを、リュックに詰め込み、大きくドアを閉め鍵をかけ、レンタサイクル置き場まで走る、チャリ買う金もプールしてるクソ、絵にならない、それが私か。
暑い、流れる汗を拭いSuicaをコーダーにかざす。ガチャガチャとストッパーを外し、全身のバネを使ってペダルを漕ぐ。
自分が作った風が、熱したアスファルトから解放してくれながら、途切れる事のない熱さに向かう。
風に汗が冷えて過去に流れる。
私はっきっと夕食の時間には部屋に戻って、ごはんを用意するだろう。
彼は帰って居ない事に少し驚くかもしれない、もう3年だ私の一面しか彼が知らない事に気がつくだろうか?
きっと私も彼が見せたい彼しか見れていないだろう。憶測なんて妄想だ、楽しいけど知った事か。
コロナの停滞感も巣篭もり感も、夏の暑さもPMSも知るか、ボケこちトラ精神限界じゃ。
ポツポツと額に夕立の予兆があたる。全てが冷えればいいのに。
今日の夕飯はカレーです。
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