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vol.551「採用・定着・育成に欠かせない『人事理念』とは?」


大河ドラマ『晴天を衝け』に見る人材育成の哲学

新札が発行されましたね。
といっても、私はまだ見たことはありません。
キャッシュレスの時代です。
渋沢栄一さんにお会いするまでに、
案外時間がかかるかもしれませんね。

そこで今回は、
渋沢栄一が描かれた大河ドラマ
『晴天を衝け』の中で、私にとって
最も印象深かったシーンをお伝えします。

それは、徳川慶喜が戊辰戦争に敗れ、
静岡で謹慎生活をしていた頃。
彼は、慶喜の下で産業を興して商売を盛んにし、
静岡を豊かな街へと変えようとしていました。

ところが、そんな栄一の才覚を見込んだ
新政府から「新政府の大蔵省の役人に成れ」という
辞令が届きます。
栄一は、この辞令に憤ります。

栄一は元々百姓の出身で、
慶喜に取り立てられて今があります。
そんな慶喜を武力で追いやった新政府が
「チカラを貸してほしい」と言ってきても
「新政府許すまじ」の気持ちが強く
承諾できなかったのです。

そこで、新政府に断わりに出かけます。
出てきたのは、大蔵大臣に当たる
佐賀出身の大隈重信でした。

栄一は大隈に対し、
「新政府が慶喜と幕臣を追い出すから、
新政府は人材不足で上手く行っていないのだ。
追い出さずに、最初から手を組んで
政治をすればよかったのだ!」と切り出します。

これに対し大隈は
「そんなことは自分の知ることではない」と一蹴。
次のように続けます。

「君は、新しか世を作りたいとは思わんか?!」
「日本中から八百万の神を集めねばならん!
皆で骨をおり、新しき国を作ろうではないか!
私はすぐにでも渋沢くんに、
新しい国を作るための人柱となってほしいのである!」

「八百万の神」としての人材観

私が感心したのは、このとき大隈が用いた
「八百万の神を集めねばならん」という言葉です。
日本中にいる、有能な志ある人財。
このことを大隈は「八百万の神」だと言いました。
そのチカラを結集して、新しい国をつくる。
その屋台骨を支える人柱になってくれ、というのです。

日本人は、西洋の一神教と違い、
様々なところに神が宿る多神教です。
山に行けば山の神がいて、海に行けば海の神がいます。
菅原道真公のように亡くなった偉人も神になります。
そこら中に神がいる。全国に散らばっている神を
新政府に集めて新しい国をつくる、という発想です。

このドラマを見ていて
「そうなんだ、有能な志ある人財は、神なんだ」
と、私はいたく感心しました。
それは、アーティストの中島みゆきが
『プロジェクトX』の主題歌でもある『地上の星』で
一人ひとりのビジネスマンを
「崖の上のジュピター」「水底のシリウス」に
喩えたのと同じです。

人は、同じ人でありながらも、
何かにひたすら打ち込んだり、支えて生きるとき、
「神」にもなれば、「星」にもなるのです。

この大隈の言葉にすっかり飲み込まれた栄一は
その後静岡に戻り、慶喜に経緯を報告します
そして慶喜の許しを得て、新政府に務めるのです。

栄一の翻意を促したのは大隈の言葉でありますが、
「八百万の神を集めて新しい国をつくる」という
政府の人材採用・登用・育成の考え方に
栄一が惹かれた、という見方もできるでしょう。

現代の人材不足と人事理念の重要性

昨今は、大変な人手不足です。
昨年度まで毎年新卒が採用できていた中小企業でも、
今年度の採用実績0人と、大変苦しい状況が続いています。

この人材不足は、かつてのように
好景気が原因ではありません。
原因は労働力不足(若手社員の人口減少)です。
そのため、今年以降、ずっと続きます。

どうしたら人を採用できるのか。
採用した人が定着するのか。
やりがいを持って働いてくれるか。
悩んでいない人事担当者はいないでしょう。

そんな人事担当者に是非考えて欲しいのが
「わが社の人事理念」です。
人事理念とは、自社の経営理念を実践するために
「こういう人財を採用したい、育て伸ばしていきたい」
という想いを言語化したものです。

この理念を受けて以下の方針が決まります。
・採用方針(どんな人材を採用するか)
・育成方針(どのようにして育成するか)
・評価の方針(どのような点を評価するか)
・処遇の方針(どのような報い方をするか)
・人事制度の方針(どのようなキャリアを歩んでもらうか)

逆に人事理念がないと
・採用が場当たり的、とにかく数合わせ採用に走ってしまう
 →求める人財像と大きく乖離した人材を採用してしまう
・育成は直属の先輩のOJT任せ
 →先輩の育成能力の差がそのまま個人の成長の差になる
 →育つ人もいるが、育たない人、辞める人多数
・「何をどうすれば評価されるのか」がよくわからず、
 評価がやる気を生まない、逆に下げる
 →評価への不満から、辞める人多数
・自分がワクワクする未来が描けない
 →将来への不安が強くなり、辞める人多数
 などの弊害が出てきます。

いかがでしょうか?
貴社では人事理念がない弊害が発生していませんか?

人事理念の実践例と今後の展望

先日、お会いしたある会社の人事理念は
「出る杭を伸ばす」でした。
・やりたい人、自分から手を挙げた人にはチャンスを与える
・「海外留学したい」のなら、それもOK。
 (条件は、周囲からの推薦状を貰ってくること。
  上司などが、「**さんは○○の志があるので
  □□を学ぶため留学させて欲しい」という推薦状を書く)

「推薦状とは随分ハードルが高いな」と思いましたが、
この制度に惹かれた、挑戦心のある若者が
入社希望者として集まって来ているのも事実です。

が、大元を見れば、制度に惹かれているのではなく
このような制度を生んだ「出来る杭を伸ばす」という
人事理念こそが人を惹き付けていると言えるでしょう。

「新しい国を作るため、八百万の神を集め人柱とする」
という政府の人事理念は、栄一の心を動かしました。

あなたの会社の人事理念は何でしょうか?
新しい一万円札が手元に届きましたら、
じっと見つめて考えてみましょう。

実践に役立つ動画の解説

このメルマガを読んで、「自社でも取り組んでみたい」と思われた方は、以下のような疑問や質問に答えていますので、ぜひこちらの動画をご覧ください。


質問項目

  1. 人手不足、採用難の状況で経営者に求められる意識変化は?

  2. 人事理念はどのように設定すれば良い?

  3. 人事理念を具体的な施策に落とし込むには?


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