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サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ 作品28 イ短調

692字のロングバージョンです。
 C.サン=サーンス(1835-1921)は近代フランスを代表する作曲家であるが、ピアニスト、オルガニストとしても名を馳せ、さらには天文学、哲学、文学、考古学、民俗学、素描家などとあらゆる分野に精通した人物であった。1871年にはフランス音楽の振興のために「国民音楽協会」を設立している。
 序奏とロンド・カプリチオーソは1863年に作曲され、当時の人気ヴァイオリニストであったパブロ・デ・サラサーテに献呈された。この頃、東洋趣味や異国趣味といったものが好まれていたため、この曲にもスペインの影響が随所に感じられる。しかし、あくまでもフランス近代音楽を代表する作品の一つである。
 序奏の伴奏は、ギターをつま弾くような分散和音で、その上に哀愁を帯びたヴァイオリンのメロディが奏される。ヴァイオリンのテーマは、主にアルペジオと半音階を含む動きによって成り立っている。続くロンドの伴奏は、執拗に同じリズム・パターンを繰り返し、ヴァイオリンはシンコペーションを伴う憂いがかった下降する音型に続き、長調、短調を繰り返しながら発展していく。ロンドの中間部では、規則的な8分の6拍子の伴奏の上に、4分の2拍子の揺れ動くメランコリックなヴァイオリンのメロディがのり、異国を思わせる音の連なりも顔を覗かせる。ロンド主題が最後に戻ってくる時は、それまで伴奏を受け持っていたピアノ(オーケストラ)がテーマを奏で、ヴァイオリンは広範囲に渡って行き来するアルペジオを弾く。連続した和音からなる小カデンツァを経て、同主調であるイ長調のコーダに入る。コーダは分散和音と音階に終始し、今までとは一転し華やかに幕を閉じる。


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