【奥さまは国際線客室乗務員】001 魔法のチケット(その1)
ぼくはこのところ航空券を自分で買ったことがない。
「このところ」というのは結婚してからということ。
以前は、海外に行くときにはHISなどで格安航空券を探しまくっていた。
たとえば、ハワイに行きたいときにはオフシーズンの6月末にスケジュールを合わせたり、実家に居たときには直行便ではなく韓国のハブ空港を経由して乗り換えるフライトを選んだりしてチケット代を節約していた。
しかし、乗務員の家族となったいまでは、ありがたいことにそのような作業は必要なくなってしまった。なぜなら、従業員向けのチケットがあるから。それは「EF(イーエフ)」と呼ばれている。
EFとはEmployee Freeの略で、航空会社が福利厚生の一環として発行する、社員とその家族が使える格安チケットのこと。
ぼくは密かに「魔法のチケット」と呼んでいた。
入手プロセスを説明しよう。
1. まず、行き先が決まったら妻にお願いする
2. フライトでオペセン(注1)に行くついでに取ってきてもらう
3. 家で渡してもらう
たとえば、ホノルル便のような2日くらいで帰ってくるようなフライトの前にお願いできれば、妻の帰宅と同時にEFチケットが手に入るわけです。パリなどに行ってしまうと、もう少し時間が必要。
ところで、いくらなのかについてはあまり詳しく知らない。
妻の給料から天引きされるので、知りようがないのである。ただ、ちょっと聞いたところによると、NRT - CDG (注2)の片道で正規料金で40万円(当時)のところが、2万円くらいといってたように記憶している。そうなると、95%割引(!)ということになる。
とはいえ、その差額が手に入るわけではなかったので、正直あまり気にしていなかった。
(つづく)
(注1)オペレーション・センター(operation center)の略称。
フライトが入っている日には、ひとまずここに出勤してブリーフィングなどをするらしい。
(注2)成田国際空港からパリ・シャルル・ド・ゴール空港までの意味。当時は、羽田空港には国際線ターミナルがなく、海外からの東京の空の玄関は成田空港しかなかった。
(タイトル画像クレジット)By Austrian Airlines (www.austrian.com), CC BY-SA 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=30018873