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犬と花と私

コロナ禍の頃、
この街の個人経営の花屋がいくつか閉店した。
私が良く利用していた近所の花屋も、
規模を小さくして移転するとのことで、
無くなってしまった。

先代の犬が虹の国に行ってから、
毎日欠かさず花を飾っていた。
一輪の花が
どれだけ気持ちに寄り添うか、を
知ってしまった、というのもある。

別の花屋を求めて、
少し遠い店まで歩いて行った。
すると、
駅から遠くなればなるほど、
花が安く売られていた。
数本の束になって安くなっていたり、
一本でも引き立つような目立つ花でも、
価格が抑えられていた。
しかも、どれも水を良く吸い上げて
シャッキリと新鮮だった。
それまで駅近で選んでいたのもあって、
少し歩けばこれほど値段が違うのか、
という事も知った。

家に持ち帰って花瓶に生けると、
花の生命力がそこらじゅうに満ちる。
落ち込んでいた私にとって、
それはものすごいエネルギーだった。

それからは、散歩がてら、
花袋を持って出かけた。
本当に元気で長持ちする花が多かった。

少し経った頃に
お花の定期便やら、宅配が人気になった。
自粛モードのコロナ禍の今こそ
花の癒しの力が必要なのに、
と思っていた私は、
「やっぱり、みんなもそう思っているんだよね」
と、ひとりごちたりした。

定期便の便利さにも惹かれながらも、
少し遠い花屋の鮮度が気に入ってしまい、
てくてく歩いて買いに行った。
他にも数店、良さげな花屋も見つけた。

そうしたらいつのまにか、
犬がいなくなった寂しさが、
花屋で花を買う、という行為の
楽しさにすり替わった。
ちょうど良い散歩コースにもなっていた。
そうして私は、花巡りをしながら、
ポッカリ空いた胸の穴を
埋めていたような気がする。

そのうちに、また巡り合って、
子犬を迎え入れる気持ちになった。
現在、我が家で
コロコロ遊んでいるのがその子だ。
フラワーアレンジの教室に、
通い出したりもした。

不思議だ。
コロナ禍になって、
花屋が遠くなって、
私を外へ連れ出したのはあの子かな?

11月11日。
今日は先代の犬の命日です🐶



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十和言(とわ いえ)
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