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OJTに続くAI時代の学習手法のOAT「On-The-AI Training」のススメ

OAT「On-The-AI Training」とは

AI時代の到来で、ビジネスシーンにおけるAI活用は必須となりつつあります。しかしながら、AIツールの効果的な使い方を習得するのは意外と難しく、多くの企業や個人が課題を抱えています。この問題を解決するための新しい学習手法が「オンザAIトレーニング(OAT)」です。

OATとは、「業務をこなしながらAIツールの使い方を身につける」という考え方です。従来からある「オンザジョブトレーニング(OJT)」と同様に、実務を通じて実践的なスキルを身に付けることができます。単にマニュアルを読むのではなく、実際の業務の中でAIツールを活用しながら、トライアンドエラーを重ねていきます。

OATのプロセス

たたき台レベルですが、OATのプロセスを考えてみました。このサイクルを繰り返すことで、業務に則した最適なAI活用方法が身に付きます。単にAIの使い方を教わるだけでなく、実務を通してAIリテラシーを高めることができるのがOATの特徴です。

1.対象業務の特定

この段階では、自社や個人のビジネスプロセス全体を俯瞰し、AIを活用できそうな業務領域を洗い出します。具体的には以下の点を検討します。

  • 現在の業務フローを見直し、人手を多く要している工程や効率化が求められる工程を特定する

  • 反復的な作業、ルールベースの判断、データ処理など、AIが得意とする作業に着目する

  • 社内に潜在する課題(作業の遅延、ミスの発生など)を把握し、AIで解決できる領域を見つける

2.AIツールの選定

その業務に適したAIツールを選びます。GPTのような汎用AIだけでなく、業務に特化したAIツールも多数出てきています。選定における主なポイントは以下の通りです。

  • 汎用的なAI(GPT-3など)か特化型のAIか、用途に合わせて使い分ける

  • AIのスキル領域(自然言語、画像/映像、データ解析など)と業務との親和性を検討する

  • AIベンダーの信頼性、導入支援体制、価格設定といった総合的な評価を行う

3.プロンプトの設計

AIにどのように指示を出すかがカギとなります。業務の目的や要件を的確に言語化し、AIが理解できるプロンプト(入力文)を作成するために、以下の点に気をつける必要があります。

  • 業務の目的、要件、制約条件をプロンプトに明確に盛り込む

  • 入力と出力のフォーマットを具体的に指定する(XMLタグの利用なども検討)

  • 実際のサンプルデータを元に、期待する出力形式を例示しておく

  • プロンプト文の長さや言葉遣いにも工夫を重ね、AIが理解しやすいものにする

4.業務でののAI活用

作成したプロンプトを使い、実際の業務でAIを活用します。この際、AIの出力結果を人間が確認し、以下のようなフィードバックを行います。

  • 内容の正確性、品質、成否の確認

  • 改善が必要な点の洗い出し(ミス、欠落など)

  • AIの出力物の一部修正や加工

  • 再入力が必要な場合は、より良いプロンプトの検討

5.プロンプトの改善

AIの出力結果を踏まえ、プロンプトをブラッシュアップしていきます。うまくいかなかった点を修正したり、よりよい表現を探ったりと、プロンプトの改善を重ねていきます。

  • 品質が悪かったプロンプトを分析し、言い回しや例示データを修正する

  • 想定外の状況が発生した際の対処法をプロンプトに追記する

  • よりスムーズな入出力が行えるよう、プロンプトを刷新し簡素化する

  • 新しい活用シーンに合わせて、プロンプトの書き換えを行う

OATのメリット

OATの導入によるメリットは主に3つあります。

AIスキルの実践的習得

従来の研修では、AIツールの一般的な使い方は学べても、業務に特化したスキルまでは身につきづらいので、理論だけでなく、実務を通じてAI活用のノウハウを体得できます。OATでは実務を通じて経験を積むことで、業務固有の課題へのAI適用力が身に付きます。

業務効率化

AIを効果的に活用することで、業務の生産性が飛躍的に向上します。付随する事務作業の削減も期待でき、人間がより創造的で付加価値の高い業務に専念できるようになる。

AIリテラシーの組織浸透

OATの実践を通じ、社員のAIに対する理解が深まり、組織全体のAIリテラシーが向上します。組織全体のデジタル化が加速し、AIを柱とした新たな事業モデルの構築が期待できる。

OATの課題

一方で、OATを実施する上での課題もいくつかあります。まず、きちんとしたプロンプトを設計するのはけっして簡単ではありません。業務内容を正しく言語化したり、想定外の状況に対処したりと、高度なスキルが必要となります。また、従来の業務プロセスの見直しが欠かせず、導入に際しては相応の労力がかかることも考えられます。

しかし、AIはビジネスの勝敗を決める重要な要素になりつつあり、企業や個人がAIリテラシーを高めることは必須の課題だと言えます。そのための実践的な学習手法としてOATは、ひとつの有力な選択肢になるはずです。

企業においてはOATを活用したAI人材の育成が、個人においては自身のスキルアップのための学習手段として、OATは大いに活用できる概念だと考えられます。まだ始まったばかりのAI活用の新しい時代において、OATが持つ可能性は大きいことが予想されます。

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