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第862回「豊田英司の"今日のベトナムニュース解説"」収入減でも教育費は減らさず頑張るベトナムの家庭
本日の記事:
「経済的苦境にもかかわらず、子供の教育に多額の出費をするベトナムの両親」
原題:
" In Vietnam, parents spend big on children’s education despite economic woes "
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【本日のポイント】
(1)ベトナムでは、コロナ後、収入が減った家庭も多いが、子供の教育費は減らさず頑張っている家庭が取り上げられている
(2)中国起源の人材登用試験「科挙」はベトナムでも数百年、取り入れられており、廃止された今でも「学問の力で出世する」という文化自体は残っているのかもしれない。
(3)しかし、あるベトナムの教育研究者は「親から与えられた教育ばかりに熱心だと、将来、自ら考える力や、生き抜く力が弱くなるリスクもある」というコメントもしている。
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【解説】
アジアゲートベトナム代表の豊田です。
さて、今日の記事について。
よく「ベトナム人の親は子供の教育に熱心」というキーワードを耳にすると思います。
でも、これ、逆に、子供の教育に熱心じゃない国民や民族っているのか?ってことなんですが、これって、どこの誰と比較して「熱心」なのか?っていっつも疑問に思ってます。
日本人も、それなりに熱心だと思うんですが、それと比べてどうなのか、とか。
これは私の意見なんですが、多分、お金がある人は世界中どこでも、それなりに教育に時間とお金を投資しているんだと思うんですよね。
問題は「家庭は貧しいのに、子供の教育へ時間もお金も投資している」かどうか、なんじゃないかと思うんですよね。
で、私はこの原因は、やはり、「科挙」の伝統が生きてるんではないかと思ってます。
ご存知の方も多いと思いますが、「科挙」というのは、下記のとおりです。
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ブリタニカ国際大百科事典 より
「科挙」かきょ
中国の官吏採用試験制度。数種の科目を設け,作文の試験を行なって人材の登用をはかった。隋代に始り唐代に形を整え,宋代に中央集権的皇帝支配体制の強化とともに天子の手足となる官僚制も整備され,科挙制もほぼ大成をみ,明・清時代まで襲用された。(中略)
清末の光緒 31 (1905) 年廃止。高麗,朝鮮王朝 (李朝) ,安南にも継受された。
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まぁ、要するに、家柄や財産に関係なく、「試験能力」のある人を高級官僚として抜擢
しましょう、という制度で、中国では6世紀から20世紀まで続き、ベトナムでも
ベトナムでも中国の制度を取り入れて1442年~1779年の約300年間科挙を実施したと言われています。ハノイの観光地としても有名な「文廟」は、元々、この科挙試験が行われていた会場でもあります。
江戸時代の日本を考えれば、老中や若年寄などの高級官僚というのは、関ヶ原の戦いや大阪の陣あたりで確定した武士の家の財産(石高)量で、殆ど占められてしまっていましたので、庶民が高級官僚に成り上がる手段としては「科挙」は非常に有効な手段だったと思います。
まぁ、ただ、試験があまりに難しすぎて、そんな長年勉強だけに集中できるのは、結局、金持ちだけだった、とか、いろいろな意見はありますが、、、
まぁ、やはり、この伝統があるので、「勉強して貧しさから脱出する」というマインドがいまだに生きてるのかな、と思います。
一方で日本は江戸時代に高級官僚にはなれなくても、貧しい庶民が自ら寺子屋に行って、社会で働く上で実際に必要になる「読み・書き・そろばん」を学んでいたわけで、「実学重視」「経験重視」の日本の伝統は、この辺にも感じられます。
で、今回の記事は、現代のベトナムの貧しい家庭が、それでも教育に熱心な姿を描いております。
ホーチミン市に住む、2人の子供が今年、小学生になる家庭は新型コロナの流行後、家計収入が月2,000万ドン(約12万円)以上も減少したそうで、それでも、教育費を減らさないためにかつてはよく行っていた旅行や外食、映画、ショッピングも控え、仕事場でのランチも家でお弁当を作って持って行っているそうです。
こちらの家庭のお母さんは
「教育に投資することは、明るい未来のための礎石を築くようなものだから」
とおっしゃっているそうです。
また、ホーチミン市の別の家庭では、やはりコロナ後、かなり家計は苦しいそうですが、逆に2人の娘の教育への投資をさらに進めていると言います。
「子供の人生の最初の18年間は、将来を決める非常に重要な時期です。親は、子どもの幸福と学習のための支出を除いて、すべての投資を削減する可能性があります。」
とおっしゃっていて、ピアノ、絵画教室、英語レッスンなど、子供たちの課外授業の費用も負担しており、夫婦の貯蓄を切り崩しながら、頑張っているそうです。
それ以外にも、この記事では教育費捻出のために、格安アパートに引っ越した家庭などもインタビューされています。
まぁ、でも、日本でも、子供の学校や塾、習い事のお金を捻出するため、一流企業で働くパパがお小遣いを削って頑張ってる家庭もけっこうありますから、この辺りは「まぁ、そうなるよね、、」と共感する部分もありますよね。
以上 豊田英司
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