子どもの習い事で密かなブーム〝DTM〟とは?

TBSラジオで毎週金曜日8時30分~午後1時まで放送の「金曜ボイスログ」
シンガーソングライターの臼井ミトンがパーソナリティを務める番組です。

このnote.では番組内の人気コーナー
「臼井ミトンのミュージックログ」の内容を書き起こし。
ちなみにyoutube版では動画も公開しているのでそちらも是非。

子どもの習い事で密かなブーム〝DTM〟とは?


DTM=Desk Top Musicとは??

先日の日経MJ新聞にとっても面白い記事が載っていました。DTMを小中学生に教える音楽教室が増えているという記事。
DTMとはなんぞや。これ、デスクトップミュージックの略ですけども、机上の空論ならぬ机上の作曲と言いますかパソコンを使った音楽制作全般を指す言葉です。

普通、子供の音楽関係の習い事っていうとピアノが一般的で、僕の場合は
チェロを小さい頃から習ってまして、音楽をやるっていうとどうしても楽器を基礎からきちっと練習してハノンやってバイエルやって難易度少しずつ
上げていって譜面もその過程でしっかり読めるようにしてゆく、みたいな。
まぁ芸事ですから、稽古はきちんとしなければいけないわけです。
そして何か一つ楽器を習得した上で、更に音楽理論とか作編曲の手法なんかを勉強した人が初めて作曲を出来るようになる、みたいなイメージあるじゃないですか。

ところが、「DTM」パソコンでの音楽制作っていうのは簡単に言いますと
パソコンの中にバーチャルの楽器が入っていましてワンクリックで色んな
音が出せるんです。もちろんパソコンにつなげる鍵盤とかマイクをパソコンに接続するための機器とか、本格的にやろうとすると色々必要な道具機材はあるんですが、今ってMac買ったらGarage Bandっていう音楽制作ソフトとバーチャル楽器のセットみたいなものが無料で付いているくらいですから、パソコン1台でも音楽作ろうと思えば作れちゃうんですよ。

ゲーム感覚で遊ぶように音楽を作ることが出来る

Billie Eilishもお兄ちゃんと実家の一室でパソコンで作った音楽がグラミー賞取りましたし、日本のチャートに入ってるアーティストもボカロP出身。
つまり合成音声を使ってDTMで歌を作るという、歌さえもバーチャルって
いうところがスタート地点になってる人凄く多いですから、まぁそういう
時代ということですよね。

音楽制作ソフトって実際どんな感じで使うかというと、パソコンの画面上にピアノロールっていう画面が表示されまして、これ何かというと、簡単に言うと縦軸が音階、下にいくほど低い音、上にいくほど高い音。
横軸が拍子・つまり時間軸になっていて、グリッド上の画面で、ここにオブジェクトを配置してゆくだけで、音が鳴るんですよ。

まず楽器を何か選ぶ、まぁチェロを選びましょうか。そして、このピアノロールという画面で、例えば「ドレミファ〜」の「ミ」の高さで、2拍分の
長さのオブジェクトを配置して再生ボタンを押すと、チェロの音で、ミの音が2拍分鳴る。

つまり、楽器が全く弾けなくても楽譜が読めなくても音楽の理論を全く知らなくても、非常に視覚的に感覚的に、曲を作ることが出来るんです。
ある意味、絵を書いたり、パズルとか積み木で遊ぶような感覚で音楽を作ることが出来るわけです。

もちろん、もし音楽を本気で作りたいなら、楽器は何か弾けた方が良いし、楽譜も読めた方が良いし、音楽理論がわかっていた方が良いですよ。
でも、やっぱりそういったことを習得するのって凄く凄く大変なことだし、長い期間稽古しないとなかなか身につかない。子供たちが習い事で一から
そういうことを練習したり勉強したりするうちに、どうなるかというと…
多くの子は嫌になっちゃうんですよ。

だから、ゲーム感覚で、非常に視覚的に音楽を作って鳴らすことが出来るっていうDTMは子ども達への最初の音楽の入り口として凄く良いかもなって
思うんですよね。

自分自身で壁を感じることが大切

ただし、このDTMでやみくもに曲を作っていくと、それがどんなに面白かったとしても遅かれ早かれ必ず壁にぶつかると思うんですね。
あれ?思ったような響きにならない、どうしてだろう?とか、この曲のこういう感じにしたいんだけど、これはどうなってるんだろう?とか。
そう思い始めたときに聴音であったり和声のハーモニーの理論みたいなものが必要になってくるし、あるいは作った曲を他の人と演奏したいってなったときに、やっぱり譜面の読み書き出来ないと困るな、とか。

続けていくには結局音楽的なトレーニングは必要にはなると思うんだけど、重要なのは、自分自身でその必要性に気付けるっていう点なんですよ。
ただ習い事でお稽古やらされるんじゃなくて「あ、自分のやりたいことをするにはこういうこと勉強しないとダメなのかも」って早い段階で自分自身で気づけるんじゃないかな、って。
そういう意味でDTMを使って子供達にどんどん曲作らせるって凄く良いことなんじゃないかなって僕は思っています。

臼井ミトンはヘ音記号しか読めない??

かく言う自分も小さい頃チェロをやっていたもんですから、チェロって低音楽器でしょ?だからヘ音記号なんですよ。だから僕ヘ音記号しか読めない。これ、ピアノの左手のパートつまり低音パートで使われる記号で、ピアノを小さい頃からやってる人は右手がト音記号、左手がヘ音記号でみんな同時に読むことが出来るんだけど、僕にとってはそれが信じられない。
凄い芸当に思えるんです。僕はピアノも弾くんですけど、YouTubeの動画で独学なので楽譜見てピアノ弾くっていうのは、バイエルレベルでも全く出来ないんですよね。

ところが30代になって編曲を人から頼まれるようになって、そうすると
アレンジしてそれをミュージシャンに弾いてもらう必要がある。
そこで初めて僕はト音記号で譜面を読み書きする必要に迫られまして、読み書きの勉強を始めたわけです。今も必死にやってますが、まぁ未だに本当に譜面には弱いですね。

でも、譜読みであったり基礎練であったり、そういうことって、自分が必要と思った段階で初めてやる。っていうのが実は正解なんじゃないかなって思うんですよ。弾きたい曲があるのに指が回らなくてどうしてもうまく弾けないところがある、だから「じゃあハノンちゃんとやらなきゃな」って思うっていうのが本来の順番じゃないかと。

だから子供たちが楽器の練習よりも先にDTMで最初っから作曲を始めちゃうっていうのも実は凄く素敵な音楽の始め方な気がするんですよね。

茨城の会社員がDTMでビルボード1位を

という話を今日の音楽コラムでしようかと原稿を書いているときに番組スタッフから連絡が来まして、楽譜も読めないし理論も全くわかってないけどDTMでヒップホップのトラックメイクをやっている茨城の会社員がアメリカのビルボードチャートで1位を取ったらしいですよ!って言うんです。

それで調べてみたら、Lil DurkというラッパーのThe Voiceという楽曲を
共作したうちの1人が日本人で『TRILL DYNASTY』という元々はDJをやっていてトラックメイカー・プロデューサーに転身した方みたいですけど、譜面も理論も一切わからないので、とにかくパソコンにキーボードつなげて、
やみくもに弾いてみて、良い感じになったものを繋ぎ合せて作っている。
とインタビューで仰ってました。

でも、この方、そのインタビューでピアノを習い始めたとも仰っていて、
機材はどういうものを使ってるんですか?という質問に対して…
機材はもうなんでも良いんでこれからはレッスンにお金を使っていきたいって言ってたんですね。その姿勢が凄くピュアで素敵だなぁ~~なんて思ってしまいました。

今日はそんなTRILL DYNASTY氏が共作でトラックメイクに参加し、
収録アルバムがビルボードのR&B/HIPHOPチャートで1位に輝いたという
曲を聴いていただきます。
「Lil Durk」で「The Voice」

youtube版では動画で同様の内容をご覧いただけます。

金曜ボイスログは毎週金曜日8時30分~午後1時にて放送。
AM954/FM90.5/radikoから是非お聞きください。