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認知言語学のテキスト

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認知言語学を研究する大学院生が、認知言語学の最近の研究をまとめたマガジンです。1ヶ月に20回くらい更新します。言語学に興味がある人なら、誰でも楽しめる内容になっています。認知言語…
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#意味

課題山積みな博士論文の研究に関して、あれやこれやと言って良いですか?(その2『意味のスタンスについて』)

はじめに意味の意味とは?という哲学的な問題について答えることはほぼ不可能である。意味の意味について答えても、それは意味の「意味」であり、意味について答えを出すことはできない。今回は博士論文で課題になっている「意味のスタンス」問題について考えてみたい。 2種類の多義語研究これまでに多義語の研究では、多義性をどう捉えるかという研究が幅広く行われてきた。多義語の研究には、ある特定の単語の用例を集めて、それが多義性があると証明したもの、そして、多義性について包括した理論的なものを求

語彙意味論から見た「多義性」

はじめにいつの世も、言語は魅力的で複雑なシステムであり、有限の単語の集合を通して無数の意味を伝えることができます。この複雑さを示す現象のひとつが多義性です。多義性とは、ギリシャ語で多数を意味する「poly」と、意味することを意味する「semaino」から派生した言葉です。多義性とは、1つの単語が関連する複数の意味を表す能力のこと。この記事では、多義性の複雑さを掘り下げ、語彙意味論におけるその役割、それがもたらす課題、言語理解とコミュニケーションへの影響を探ります。 多義性の

語彙指導の新しい方向性とは?

みなさんお元気ですか。英語の勉強はいかがでしょうか。飯島尚憲です。今日は、語彙指導の新しい方向性について語っていきます。諸外国と比較していると、それなりに大きなことであることがわかります。では、そんな語彙指導というのは、どんなものなのでしょうか。それについて、考えていきます。それでははじめていきましょう! ① 語彙指導=辞書の暗記、ではない私もー過去の自分も含めてー高校生だった頃を振り返り「自分で考える」ということを苦手としていた。当時は、まだ、生成系の人工知能が発達し

多義性とカテゴリーの問題

こんにちは。ひさのりです。 今回は、多義性の問題について語っていきます。 今回のテーマとなるのは、多義性と、意味のカテゴライズの問題です。とは言っても、あまりしっくりこないと思うので、早速始めていきましょう。 1. この記事の目指すものこの記事では、多義性の概念を掘り下げ、この言語現象を理解する上で重要なカテゴリーが果たす役割を探ります。様々な例を検証し、その認知プロセスを議論していきましょう。(今回は、教育への応用を考えておりませんので、その点はご容赦くださいませ)それ

認知言語学における一般的な多義語のお話し

前回、投稿したのは「多義語の研究の最近のトレンドについて」です。以下のURLから読むことができます。 今回はその始めとして「多義語」という言葉に対してそれがどんな言葉なのかを書いていきます。 ①多義語とは何か?多義語とは、認知言語学の基本概念で、一つの単語が複数の関連した意味を持つ現象を指します。言語、意味、認知の複雑なつながりを探求する豊かな研究分野です。今回は、認知言語学における多義語な研究の魅力に迫り、ポ 多義語の多様な表れ方を具体的な事例を挙げて説明します。 ②

認知言語学における多義語の研究の最近のトレンド

①多義語とは何か?多義性とは、単語が複数の関連した意味を持つ現象で、認知言語学の魅力の一つとなり、初期の頃からずっと研究されてきました。長年にわたり、研究者は様々な観点から多義性を研究し、言語と意味がどのように絡み合っているのかについて、非常にエキサイティングな進歩をもたらしています。本稿では、認知言語学におけるポリセミー研究の現状と動向について、読者の理解を深めるために具体的な例を挙げながら掘り下げてみたいと思います。 ②多義語を支える理論はじめに、多義語を支える理論につ