シンガーソングライターはCMソングをどうやって作るのか!?
TBSラジオで毎週金曜日8時30分~午後1時まで放送の「金曜ボイスログ」
シンガーソングライターの臼井ミトンがパーソナリティを務める番組です。
このnote.では番組内の人気コーナー
「臼井ミトンのミュージックログ」の内容を書き起こし。
ちなみにyoutube版では動画も公開しているのでそちらも是非。
本日のテーマは…
「シンガーソングライターはCMソングをどうやって作るのか!」~番組スポンサーのテーマソングが出来るまで~
番組スポンサーのテーマソングを作る
金曜ボイスログの番組スポンサーである「ネジの永井」
番組パーソナリティである私、臼井ミトンがテーマソングを制作しているんですが…その裏側をPro Toolsという音楽制作のシステムを丸ごと持ってきて
その制作時のファイルを開きながら楽曲解説を自らやっていきます!
オーダーの内容としては、まず「ネジの永井」という一言を歌にして、
メロディにのせて一節歌った上で歌無しのインストになって交通情報が始まる、と。なので、ネジの永井という言葉にメロディを付けるところから作業がスタートするわけですね。
ネジっていう言葉のイントネーション的に、まず絶対に「ネ」の方が「ジ」よりも高い音になるんですね。つまり、ネ↓ジ↑には絶対にならない。
必然的に「ネ〜↑ジ〜↓」みたいな感じになるんです。
テーマソングの元ネタは、あの楽曲
そういうことをあれこれ考えたときに、1曲頭の中をよぎった曲があって、これがずばり1つめの元ネタになるんですがBeach BoysのWendyという曲。
これ「ウェンディ〜〜〜」と女性の名前を呼びかけている曲なんですが、「ネ〜〜ジ〜〜〜」に聴こえませんか?
まぁ早い話、空耳アワーというか、ダジャレみたいなもんなんですけど。
この曲が思い浮かんだときに、え、ビーチボーイズ良いじゃん!って。
というのも特に初期のビーチボーイズは主にサーフィンと女の子のことを
歌うアイドルバンドで、この海やサーフィンとネジっていうかけ離れたイメージが逆に新鮮で良いなって思ったんです。
ネジの永井なら海風に当たり続けてもサビないネジを売ってそうだし(笑)
で、僕は特に初期のBeach Boysの大ファンなんですけど、彼らの全楽曲の中でも僕が特に大好きな曲、小さい頃から一番好きだった曲が、なんとネジの永井が創業した1963年リリースだったことが判明しました。
それが【Surfer Girl】という曲です。
というわけで、コード進行はSurfer Girlを引用しました。
自分で歌って自分でハモる
まずはメトロノームに合わせてピアノを録ります。
そこに、さっき聞いた「Wendy」という曲と「Surfer Girl」のメロディを足して2で割ったようなメロを乗せます。
ネジの永井のテーマ、キーが結構高いんです。
なんでこんなキーになったかというと、Doo-Wop風にベースを自分の歌で、
楽器を使わずに口ベースで歌いたかったからなんです。
なので、自分の声で出せる一番低い音がルートに来るようなキー設定にしたので、メインボーカルは結構歌うの大変になったという。
これベースパートもかなり無理していますので良いテイクが録れるまで喉を枯らして100テイクくらい録りました。
Beach Boys風にするにはハモリをたくさん入れないといけません。
まずメインのメロディをハーモナイズします。
Beach Boysとか、あるいはBeach Boysの御先祖様にあたるようなシカゴのDooWopグループたちの特徴というか。彼らの醍醐味の一つに掛け合いの
コーラスというものがありまして、メインの歌に対して合いの手を入れるっていう文化です。それをこの曲でも是非取り入れたい!
ということでこのメインメロに対して掛け合いのコーラスを入れます。
さらにBeach Boys風にするために欠かせないのがAhとかOohとか歌詞を入れずにハモる業界用語で「ウーハモ」と呼ばれるコーラスワークです。
これも追加していきます。
ドラムを叩いているのはあの有名ドラマー
コーラスワークが仕上がって来たら、次は楽器です。Beach Boysといえば
やっぱりエレキ。トレモロがかかってスプリングリバーブがビチャビチャに効いたThe Venturesから脈々と受け継がれるサーフロックサウンドの象徴
です。さらに、2拍目・4拍目のバックビート、つまりスネアが入るタイミングでカッティングも入れます。
これもオールディーズのスタイルには欠かせない隠し味です。
ここまで録れたところで最後にドラムを録ります。ここまでは全て自分が楽器を弾いて自分のスタジオで録音したわけなんですが、ドラムは今回、沼澤尚さんに叩いてもらいました。沼澤尚というドラマーは僕が長年一緒にバンドをやっているバンドメイトで、実はこの番組のオープニングとエンディングも沼澤さんのドラム。日米数えきれないほどの名アーティストを支える
名ドラマーでして、Bobby Womackから井上陽水から椎名林檎からスガシカオに槇原敬之、超有名なとこで言えば平井堅の「瞳を閉じて」とかも沼澤さんのドラムです。
まぁ「瞳を閉じて」か「ネジの永井」かっていう具合で(笑)
歌が終わって「ネジの永井がお送りする交通情報です」という提供読みがあって、交通キャスターの方にバトンを渡す。普通、交通情報は尺が1分と決まっていますから、ここからちょうど1分で次の展開に行くように作ってあります。
ここで一旦サブドミマイナーというオールディーズでよく使われるコードで伸ばして落ち着いてから、だんだんピアノが盛り上がってくるんですね。
なので交通キャスターのみなさんは僕がピアノでアドリブに入って、ドラムの沼澤さんが煽り始めたらもう時間がないと思ってください。
さらに電車の情報とかが入って長引くと、なんと最後にコーラス隊が戻って来ます。コーラス隊が戻って来ちゃうとますます時間的にはヤバいっていう合図になります。ここまで流れることはかなり稀だと思いますけど…
本当はSurfer Girlくらいのテンポでやりたかったんですけど、最初の歌のパートがネジを連呼し過ぎて結構長くなっちゃったので、一番長くても15秒ちょいで収めてくださいって言われていたり、こういう生放送の進行上のキューも兼ねたりしているので、最初の想定よりもテンポ上げたんですよね。
でも結果的にまったりし過ぎず適度に元気でこのくらいがちょうど良かったなって思っています。
youtube版では動画で同様の内容をご覧いただけます。
実際に音を重ねていく様子、ネジの永井のテーマソングをフル尺で。
臼井ミトンへのテーマソング依頼は番組メールアドレスまで
vl@tbs.co.jpまで
金曜ボイスログは毎週金曜日8時30分~午後1時にて放送。
AM954/FM90.5/radikoから是非お聞きください。