📧米国シリコンバレーを築いた産学連携の成功事例と誕生秘話⑥(2020年3月号)

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新型肺炎やインフルエンザが大流行。しかし今回の下落さえ一時的な調整局面。それほど時間をかけずに反発するとの見方が長期投資経験者の間では広まっていますが米国経済、そして米国企業は何故強いのでしょうか？

ベンチャー企業が集結するカリフォルニア・シリコンバレー

米国経済の力強い牽引役とも呼べる存在が全盛期と評される米国IT企業ではないでしょうか。なぜ米国経済、そして米国IT企業は強いのでしょうか。

日本では2018年に89社が上場しましたが、北米では349社の企業が上場しました。 

以下はこれまでに米国IT企業の中でも”シリコンバレー”と呼ばれる地域から誕生した世界的企業です。()内は創業年。 

Hewlett Packard(1939)
Intel(1968)
AMD(1969)
ATARI(1972)
Apple(1976)
ORACLE(1977)
Sun Microsystems(1982)
Adobe(1982)
EA(1982)
Symantec(1982)
CISCO(1984)
McAfee(1987)
SanDisk(1988)
NVIDIA(1993) 
Yahoo!(1995)
 eBay(1995)
Google(1998)
SalesForce.com(1999)
Paypal(2000)
TESLA(2003)
Linkedin(2003)
Facebook(2004)
Evernote(2004)
Twitter(2006)
Airbnb(2008)
Square(2009)
Zoom Video Communications(2011)… 

開拓者精神とゴールドラッシュが今日に続く企業たち

アメリカは欧州からの移民によって作られた歴史と文化の国のため、欧州に近い東海岸側から西側に向かって徐々に都市が発展していきました。 

1776年のアメリカ独立宣言によって生声を上げてから半世紀以上が経った時点でまだ未開の地だったカリフォルニア。当時、東海岸からカルフォルニアを目指すためには6ヶ月という時間に現在の価値で2,000万円という旅費が必要でした。 

しかし1849年にカリフォルニア周辺で金が採掘できるという発見に人々は西海岸を目指し大挙して押し寄せました。 

結果的に金は人々の期待ほどは採掘されず、ゴールドラッシュで成功を収めたのは採掘者に破れにくいジーンズを販売したリーバイ・ストラウス(リーバイス)や採掘者に馬車や宅配業、両替業務を提供したヘンリー・ウェルズ/ウィリアム・ファーゴ(ウェルズ・ファーゴ、アメリカンエキスプレス)たち採掘者を相手にビジネスを手掛けた一部の富裕層だけというのは有名な話です。 

大陸横断鉄道を完成させた鉄道王リーランド氏の悲願

この成功者たちの中から手に入れた資金を元手に更なる投資をして巨万の富を得た一人が大陸横断鉄道の建設者の1人、リーランド氏でした。

それまで6ヶ月を要した東西の移動を6日間に短縮。荒野を走る馬車ではまともに眠ることすら出来なかった行程が寝台列車まで設置されました。

それまで1,100ドルかかった費用は70ドルまで下がった事で人々の移動は劇的に変わりました。ゴールドラッシュが終わっても人々がフロンティアへのチャンスを求めて西海岸へ向かい、その人々が集まる場所としてカリフォルニアは西海岸最大の州として発展をして行きます。 

イギリスを抜いた！ カリフォルニア州の経済規模が世界で5番目に

鉄道王リーランド氏は26歳で結婚しますが、44歳の時にやっと授かった我が子は15歳にしてハーバード大学合格を果たした麒麟児でした。

しかし、合格祝いとして家族で訪れたヨーロッパ旅行中に腸チフスによって最愛の息子を亡くしてしまいます。

失意の中でリーランド氏は「我々の未来は子供たちにかかっている。その子供たちに最高の教育を提供することが、最高の未来を創造するための最良の手段である。そうすることで、息子に託したかった夢を実現できるはずだ。」と考え、学費無料*のカリフォルニア初の大学の建設を決意します。

名付けられた大学の名前は愛する息子の名を冠した”リーランド・スタンフォード・ジュニア大学”、今日、我々が「スタンフォード大学」と呼ぶシリコンバレーの核となる教育機関はこうして1891年に亡き息子への叶えられなかった夢を託されて開校されます。 

* 夫妻が亡くなった1920年から有料化され2016-2017年では授業料が年間47,331 ドル、住居費・食費が年間14,601ドルがかかるが、両親の年収に応じた様々な奨学金制度での減免や授業料免除とリーランド氏の設立時の願いは形を変えて今も残っている。 

”避暑ホテル”と揶揄された大学が世界大学ランキングへ

開校当初、ニューヨークの新聞で「避暑ホテル」と揶揄されたスタンフォード大学ですが、今日ではアメリカだけでなく世界大学ランキングで5本の指に入る超一流大学になりました。 

<2020年世界大学ランキング>
1位オックスフォード大学(UK)
2位カリフォルニア工科大学
3位ケンブリッジ大学(UK)
4位スタンフォード大学
5位マサチューセッツ工科大学(MIT)
6位プリンストン大学
7位ハーバード大学
8位イェール大学
9位シカゴ大学
10位インペリアル・カレッジ・ロンドン(UK)

https://www.koukouseishinbun.jp/articles/-/5638

崇高な理念で設立されたスタンフォード大学ですが、当初は地方の三流大学としてあまり評価の高い大学ではありませんでした。 

しかし1939年に第二次世界大戦が始まり、欧州ではヒトラーによるユダヤ人迫害から亡命してきた人たちがカリフォルニア周辺へ移り住んだ事で転機が訪れます。 

世界の英知が結集した”知のユートピア”カリフォルニア