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【営業や販売のインセンティブ報酬制度の導入の注意点】

【営業や販売のインセンティブ報酬制度の導入の注意点】



ベトナム人事労務コンサルティングのアジアゲートベトナム代表の豊田英司です

営業や販売、製造や製図、プログラミングなど、数字的な結果が伴う作業において、その数字に比例していて報酬を与えるいわゆる「インセンティブ制度」を導入したいというご要望を多くいただきます。

特にベトナムでは日本以上にこの「インセンティブ」による効果が大きく、また、従業員も期待していることを痛感します。

こういった業務においてインセンティブをうまく取り入れれば、従来以上に速く、多く、目標に到達できることも多いと思います。


しかし、この「インセンティブ」、よく注意して導入しないと、後々、大問題になって、「こんなはずじゃなかったのに」とご相談にいらっしゃる企業様もまた多いのが事実です。

まずは簡単に、どのような問題があるか、一覧でお見せします。


(1) 量と質のバランス

(例)製造工場で「製造数」をインセンティブ目標にした為に、不良品が続出

(2) プロセスと結果のバランス

(例)産業機械の販売会社で、販売数インセンティブ目標を稼ぐために、明らかにその機械ではできないことを「できる」と言い切り、のちにクレーム

(例)製造工場で製造数を稼ぐために「インセンティブの一部を渡すから」ということで検査チームの一部に検査を緩和してもらうことを依頼

(3) 「売りやすい、作りやすい」への偏重

(例)IT会社のプラグラミングへのインセンティブを実施したが、簡単なウェブサイトで、複雑な要望のウェブサイトで同じインセンティブであると従業員からクレーム

(例)求人広告会社で、広告獲得にインセンティブを設定。すでに人気の求人雑誌の広告と、これから販売されるチャレンジングな求人雑誌では、当然、営業難易度が違い、営業からクレーム。

(4) 大きな差異をうむ前提条件の存在

(例)人材派遣会社で飛び込み営業による「名刺獲得数」でインセンティブ設定したが、そもそも、東京と地方都市では企業数や、人材派遣利用者数が全く違うので、地方都市の営業マンからクレーム

(5) 外部環境の変化

(例)新型コロナ、リーマンショック、不動産不況、為替の急激な変化など経済に大きな影響を及ぼすマクロ条件がインセンティブ設定時と変わり、対象者からクレーム

(6) 習熟によるノルマが簡単になりすぎた問題

(例)CAD製図の会社をベトナムで立ち上げ、製図数に応じてインセンティブ設定。当初は苦戦していたが1年もすると、皆、習熟し、当初1/3程度の時間でできてしまい、インセンティブが多くなりすぎて1つ当たりのインセンティブ減額を提案したところ、従業員から「どうして上手になったのに不利益を被るのか?だったら、下手なままがいいのか?」と不満が続出

(7) 「顧客メリット」より、「自分インセンティブ」の優先

(例)明らかにその商品が向いていない、必要性の低い顧客への強引なインセンティブ設定されている商品の販売、もしくは不必要な乗り換えの提案により、後日、会社への顧客からのクレームの続出


(8) 「慣れ」によるインセンティブ効果の減少

(例)当初はインセンティブを目標にやる気をアップさせていたが、達成者がほぼ100%のような状況になり、逆に貰えないと「不満」をいうような状態になり、実質、「基本給」のような状態になってしまい、インセンティブ効果がなくなってしまう。

(9) 「会社業績悪化」によるインセンティブ条件の減額

(例)大型の投資による手元資金の減少や、競合出現による利益率の減少などにより、従来のインセンティブ設定を変更せざるを得ないが、営業部員からは「我々のせいではない。経営陣の問題だ」と不満が続出し、モチベーション悪化。

(まとめ)

数値的な結果に比例したインセンティブ制度はうまく使うと非常に即効的な効果を発揮する場合もあり、その点では効果的なのですが、反面、「副作用」や「減額した場合のモチベーションダウン、不満」の跳ね返りも大きいので、導入する際には、上記のような要素を慎重に検討して、導入部門(業務)やインセンティブ額を段階的に増やしながら、導入して行くことをお勧めします。

以上 アジアゲートベトナム 代表 豊田英司


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