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世界史の分厚い教科書にペラペラマンガを描いていたあいつとプロのイラストレーターになった彼女

日本の美術大学へ進学したい、という留学生が最近増加傾向にあるように思う。私の勤務している日本語学校でも20人定員のクラスの中に2~3人の割合でそういった学生がいる。

彼らは、よく教科書や配られたプリントに絵を描いていることが多い。美大へ進学を希望しているだけあって、絵のクオリティが凄い。
絵が下手な私から見れば、すぐにプロとしてデビューできるのではないかと思ってしまうほどだ。

机間巡視をしているときに教科書に描かれた絵を発見すると、授業中に絵を描いていることを注意する前に見入ってしまうこともしばしばだ。

教科書に描かれたイラストなどを見ていると、高校生のころを思い出す。

私の卒業した高校は当時、芸術方面の大学に進学する人がけっこういた。音大や美大に、それも北海道を出て東京の学校に。

クラスの男子に棒人間でペラペラマンガを描くのが抜群にうまい人がいた。今でも脳内再生できる。世界史の分厚い教科書に描かれたペラペラマンガ。

走り幅跳びのマンガだった。
助走するまえの軽いウォーミングアップから始まる。
走り始めると加速をしていき、踏み切って大きくジャンプして着地する。

一番印象に残っているのは、ジャンプをした後、空中で大きく体を反らし、着地への体勢になっていくところだ。弓なりに反った体を今度は両手と両足を前方へと押し出していくあの形。

棒人間のイラストなのに、それが表現できるなんて!

走り出しの音や息遣い、空中で発する「ふっぅ!」という力の入った声までもが棒人間から聞こえてきそうだった。

世界史の教科書に、彼はちょっとずつ絵を描いていた。完成したペラペラマンガをにんまりした顔で仕上がりを何度も確認していたのを覚えている。私も何度もペラペラとページを送って楽しませてもらった。

彼は、高校卒業後広告業に就いたと伝え聞いた。

もう一人、似顔絵がとんでもなくうまい人がいた。ある日彼女は、ノートだったか、ルーズリーフに私を主人公にした漫画を描いてプレゼントしてくれた。

それは、漫画なので顔は美化されていたけれども、髪型や表情などがそっくりで、ああ、私ってこういう顔するよねって自分で認めてしまうほどうまかった。

卒業アルバムには担任の先生とクラス全員の似顔絵を描いてくれた。似顔絵の下に名前を書く必要がないくらい本人そっくりの絵だった。彼女は東京の美大を卒業後、イラストレーターになり、新聞の連載小説の挿絵なども手掛けていた。

今、日本語を一生懸命勉強している彼らもさまざまな分野で活躍することだろう。近い将来、いや近くなくてもいい、あ、あの時の○○さん!頑張っているんだねと、どこかで発見できたらどんなにうれしいことだろう。
私はその日を楽しみにしている。



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