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第1044回「豊田英司の"今日のベトナムニュース解説"」ベトナム、米国による市場経済国の地位否定に遺憾の意

本日の記事:
「ベトナム、米国による市場経済国の地位否定に遺憾の意

原題:
"Vietnam regrets US denial of its market economy status "

記事リンク:https://tuoitrenews.vn/news/business/20240803/vietnam-regrets-us-denial-of-its-market-economy-status/81274.html


(写真:水産加工の仕事に従事するベトナムの労働者)


【本日のポイント】

(1)ベトナム商工省は、米国商務省がベトナムを非市場経済国と分類し続ける決定に対し遺憾の意を表明しました。


(2)ベトナムは72の市場経済国と同様に市場経済国であると主張し、米国に再評価を求める文書を再提出する予定です。

(3)ベトナムの対米輸出業者が最適な利益を得られるよう、同省は引き続き貿易救済措置の調査を支援・協力する予定です。

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【解説】

アジアゲートベトナム代表の豊田です。

さて、今日の記事について。

「ベトナムが非市場経済国のままに認定された」と言っても多くの日本人にはピンとこないと思います。

ただ、これは結構、ミクロでの関税の話からマクロでのベトナムは結局、米中どちらの陣営につくのか、という地政学までを含んだ重要な話なんですよね。

まず、そもそも、アメリカに「非市場経済国」として認定される、というのはどういうことでしょうか?

アメリカ商務省(U.S. Department of Commerce:DOC)は経済取引を行う国に対して「市場経済国」と「非市場経済国」という分類をします。

この「非市場経済(non-market economy, NME)ステータス」に入っちゃう国というのは、経済活動に対して政府の介入や計画経済の要素が強い経済システムを持っていると認識される国で、シンプルにいうとデメリットとしてはアメリカに輸出する際の関税が高くなる可能性が増えるんですよね。

ただ、これも本当にこういう理屈通りかというと、はっきり言ってアメリカの意向で「ゴール」はいくらでも変えられますよ。

だって、日本は当然、「市場経済国」に認定されてますが、そりゃ、全く経済に政府が介入していないか、と言ったら、そんなことないですよね。

政府の意向で優遇税制が色々と決められてたりするのは実質的に特定産業を優遇してるわけですし。

マクロな観点から言えば、この「非市場経済国」は「アメリカに味方するかどうか」の踏み絵ですよ。

それはどういう国が認定されているかを見れば一目瞭然です。

アルメニア共和国
アゼルバイジャン共和国
ベラルーシ共和国
中華人民共和国
グルジア共和国
キルギス共和国
モルドバ共和国
ロシア連邦
タジキスタン共和国
トルクメニスタン共和国
ウズベキスタン共和国
ベトナム社会主義共和国

合衆国国際貿易局ウェブサイトより)



これ、見て、「あー」って、思いません?
要するに「そっち側」だよね、と。

要するに、ベトナムからしたら、うまいこと

「ぼくちゃん、アメリカ君ともお友達〜、中国ちゃんともお友達、みんな、みんな、お友達〜!」

って、1985年以降、40年間やってきたのが、最近、アメリカ君と中国ちゃんが仲違いし始めて、アメリカ君から

「おまえ、調子いいこと言ってんじゃねーよ!オメェ、中国の仲間だろうが!」

って言われたようなもんですよ。

だから、結構、ベトナムにとってはショックだと思いますよ。

「え!?このノリじゃ、もうだめ???」

って話ですから。

で、こういうマクロから、実際、我々にどう関係してくるかというと、当然、アメリカの国益に関わるようなものをベトナムで製造してアメリカに輸出するケースでは、いつ「アンチダンピング」発動されるかわからないんで、こりゃ、きついですよ。

半導体なんか、これはちょっと、ブレーキにはなりえますよね。

そして、アメリカは常に「ちゃんとした労働組合を作って、ちゃんとした労働組合活動をしろ」ってベトナムに求めてます。

今のベトナムの労働組合はそもそも、政府の下部組織みたいなもんでコントロール下にありますから、まともな労働争議はできないようなもんですから。

これは、アメリカの理屈としたら、要するに

「まともな労働組合活動がない

→まともな賃金を得られていない

→人件費が不当に安い

→商品価格が不当に安い

→アンチダンピング発動で関税UP」


と、こういう訳で、今後、ベトナムは今の「なんちゃって労働組合」じゃなくて、本当に労働者が権利を主張できるような形に移行してくるかもしれないですよね。

そうなると、当然、ベトナムの人件費は上がってくると思います。

ということで、ミクロでは、在ベトナムの日系企業にも影響は出てくると思います。

いやぁ、国際情勢というのは複雑怪奇ですねー



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【記事の日本語訳】
ベトナム、米国による市場経済国の地位否定に遺憾の意

ベトナム商工省は、ベトナムを非市場経済国に分類し続けるという米国商務省(DOC)の決定に対して遺憾の意を表明しました。

DOCが同日、「ベトナムの非市場経済国の地位見直しの最終決定」を発表したことを受け、同省は金曜日の発表で、東南アジア諸国の経済に多くの前向きな変化が記録されているにもかかわらず、DOCがこのような決定を発表したことを明らかにしました。

在ベトナム米国大使館・領事館のウェブサイトに掲載されたプレスリリースによると、DOCは「ベトナムからの輸入品に対する米国のアンチダンピング関税の計算上、ベトナムは引き続き非市場経済国(NME)に分類されるとの決定」を発表。

この決定を受けて、ベトナムからの輸入品に対する米国のアンチダンピング関税を計算する際に使用される方法は変わらない、と同メディアリリースは述べています。

この決定により、ベトナムはNME国として、アメリカ市場に商品を輸出する業者は、アメリカによって開始されたアンチダンピングおよび相殺調査において、異なる扱いを受け続けることになる、と同省は述べています。

さらに、ベトナム企業の実際の生産コストは引き続き認識されず、ダンピングや補助金マージンを計算するために第三国の「代用値」が使用されます。

もしDOCが客観的かつ公正にベトナムの記録や慣行を調査していたならば、ベトナムは英国、カナダ、メキシコ、オーストラリア、日本、インド、大韓民国、ニュージーランドなどの主要国を含む72の市場経済国と同様に、すでに市場経済国であるという事実を認めることができたはずである、とDOCは述べています。

過去20年間、ベトナム経済は顕著な変化と発展を遂げ、欧州連合(EU)、英国、環太平洋戦略的経済連携協定(CPTPP)加盟国を含む世界各国と17の自由貿易協定を締結し、成功させてきました。

同省によると、こうした前向きな変化は、同省がDOCに提出した2万ページを超える情報や文書に明確に反映されており、DOCが市場経済国の地位を承認するために適用する6つの基準すべてにおいて、ベトナムが力強く前進していることを証明しています。

1930年米国関税法によると、この6つの基準には、外国の通貨が他国の通貨に交換できること、外国における賃金率が労使間の自由交渉によって決定されること、外国企業による合弁事業やその他の投資が外国で許可されることなどが含まれます。

他の3つの基準は、生産手段の政府所有または支配の程度、資源の配分および企業の価格と生産高の決定に対する政府の支配の程度、および管理当局が適切と考えるその他の要因。

同省はまた、同省がDOCに提出したすべての準備書面は、ベトナムがこれら6つの基準を、市場経済国として認定された他の多くの国と少なくとも同等に、また概してそれ以上に実施していることを示していると指摘。

この発表の中で、ベトナムの市場経済国認定を強力に支持してくれたアメリカの41の団体、ビジネス協会、業界団体、個人に感謝の意を表しました。

これらの支持者の中には、在ベトナム米国商工会議所(AmCham Vietnam)、全米農務省協会(NASDA)、小売業指導者協会(Retail Industry Leaders Association)、米国-ASEANビジネス協議会(USABC)が含まれます。

同省によると、ベトナム経済に関するDOCの評価を引き続き調査・分析し、概要を補足・完成させ、ベトナムの市場経済国としての地位を承認するための再調査を要請する書類をDOCに再度提出するとのこと。

このような認定は、ベトナムと米国の包括的戦略的パートナーシップをさらに具体化し、二国間の経済・貿易・投資協力を拡大し、両国の企業や国民に実際的な利益をもたらすでしょう。

同省はまた、ベトナムの対米輸出業者が最高の利益を得られるよう、貿易救済措置の調査において引き続き支援し、協力する予定です。

昨年、米国はベトナムにとって最大の輸出市場であり、この市場からの輸出収益は970億米ドルに達し、ベトナムの総輸出高の27.3%を占めています。
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以上 豊田英司
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