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When Spring Came to Bucha

ヨーテボリ国際映画祭続き🎬

ロシア侵攻後のウクライナを撮ったドキュメンタリー "When Spring Came to Bucha"🇺🇦

ウクライナ人フォトグラファーとドイツ人ディレクターによる共作。

ディレクター挨拶によると、ロシアがウクライナに侵攻した3日後、ベルリンをベースに活動していたウクライナ人女性フォトグラファーは国に戻らないと、といってキーウに戻ったのだそうだ。最初はベルリンに戻るようずっと説得していたドイツ人ディレクターは、彼女がキーウ包囲の際にも変わらず現地に留まり続け、送ってくる写真を見て、そしてブチャの件が明らかになり、これはカメラを25年以上回してきた自分が映像で撮らないといけない、と彼女に合流し2人で撮影を開始したのだそう。

明確なテーマなどは何もなく、自分は戦争取材はしたことはなかったし、ウクライナ人でもないし、怖くてたまらなかったけれど、とにかく起きていることを記録せねばならないと思った、と。 
その言葉の通り、大きなストーリーがあるわけではなく、普通の人が何とか暮らしを取り戻そうとする姿が長回しで映し出される。

戦争前はヨガ講師をしていた人が即席検死官に。公務員が飲める水と棺を探して奔走し。普通の人が戦争犯罪を記録する即席検事としてコミュニティを回る。音楽は殆どない。代わりにウクライナの方が時には気持ちを奮い立たせるように、時には慰めるように歌う姿が映される。撮影中に不発弾が爆破される音も入る。これがセットでなくて現実なんだということが身に迫って伝わってくる。本当にしんどい。けれど見れて良かった。報道ではどうしても尺が足りず伝えきることのできない側面。

ディレクター達はこのドキュメンタリーに登場する人々と引き続きコンタクトを取っており、可能な限り支援するとともに、その後も折を見て撮影しているそう。

ただ人によっては心理的なトラウマにより人が変わってしまったり、隣人からの密告により実は当時ロシアに協力していたのではと逮捕されたりと、戦地だけでなく、一見すでに開放されたエリアにおいても現在進行形で戦争は続いているのだと。このドキュメンタリーはウクライナの方々の困難な中でも前を向く力強さみたいなものがとても印象的なのだけど、ディレクターのコメントによって、そうした映像の希望的な側面だけを見て我々が安心してしまうことの怖さも突き付けられた。戦争は戦闘だけではない。むしろその後のほうが長く、どこまで行っても現実がある。

スタッフは可能な限りウクライナの方々に依頼したそうで、キーウにいる音響スタッフは節電や停電の中、顔にライトを当ててスタジオで寝て、光が灯ることを合図にわずかな通電時間が始まったことを察知し、通電している間に一気に仕上げてくれたそう。

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