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ヘッドホン事件

私が実家で5人で住んでいた頃の話です。

祖父と両親と兄と住んでいた私は、母以外とは仲が悪かったのですが、父は働いておらず、母がワンオペで仕事と家事をしていたので、私は母を手伝いながら、極力家族と関わりのないように実家の2階の自室だけで生活していました。

私は夏休みにアルバイトで稼いだお金を毎月のおこづかいにして油絵を学んでいましたが、その日は大好きな洋楽を爆音で聴きながら、とてもいい気分で油絵を描いていました。

昼間に描くと、絵の具がテカテカしてよく見えない事があったため、油絵は夜に描いていたのですが、夜20時頃から描き始めて、夜中0時頃になりました。

イイ感じで描き進めていた時、外から「オーイ、オーイ」と男性が私を呼ぶ声がしました。

私の実家は農家の分家だったので、貧乏ですが自宅は戸建てで、窓の下が80㎡位の広さの庭(ただの空き地)があって、声はその庭の真ん中からしてきました。

「ヘッドホンで爆音で曲を聴いているのに聞こえるという事は、よっぽど大きい声で叫んでいるに違いない」と思いました。

実家の近隣に親戚が住んでいたり、自治会に入っていたり、男性が多く集まるので突然ケンカが始まったりする事もあり、夜中に突然大声で叫ばれても動じない心をちゅみ太郎は持っていたので、
「なんだうるせぇな(男性相手だとすぐ口が悪くなる)」と思いながら、2階の窓を勢いよくガラガラ開けて外を見ると、誰もいません。

向かいにある運送屋さんの照明で、うちの庭が照らし出されてとてもよく見えるのですが、見渡す限り誰もいないので空耳かと思い窓を閉めて、また曲を爆音で聴きながら油絵を描き出しました。
ところがまた「オーイ」と呼ぶ声が聞こえたので、やっぱり誰か居ると思いましたが、見ると居ません。ですがとにかく "庭の真ん中から声がする" という事だけハッキリわかりました。

なんだか気持ちが悪かったのですが、不審者がいるのかもしれないのでドカドカ凄い勢いで庭に行ってみましたが誰もいなかったので「やっぱり空耳か」と思い、油絵を止めて風呂に入って寝てしまいました。

その一週間後に入院していた祖父が亡くなりました。

祖父はよく戦争の時の自慢話をしては近所で嫌がられていたり、男尊女卑な思想を持つ人物だったので、私にはDVで険悪でしたから、なぜ今わの際で私を呼んだのかはわかりません。
しかし、祖母でさえ愛する事はなかったので(当時は戦争で仕方なく結婚した…と聞いています)、他に心を許せる人間がいなくて、仕方なく電波通信できそうな私に言いに来たんだろうな~と思いました。

🄫ちゅみ太郎

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