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頑張るのは、誰のため?

ちょっぴり焦げ臭い。でも、その次には白ごはんを連想させる。うん、シャケの焼けた匂いだ。炊飯器からは、炊き立ての白米の香りもしてくる。だんだん嗅覚が起きてきた。おはよう、嗅覚。

焼けるまで何となくテレビを見ている。ほんとに見ているだけだ。音も聞こえてはいるが、聞こえているだけで、意味は理解していない。あ、たまに理解できる。

起きてから、2時間後くらいに脳が起き始めると聞いたことがある。随分お寝坊さんだ。その2時間前に僕は起きてるんだぞ。あ、僕よりも先に意識が起きてるのか。いやいや、恐れ入った。

「あれ、しょっぱいかな。いやっ、こんなもんか。」

スーパーで買った安い銀シャケが、僕の味覚にはちょうどいい。いいのを買ってしまうと、すぐに食べるのは勿体無いからとか言って、悪くしてしまうことがあるから。いやはや、これだから貧乏性は。あ、おはよう。味覚。

食べる前に軽く磨き、食べ終わった後にはしっかり歯磨き粉をつけて磨く。‥あちっ。お湯の方にひねりすぎた。あっ、触覚も起きた。あはは、随分刺激的な起こし方だって?まっ、そんな日もあるさ。

朝日を浴びると、なんとかって成分が出てストレスだか、体だかに良いらしい。何だかよくわかんないけど良いもんならもらっておこう。おぉ、目の前がクリアになってきた。おはよっ、視覚。て、今起きたのか。ご飯とシャケ以外に変なもん食べなかったよな。

外着に着替えると気持ちが切り替わる。仕事モードに。仕事の準備をして、忘れ物がないかチェックして、今気になってることを思い出したりして。キャッ。‥なんて言ってる場合じゃない。

学生の頃から忘れ物が多かった。毎日何かしら忘れてしまう。定期、携帯、教科書。鞄を持たずに玄関を開けようとしたときには

「いやいや、何しにいくんだよ」

と、我ながら呆れた。授業ならまだ許されるが、大人になった今、忘れました!の一言じゃ許されない。中身は子供だから許して‥?♡

なんて冗談は言いません。子供たちのきゃっきゃした声を横目に満員電車に乗り込む。何で朝からこんなに元気なんだ。おっ、そろそろ感性も起きてきた。

ええーっと、今日はあれをしてその次には‥。この仕事をこれだけ早く終わらせられたら、休憩を多めにとれそうか。よし、がんばろっ。頭も起きてきた。

‥なんて妄想をしながら昼頃に起きる僕であった。理想の朝は、まだまだ遠そうだ。



ナレーター
ありのひろき

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