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声を失った人はどうやって発声しているのか?

先日、One's Voice というサービスを公開しました。
https://onesvoice-vw.com/
声質変換技術を使って、失った声を再現できるようにするというサービスです。

利用用途の一つとして、喉頭癌等によって声帯を摘出した方が、元々の自分の声で喋れるようにするということを考えています。

声帯摘出というと、つんく♂さんを思い浮かべる人が多いかもしれませんね。
声帯を摘出すると、それまでと同じように声を出すことができなくなります。

では、声帯を摘出した方はどうやってコミュニケーションをしているのでしょうか?
実は、僕自身も今の仕事に携わるまでは全く知りませんでした。

喉頭摘出された方が声によってコミュニケーションする方法は大きく分けて4パターンあります。

1. 食道発声

そもそも、なぜ声帯を摘出すると声が出なくなるかというと、口・鼻と肺に空気を送る気管が繋がらなくなるためです。
首の付け根辺りに気管孔という穴を開けて、そこから空気を取り込んで呼吸するようになります。

食道発声は、その名の通り食道を使って発声します。
口・鼻から取り込んだ空気を食道に取り込み、逆流する空気で人為的にゲップを起こすように空気を吐き出し、それを声とする方法です。

すごく簡略して説明していますが、詳しく知りたい方は銀鈴会のページが非常に分かり易く説明されているので参照していただければと思います。
https://www.ginreikai.net/%E7%99%BA%E5%A3%B0%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/%E7%99%BA%E5%A3%B0%E6%95%99%E5%AE%A4/

ハンズフリーで話せる、メンテナンスが不要というメリットがある一方で、習得に半年程度かかるという特徴があります。

2. シャント発声

こちらは特別な手術が必要となる方法です。海外では、最も一般的な方法のようです。

シャントとは、医療用語で、血液が本来通るべき血管と別のルートを流れる状態のことです。
気管と食道を手術によって連結し、声帯を通さず肺から食道に空気を送り込むことで発声します。

発声方法の習得が容易な一方で、定期的にメンテナンスが必要という特徴があります。

3. 電気式人工喉頭による発声

電気式人工喉頭と呼ばれるデバイスを利用する方法です。
スティックのりを二回りくらい大きくした形で、先端部が振動するようになっています。

そのデバイスを喉に押し当てることで、振動を口の中で響かせて声にします。

こちらも習得は比較的容易ですが、喋る時にデバイスを手で持つ必要がある、機械っぽい声になるといった特徴があります。

4. 合成音声の利用

これは発声ではないですが、声によるコミュニケーションということで挙げています。

入力したテキストを、AIによる読み上げ音声に変換します。


以上、声帯摘出した方が発声する方法を挙げてきましたが、これらの方法では元の声色は失われます。
声色は、声帯の形や口の形によって決まります。楽器と同じ要領ですね。
空気の通り道が変わると、当然、声色も変わってしまいます。

※音声合成は、手軽に自分の声を作るアプリも出てきています。発声できるうちに、声を録音して残しておく必要はありますが。


One's Voiceではそういった方々が元の自分の声で発声できることを目指しています。
多くの方は自分の声が嫌いとは言われていますが、長年慣れ親しんできた声を失うということはとても辛いことでしょう。少しでもそういった方の励みになれればと思います。

リアルタイムにその場で声を変換するためには、デバイス開発も必要となるので、実現方法すら検討中ではありますが、必ず実現してきます!


株式会社voiceware
代表取締役CEO 田村一起
https://voiceware.co.jp/

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