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「9 ナイン ~9番目の奇妙な人形~」の秘密にせまるインタビュー(その3)

2010年5月8日に日本公開された映画の当時のインタビューを翻訳して3回に分けてお送りします。翻訳の正確さにおいては、元記事を参照していただければと思います。映画はアマゾン・プライムでも視聴可能です。

初監督作品である映画「9」について、シェーンアッカーが語るインタビュー。さまざまな困難を乗り越えてついに作品を完成させる最後の部分です。

Starz Animation Toronto での仕切り直し

 (その2から続く) Starzのアソシエイト・プロデューサであるグラハム•モロイは、アートワークと2つのシーケンスをリファレンスとしてAttitude Studiosから借りた。キャラクターのモデルはAttitudeで作成されたものであるが、Starzのパイプラインの中で使用できるようにキャラクターモデルをリグし直さなければならなかった。モロイは説明する。「私たちは基本的にすでにつくられていたスケルトンだけ残して残り全部を取り払って一からやり直さなければならなかったのです。私たちのスタジオではAutodesk社の製品であるMayaに自社製のプラグインを使用し、レンダリングには Mental Image社のMental Ray、さらにコンポジット(合成)にはEyeon社のFusionを使用しました。」

 アッカーも説明する。「AttitudeではMayaをツールとして使用していましたが、レンダリングにはSitex GraphicsのAirが使われていました。彼らは自前のセットアップツールを持っていたので、Stazのパイプラインに彼らのリグを持って行くことはできませんでした。」

 モロイによると、綿密に作り上げられた詳細なストーリーボードがStazに渡されたのが、大きな飛躍点だったと言う。「私たちには短編がありましたので、究極的にはキャラクターがどのように動くべきか分かっていました。」最も大変だったのは、広大な世界に小さなキャラクターが動き回ることだったそうだ。「キャラクターが地上からわずか30センチ程度のところに居るとなると、地面にはかなりのディテールが必要になります。ライティングの為には、地面の解像度を大きくする必要がありました。そうでなければ、細かい粒子や誇りすら見るに耐えないものになるからです。さらに細部までテクスチャーを加えていった結果、まるで絵画のように見えるぐらいになりました。」

 また別のチャレンジは色のパレットが暗いということだった。モロイは語る。「一般的に言って、ほとんどのアニメーション映画では2、3の暗いシーンがある他はずっと明るいシーンばかりです。黒いシーンに入っていく時は不明瞭になりすぎないように気をつけなければなりません。社内の撮影監督兼アートディレクターのケビン•アダムスとVFXスーパーバイザーのジェフ•ベルが、それらの困難を克服してくれました。舞台セットが多くの細かい部分で出来ていることもさらに複雑さを増す要因となりました。この映画のためには本当に多くの作業が必要だったのです。」

 そして最後の難関が時間の制約であった。Starzは長編映画を14ヶ月で行った。最も人数の多い時で、128人のアーティストがStarzで作業していた。プロダクションの最後の2、3ヶ月では、アッカーはサンフランシスコに滞在し(音響に関する作業をSkywalkerスタジオで行っていたため)、Starzは彼と連絡をとるのに、QuickTimeを使って確認作業を行うCineSyncを用いた。モロイによると「シェーンは私たちがレンダリングしたフレームの上に指示を書き出して、ショットを一つ一つ見ていきました。このツールは映画の一部を離れた場所にいても完成させるためにキーとなるものでした。」

 困難がつきまとい時間的な制約からのプレッシャーを感じつつも、Starzでの現場の雰囲気は良かった。モロイは言う。「作業を継続できたのも私たちが特別な映画をつくっていて、その一部になれるは非常に幸運だということが分かっていたからです。全員でシェーンのヴィジョンの後ろ盾となりました。」

 アッカーの最初の長編映画監督としての経験は、彼自身が作り上げたキャラクターたちが映画の中でくぐり抜けたの冒険のごとく、困難に満ちたものであった。しかし最終的には、彼はそれをやり遂げただけでなく、勝利を手にしたのである。Comic-Con 2009における評判は良く、批評家は映画の映像の出来を賞賛した。アッカーはこう締めくくった。「大変でしたよ。製作中に起こった出来事、政治的なこと、すべてのことが。でもスタジオから得られたサポートは本当に有り難いものでしたから、結果には満足しています。」(終わり)

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