第1044回「豊田英司の"今日のベトナムニュース解説"」ベトナム、米国による市場経済国の地位否定に遺憾の意
本日の記事:
「ベトナム、米国による市場経済国の地位否定に遺憾の意
」
原題:
"Vietnam regrets US denial of its market economy status "
【本日のポイント】
(1)ベトナム商工省は、米国商務省がベトナムを非市場経済国と分類し続ける決定に対し遺憾の意を表明しました。
(2)ベトナムは72の市場経済国と同様に市場経済国であると主張し、米国に再評価を求める文書を再提出する予定です。
(3)ベトナムの対米輸出業者が最適な利益を得られるよう、同省は引き続き貿易救済措置の調査を支援・協力する予定です。
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【解説】
アジアゲートベトナム代表の豊田です。
さて、今日の記事について。
「ベトナムが非市場経済国のままに認定された」と言っても多くの日本人にはピンとこないと思います。
ただ、これは結構、ミクロでの関税の話からマクロでのベトナムは結局、米中どちらの陣営につくのか、という地政学までを含んだ重要な話なんですよね。
まず、そもそも、アメリカに「非市場経済国」として認定される、というのはどういうことでしょうか?
アメリカ商務省(U.S. Department of Commerce:DOC)は経済取引を行う国に対して「市場経済国」と「非市場経済国」という分類をします。
この「非市場経済(non-market economy, NME)ステータス」に入っちゃう国というのは、経済活動に対して政府の介入や計画経済の要素が強い経済システムを持っていると認識される国で、シンプルにいうとデメリットとしてはアメリカに輸出する際の関税が高くなる可能性が増えるんですよね。
ただ、これも本当にこういう理屈通りかというと、はっきり言ってアメリカの意向で「ゴール」はいくらでも変えられますよ。
だって、日本は当然、「市場経済国」に認定されてますが、そりゃ、全く経済に政府が介入していないか、と言ったら、そんなことないですよね。
政府の意向で優遇税制が色々と決められてたりするのは実質的に特定産業を優遇してるわけですし。
マクロな観点から言えば、この「非市場経済国」は「アメリカに味方するかどうか」の踏み絵ですよ。
それはどういう国が認定されているかを見れば一目瞭然です。
これ、見て、「あー」って、思いません?
要するに「そっち側」だよね、と。
要するに、ベトナムからしたら、うまいこと
「ぼくちゃん、アメリカ君ともお友達〜、中国ちゃんともお友達、みんな、みんな、お友達〜!」
って、1985年以降、40年間やってきたのが、最近、アメリカ君と中国ちゃんが仲違いし始めて、アメリカ君から
「おまえ、調子いいこと言ってんじゃねーよ!オメェ、中国の仲間だろうが!」
って言われたようなもんですよ。
だから、結構、ベトナムにとってはショックだと思いますよ。
「え!?このノリじゃ、もうだめ???」
って話ですから。
で、こういうマクロから、実際、我々にどう関係してくるかというと、当然、アメリカの国益に関わるようなものをベトナムで製造してアメリカに輸出するケースでは、いつ「アンチダンピング」発動されるかわからないんで、こりゃ、きついですよ。
半導体なんか、これはちょっと、ブレーキにはなりえますよね。
そして、アメリカは常に「ちゃんとした労働組合を作って、ちゃんとした労働組合活動をしろ」ってベトナムに求めてます。
今のベトナムの労働組合はそもそも、政府の下部組織みたいなもんでコントロール下にありますから、まともな労働争議はできないようなもんですから。
これは、アメリカの理屈としたら、要するに
「まともな労働組合活動がない
→まともな賃金を得られていない
→人件費が不当に安い
→商品価格が不当に安い
→アンチダンピング発動で関税UP」
と、こういう訳で、今後、ベトナムは今の「なんちゃって労働組合」じゃなくて、本当に労働者が権利を主張できるような形に移行してくるかもしれないですよね。
そうなると、当然、ベトナムの人件費は上がってくると思います。
ということで、ミクロでは、在ベトナムの日系企業にも影響は出てくると思います。
いやぁ、国際情勢というのは複雑怪奇ですねー
以上 豊田英司
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