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【人員削減の必要性が出た場合の最初のアプローチ】

【人員削減の必要性が出た場合の最初のアプローチ】

ベトナム人事労務コンサルティングのアジアゲートベトナム代表の豊田英司です


(はじめに)


昨今、ベトナムの人件費高騰や円安、事業構造の変質(AI技術による作業削減)など、さまざまな理由で、「従業員の削減」を検討したいというご相談が増えています。

これについては、色々と記載されていますが、非常にセンシティブな内容ですので、少しわかりにくい表現になっていて、一見して理解しづらいのも事実です。

ですので、今回は私はこれまで携わってきた経験から、「ざっくり」最初の検討すべき部分に絞ってお話しします。

(詳細)



まず、大きくいうと2つの選択肢があります。

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(1)労働法第42条にある「経済的理由」を根拠として、その実行計画を労働局に申請し、審査を受ける。承認された場合には強制力のある整理解雇を実行することができる

(2)「希望退職」ということで、ある期間内に自ら退職を申し出た場合に、特別な条件(特別退職金など)を与えることを告知し、希望者を募る
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上記(1)の「経済的な理由」による強制力のある整理解雇は、やはり、労働局に受理されるハードルは高いです。
労働局の存在意義として、これを

「はい、どうぞー」

で認めてしまうわけにはいきませんので。

労働局からは労働法第44条にある「労働者使用計画書」の提出などをベースに、「本当に人員の削減な必要なのか?」を審査するためのさまざまな質問への回答や書類の提出を求められます。

まぁ、正直な話、ベトナムの労働局としても、民間企業が

「こうしないと経営が成り立たない」

と言っていることを、

「絶対にダメだ」

とは断言はできないのも事実です。

ですが、上述のように「OK!いいですよー!」と速攻で企業の言い分を認めてしまう訳にもいかないので、結論としては、何度も何度も労働局から説明を求められたりして、

「引き伸ばし作戦」

に入られてしまうことが多いなぁ、、という印象です。

ですので、結局、

「もういいわ。希望退職にしよう」

と決断される企業様がほとんどかなー、と思います。

そもそも、経営が厳しいから、人員削減を検討しているのに、何ヶ月も労働局と不毛なやり取りをしている「手間」「時間」、そして、その間にかかる「人件費」の方がもったいないという「総合判断」、ということですよね。

(結論)


ということで、

「今期の業績が少し悪い」
「将来的な組織のスリム化のため」

ぐらいの理由では、この「経済的理由」による強制的な整理解雇はなかなか認められず、結局は「希望退職」による人員削減を選ばれる企業様が多いです。

ただ、この「希望退職」も、土壇場になって、

「転職先が決まらないので、やっぱり、退職をしない」
「この特別手当では少ないので、もっと上げてくれ」

などと言い出すケースを山ほど見てきました。

こういうことがないように、しっかりと退職に関わる以下のような基本事項を書面に残し、サインをとっておくことをお勧めします。
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・WHY(理由)
・WHEN(いつ話を聞き、いつ、合意し、いつ退職するか)
・WHAT(退職時の付与条件:特別手当、公的退職手当、有給休暇買取など)
・HOW MUCH(付与条件の金額)
・HOW TO(退職日までに必要な社内手続きなど)
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(アジアゲートベトナム代表  豊田英司 )

(参考:関連の法律)


以下全てベトナム労働法

第 42 条 構造,技術の変更又は経済的理由がある場合の使用者の義務


1.以下の場合に構造,技術の変更と看做される:

a) 労働編成構造の変更,労働の再編成;
b) 使用者の生産,経営業種に付着する生産と経営の工程,技術,機械,設備の変更;
c) 生産品又は生産品の構造の変更。


2.以下の場合に経済的理由によると看做される:
a) 経済恐慌又は衰退
b) 経済の再編又は国際的約束の実施の場合の国家の政策,法令の実施

第 44 条 労働者使用計画


1.労働者使用計画は,以下の主要な内容を含まなければならない:
a) 引き続き使用する労働者,引き続き使用するために再訓練する労働者の数及び名簿,短時間労働に移行する労働者の数及び名簿;
b) 定年退職する労働者の数及び名簿;
c) 労働契約を終了しなければならない労働者の数及び名簿;
d) 使用者,労働者及び労働者使用計画の実施にあたり関連する当事者の権利及び義務;
đ) 計画実施を保証する措置及び財政源。


2.労働者使用計画を立案する際、使用者は事業所における労働者代表組織を有する職場では事業所における労働者代表組織と意見交換しなければならない。

労働者使用計画は、採択の日から 15 日以内に労働者が知ることができるように,公開的に労働者に対して通知されなくてはならない。

第 47 条 失業手当


1.使用者は,使用者のために 12 か月以上常時働いていた労働者がこの法典 34条11 項に従って職を失う場合,その労働者に対して勤務 1 年ごとに 1 か月分
の給料相当の失業手当を支払うが、その額は最低でも 2 か月分である必要がある。


2.失業手当算出のための労働期間とは、労働者が使用者に対して実際に働いた総期間であり、労働者が失業保険に関する法令に従って失業保険に加入していた期間及び使用者が退職手当、失業手当を支払っていた労働期間を除く。


3.失業手当計算のための賃金額は、労働者が職を失う直前の労働契約に従った連続6 か月の平均賃金である。


4.政府はこの規定の詳細を規定する。
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https://www.asiagate-vietnam.com

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