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プリンスは終わらない

バンドには終わりがあるということを以前に書いた。

では、個人としてのミュージシャンに終わりはあるのだろうか?
決して「終わらない」と思っていたミュージシャンが、もう自分と同じ世界にいない。(古風な表現では「お隠れになった」ということ。) それを初めてプリンスに教えられた。2016年のことである。

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そして2021年の今、ペイズリー・パークを訪れた。言うまでもなく、彼のスタジオ兼かつての住居である。
訪問の目的は、新譜 Welcome 2 America のリリース・パーティ、そして現在はミュージアムとして一般公開されているスタジオのツアーである。
(なおパーティとツアーで訪問できる部屋のほとんどで撮影は禁止されているので、写真はスタジオで観られるごく一部であることをご了承いただきたい。)

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リリース・パーティはまず、プリンスの朋友であるモーリス・デイを迎えたトーク・ショーで始まった。そしてライブ・フィルムの上映。プリンスがかつて利用したスタジオのサウンド・ステージは、日本で言えば中規模のライブハウス程度の規模のライブが可能だ。フィルムを観ながら、これがフィルムでなく本物のプリンスだったらとやはり思う一方で、これだけ多くのファンと一緒にライブを今でも楽しめることに感謝したくなった。

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フィルム上映の後はステージ横にあるラウンジ・スペースにて、早速リリースされたアルバムを聞きながら、特製のチーズケーキを食べてくつろぐことが出来た。これだけで、ミネアポリスを訪れた甲斐があったと思えた。

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しかし、この旅行のメインイベントはリリース・パーティの後日に参加した、ミュージアム内部のツアーである。自分がプリンスの音楽に出会った当時は、それこそ彼のスタジオに自分が足を踏み入れると思いもしなかった。

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実際に展示されている衣装の数々、特に300ペアがショーウィンドウに陳列された靴の展示は圧巻である。(当然だが)すべてが同じ足型からつくられたものであるのに、あらゆるデザインが施された一足一足には、(月並な表現だが)彼とシュー・メーカーの魂が込められていた。なお一部、公式ウェブサイトで観ることが出来る(リンクは以下)。

https://www.paisleypark.com/exhibitions/shoes

プリンスと言えば「パープル・レイン」を思い浮かべる人も多いと思われるが、映画「パープル・レイン」をテーマにした展示室ももちろんあった。映画に登場する彼の衣装やあのバイクはもちろん、映画の手書きの台本らしきルーズリーフといった記録から、プリンスが映画と同名のツアーを行っているときに、スタッフがプレゼントしたお菓子の自販機などという、今まで聞いたこともない一品まで展示されていた。

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さてここまで来たら、ミネアポリスのローカル・レコード店 Electric Fetus に行かなければ「殿下のお膝元参り」は終わらない。今では少なくなってきたアメリカ各所のインディペンデントなミュージック・ショップであるが、ここは1968年から続いている老舗であり、当然プリンスの品揃えは豊富である。先日発売された日本版の再発EP「ヒズ・マジェスティーズ」も当然のように置かれてあった。(来店の記念に店の許可を得て、プリンスのコラージュ付きの肖像画を撮影させていただいた。)

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さて、プリンスが最後に来日公演を行った2002から早くも20年もの歳月が流れようとしている。初めて観たプリンスはミステリアスでありつつ、人間としての魅力に溢れていたのをまるで昨日のことのように覚えている。それ以降、2013年に一日だけラスベガスでの公演(Live Out Loud Tour)を観ることが出来たが、その際はアフロ・スタイルの髪型が印象的であった。その当時に撮影された写真はミュージアム・ツアー中に訪れたスタジオの壁に大きくプリントされていた。

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プリンスのレガシーを誰でも観ることが出来るペイズリー・パーク。何を見ても何処を切り取ってもプリンスはプリンスだった。中でも印象に残ったのが上記の「オーケーサイン」を出す彼の写真。彼が笑顔でオーケーと言うのだから、この先も彼と違う世界を生きていても何とかなるのだろう。

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