認知文法についてその概要を語る(質問にお答えします)
①結局、認知文法を一言で表すとどうなる?
まず、認知文法について語るということは「認知言語学」について語るということです。ここでは、認知言語学の基本的な原理を紹介します。
従来の形式文法のアプローチとは異なり、意味、概念構造、認知プロセスを文法の基礎として優先させます。それでは、以下、認知文法の基本的な知識について紹介していきます。
②認知文法の基本的概念
<1>概念化(Conceptualization)
認知文法は、言語および人間が、自分の経験をどのように概念化し分類するかの反映であると仮定しています。
これまでの認知に関する研究で、私たちの世界に対する理解は、知識を分類や整理する「意味領域」と呼ばれる精神構造によって形作られることを示唆しています。この「意味領域」が、言語表現の基礎となっています。
<2>イメージ・スキーマ(Image Schema)
イメージ・スキーマとは、抽象的な思考や言語の構成要素となる、空間的・知覚的な経験の繰り返しパターンのことです。イメージスキーマは、概念理解の基礎となり、その言語表現を促進する具体的な認知構造です。ハイ、ちょっと難しい説明だと思いますので、具体例に入りましょう。
<3>象徴的な単位(Symbolic Unit)
認知文法では、概念的な内容を表現するため、形と意味の組み合わせという象徴的な単位を重要視しています。
この単位は、個々の単語からより大きな文法的構造まで様々であります。これらの単位は任意ではなく「動機付け」と呼ばれるプロセスを通じて出現します。つまり、形はそれが伝える意味によって「動機付け」されるのです。
おそらく、動機づけというと「やる気」の方を思い出す人も多いと思いますが、そもそも「動機づけ」という言葉自体が多義語です。動機づけというのは元々「何かのきっかけを与えること」です。よって、意味を与えるので意味が生成され、モチベーションを与えるのでやる気が生まれるということになります。
<4>文法のネットワークモデル(Network Model of Grammar)
認知文法では、従来の階層的な構文構造に挑戦し、文法のネットワークモデルを提唱しています。このモデルでは、文のさまざまな要素が、空間的、時間的、因果的、概念的なリンクなど、さまざまな関係を通じて相互に接続されています。このネットワーク構造により、言語使用の複雑さをとらえることができるのです。
<5>メタファーとメトニミー(Metaphor and Metonymy)
認知文法では、比喩性(metaphor)と換喩性(metonymy)という現象を認めます。メタファーについては以下の記事を参照して下さい。ここではメトニミーの例の方を挙げます。
③最後に
結論として、認知文法は、人間の認知の原理に基づいて、言語の構造と構成を理解するための包括的な枠組みを提供するものです。
概念化、解釈、イメージスキーマ、記号単位、ネットワーク関係などに注目することにより、認知文法は、言語がどのように私たちの認知プロセスを反映するかについて貴重な洞察を提供します。
文の分析を通じて、認知文法の原理が実際にどのように作用するかを観察して、人間の認知の不可欠な部分としての文法の理解に貢献しています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?