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論文からみる『効果的な語彙指導の方法』

はじめに

英語教育において、語彙の習得は言語能力の向上に不可欠です。効果的な語彙指導を実践するためには、多角的なアプローチが求められます。少なくとも1つの理論でうまくやっていこうという甘い考えでは、語彙指導は通用しません。以下、具体的な方法をいくつかの項目に分けて詳しく説明します。


1. 文脈を利用した指導

1.1 文脈の重要性

語彙の学習は文脈の中で行うことで効果が高まります。LauferとHulstijn(2001)の研究によれば、文脈の中で新しい語彙を学ぶことで、その語彙の定着率が大幅に向上することが示されています。

なお、文脈の中で覚えると、訳語を覚えるのではないか?という懸念がありますが、その場合は、小テストで単語を見せて、日本語訳を書かせれば大丈夫でしょう。

1.2 実際の文脈を提供する方法

例えば、以下のような具体的な文脈を提供することで、学習者は新しい語彙の意味と使い方をより深く理解することができます。

例: The teacher explained the word "subtle" by providing sentences such as "The artist used subtle colors to create a calm atmosphere."

このように、実際の文脈を提供することで、学習者は新しい単語をより効果的に習得できます。

なお、文脈から覚えるのではなく、適宜文脈を使用するというのが最も良いと思います。いきなり文脈というと、文章を訳すことになってしまい、かえって英語の勉強の負担が増えますからね。

2. 定義と使用例の提供

2.1 定義の提供

語彙指導の際には、単語の定義を明確に提供することが重要です。Nation(2001)は、語彙の定義を提供することが、学習者の理解を深めるために不可欠であることを指摘しています。

2.2 使用例の提供

定義だけでなく、使用例を提供することで、学習者は新しい語彙の実際の使い方を理解することができます。

例: 
- 単語: "ubiquitous"
- 定義: "found everywhere"
- 使用例: "Smartphones have become ubiquitous in modern society."

2.3 定義と使用例の組み合わせ

定義と使用例を組み合わせることで、学習者は新しい語彙をより効果的に習得できます。

3. アクティブな使用を促す活動

3.1 アクティブな使用の重要性

語彙の定着を図るためには、学習者が新しい語彙を積極的に使用する活動が必要です。Ellis(1995)は、語彙の積極的な使用がその定着に寄与することを示しています。

3.2 ペアワークとグループ活動

例えば、以下のような活動を取り入れることで、学習者は新しい語彙をアクティブに使用できます。

例: 
- ペアワークで新しい単語を使って短い会話を作成する
- グループでのディスカッションで新しい単語を使う

3.3 書く活動の取り入れ

また、書く活動も新しい語彙の定着に有効です。

例: 
- 日記に新しい単語を使って文章を書く
- エッセイや短いストーリーを書く

4. 継続的な復習とフィードバック

4.1 復習の重要性

語彙の習得には継続的な復習が不可欠です。Schmitt(2008)は、定期的な復習が語彙の長期的な記憶に効果的であることを示しています。

4.2 フィードバックの提供

また、適切なフィードバックを提供することで、学習者は自分の理解度を確認し、修正することができます。

例: 
- クイズ形式で定期的に復習する
- 文章作成の際に新しい語彙を使用してもらい、フィードバックを提供する

5. マルチメディアの活用

5.1 視覚と聴覚の利用

視覚と聴覚を活用することで、学習者は新しい語彙をより深く理解することができます。例えば、映像や音声資料を用いることで、語彙の理解を助けることができます。

例: 
- 映像資料を使って新しい単語を紹介する
- オーディオブックやポッドキャストを利用してリスニング練習を行う

5.2 インタラクティブなツールの活用

インタラクティブなツールを活用することで、学習者はより積極的に語彙学習に取り組むことができます。

例: 
- 語彙学習アプリを使って新しい単語を学ぶ
- オンラインクイズやゲームを利用して復習する

6. 自律学習の促進

6.1 自律学習の重要性

自律的な学習を促すことで、学習者は自分のペースで効果的に語彙を習得することができます。

6.2 自律学習の方法

以下のような方法で自律学習を促進することができます。

例: 
- 語彙ノートを作成し、自分で定期的に復習する
- 自分の興味に関連する文章を読んで新しい単語を学ぶ

6.3 学習の自己評価

また、自分の学習を評価することで、進捗を確認し、目標を設定することができます。

例: 
- 学習記録をつけて、自分の語彙習得の進捗を確認する
- 目標を設定し、それに向かって努力する

まとめ

効果的な語彙指導には、文脈を利用した指導、定義と使用例の提供、アクティブな使用を促す活動、継続的な復習とフィードバック、マルチメディアの活用、自律学習の促進が重要です。これらの方法を取り入れることで、学習者は新しい語彙をより効果的に習得し、実際のコミュニケーションに活用できるようになります。

参考文献

  • Ellis, N. C. (1995). The psychology of foreign language vocabulary acquisition: Implications for CALL. Computer Assisted Language Learning, 8(2-3), 103-128.

  • Laufer, B., & Hulstijn, J. H. (2001). Incidental vocabulary acquisition in a second language: The construct of task-induced involvement. Applied linguistics, 22(1), 1-26.

  • Nation, I. S. P. (2001). Learning vocabulary in another language. Cambridge University Press.

  • Schmitt, N. (2008). Review article: Instructed second language vocabulary learning. Language Teaching Research, 12(3), 329-363.

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