vol.540「水原さん事件から考える、前向きなエネルギーを引き出す3条件」
大谷翔平さんの通訳の水原さんがドジャースを解雇された事件。ショックでしたね。ワイドショーのコメンテータが「あの2人の姿にどれだけ癒されたことか…」とコメントしていました。激しく同意です。そんな中、当メルマガの読者から「水原さんの件についてメルマガ書かないんですか?」という要望をいただきました。こういう問い合わせは大歓迎です。
不正のトライアングル
そこで今回は、私が本件で考えたことを綴ってみたいと思います。水原さんが具体的に何をしたのかはっきりしない点もありますが、大谷さんのお金を盗み、違法賭博の借金返済に当てたとの前提で考えてみます。
企業では、誰かが不正を行う場合、「不正のトライアングル」と呼ばれる3つの条件があると言われています。
第1は、動機です。水原さんは博打で巨額の借金を抱え、返済を迫られていたようです。これが動機になります。
第2は、機会です。大谷さんの預金を盗み出すチャンスが、あったのでしょう。顔や指紋認証などのセキュリティをどう回避したのかわかりませんが、やれるチャンスがあったのでしょう。
第3は、正当性ですどんな犯罪者も「自分は正しい」と考えると言われています。水原さんも「自分はこれだけ貢献したのだから、大谷さんのお金を使う権利や資格がある」と考えていたのかもしれません。
不正のダイヤモンド
近年では上記の3つに「能力」を加えて4条件とし、これを「不正のダイヤモンド」と呼ぶ学者もいます。能力には以下の要素があります。
不正の機会を利用するための適切な組織内の地位又は部門にいること
不正の機会を利用するための適切な専門性を有していること
不正の機会を利用する自信又はエゴがあること
他人に不正行為に参加するよう強要できること
不正の実行に関連するストレスに対処できること
嘘が上手いこと
これらのうち、水原さんがどれだけ満たしていたかは分かりません。ただこの事件を追求している関係者やマスコミは、上記4つの切り口に照らして、なぜ水原さんのような行為を呼んだのかということを突き止めようとしているようです。また、企業でも不正が発生した時は調査委員会が設けられ、調査が行われます。その時はこうした切り口から事件を検証し原因の解明と再発防止策を講じるわけです。
不正は多大な負のエネルギーを使うものです。それを引き出すのが上記の4条件だとしたら、逆に、前向きなエネルギーを引き出すにはどうしたら良いか考えてみましょう。
前向きなエネルギーを引き出す3条件
一般に前向きなエネルギーは、以下の3条件が揃うと出てくると言われています。
第1は「自分で決める」。「誰かに言われたからやる」ではなく「自分で決めた」「自分で選択した」という誰のせいでもない決意であり、覚悟が人を前向きにします。
第2は、自己肯定感です。自己肯定感は「大丈夫、私はできる」と思う感覚です。自分の能力を信じる気持ちで、自信と言ってもいいでしょう。
そして第3は、「組織の支援感」です。組織の支援感は、簡単に言うと「このメンバーとならきっと上手く行く」という組織に対する信頼です。自分がトライしても、うまくいかないかもしれない。でもそんなときは、必ず仲間がカバーしてくれる。だからきっと大丈夫。そうやって自分の組織を信じる気持ちです。
組織の支援感の重要性
私は高校の時、柔道部に属していました。同学年と一つ下にとても強い選手がいて、5人の団体戦ですと、彼らが2勝してくれました。すると残る3人のうち誰かが引き分けをすれば、あと2人負けても、代表戦です。そこで勝てば、勝ち上がることができました。私はよく負けましたが、仲間のおかげで毎回地区大会を抜けて県大会まで進むことができました。このチームにいたとき、とても柔道が楽しかったです。「組織の支援感」が高く、決して一人ではできない舞台に立つことができたからです。
この「組織の支援感」はとても重要です。かつて巨人軍が他チームの四番打者をトレードで集め、チームを作ったことがありました。ラインナップを見る限り、史上最強でした。が、よく知られているようにこのチームは強いチームにはなれませんでした。第1と第2の自己肯定感が強い人が集まっても、第3の組織の支援感が弱いと、強いチームにはなれないのです。
従業員アンケート等で「挑戦」の点数が低い組織の、原因の一つがこの「組織の支援感」が低さにあります。「このメンバーと力を合わせればきっと目標達成できる」という感覚を持てずにいるのです。その原因は、メンバー間で「どうやったら目標達成できるだろうか」とあまり話し合っていないからでしょう。また「この組織では誰も助けてくれない。万が一失敗したらどうしよう…」という不安を、一人ひとりが持っている可能性もあります。そこを変えない限り、挑戦心は出てきません。
大谷翔平選手への期待
話は水原さんから大きくそれてしまいましたが、大谷さんは、自分で決めて二刀流に挑み大リーグで成功しました。当然、自己肯定感も強い人だと思います。そして、通訳やトレーナーを務める水原さんとの間で、強い「組織の支援感」も感じていたと思います。その「組織の支援感」が失われた今、かつてのような挑戦意欲が失われてしまわないか、多くの人がとても心配しています。
そんな大谷さんは4月4日には今期初本塁打を打って、ファンを安心させてくれました。奥様と新たな通訳や、新天地ドジャースの仲間からこれまでと異なる「組織の支援感」を得て、これからも日本人、いや世界の希望であり続けてほしいと思います。
実践に役立つ動画の解説
このメルマガを読んで、「自社でも取り組んでみたい」と思われた方は、以下のような疑問や質問に答えていますので、ぜひこちらの動画をご覧ください。
「不正のトライアングル」ができるのを防ぐにはどうすればいいですか?
前向きなエネルギーを引き出す3条件をできている組織とそうでない組織の違いはどんなところに現れますか?
「組織の支援感」を高めるためには、どんな取り組みが有効ですか?
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