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【追悼歌】花と月が交わる先に

12月。足早に行き交う人の波を避け、たどり着いた店先では。5人の男女が楽しそうに、それぞれ思い思いに花を選んでいた。わたしの目の前には、キレイに並んだクリスマスカラーに彩られたブーケたち。小さな花が寄り添い合って、ゴージャス感を出している。

だって、もうすぐクリスマス。


冷え切ったこの手で。お洒落な真っ赤なバケツに入った、一輪の花を手に取る。


真っ白な、見事なまでの大輪の花。
わたしの手のひらよりも大きい。

しっかりとした太い茎と、優雅にゆれたその花は。
1枚1枚の花びらが重なり合い、余計にその白さを際立たせていて。まるで、純白のウェディングドレスのように見えた。


『どんなブーケにしてもらおうか?』

『あいつが好きだと言っていた、ムラサキをー』

『どのくらいのサイズが良いのだろう?』


「何かお探しですか?」


ふと見上げると、そこには笑顔の可愛い店員さんが立っていた。手には可愛い赤いリボンとハサミを持って。
きっと、わたしが立ち往生しているように見えたのかも、しれない。

その優しさに包まれた笑顔に。
わたしは、一瞬言葉に詰まる。
なんて言って良いのか、わからなかったからー


だって、まさか
こんな複雑な気持ちで。
この美しい花々を、いつも見ていたこのお店の花を。
選び取らなければいけない日が来るなんて…思いもしなかったから。


思わず溢れそうになった涙を隠すように
笑顔で返した。


「…はい。枕花をー」



後輩が1人、突然この世を去りました。
知ったのは、お昼過ぎでした。



先週末まで元気で何ごともなく、「また来週〜」と言って帰って行った。

「嫁がいちいち細かいんすよ〜」なんて、惚気ながら呟いていた、新婚だった。
「最近ゲーム、全然出来てないっす」なんて、好きなゲームがまったく進んでないことをボヤいていたのに…。

本当に突然。
なんの前触れもなく、彼は帰らぬ人となりました。


店員さんが、いくつかアドバイスをくれて。
心を込めてアレンジしてくれた、その花束は。
カウンター越しでも、涙が出てくるほどキレイでした。


白く純白なまでに白い大輪の花と
中央に寄せられた紫の小さな花と黄色い花が
仲良く寄り添っている。


花を手に会社に戻ると、上司が待っていた。
彼が先週までいた机に。
何もなくなった無機質な机の上に、そっと。
その花束を置く。


涙が溢れたー
もう、ココには誰もいない

ココで働くあいつは、
もう、いない


ほかの後輩や上司たちは、置かれたその花束を遠くから見つめていた。


一体、あいつはどんな気持ちで長い眠りについたのだろう。一体何を想いながら、彼女の横で眠りについたのか


もう、見ることも触れることも出来ない
あいつが語ったあの『夢』は、宙に浮いたまま


あいつの思いも悩みも想いも
何も分からないまま
あいつの時計の針は、止まったままー


1人、眠りについた君
どうか安らかに

この真っ白な大輪の花のように
この紫の淡く優しい花のように
優雅に艶やかに


この夜空に浮かぶ月のように
いつまでも穏やかに

君が守ると誓った、彼女の頬を照らせ
涙に濡れることのないように

優しい月明かりと共に


安らかに眠れー
また、会う日まで



ーー・ーー・ーー・ーー
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
複雑な心境をどう言い表して良いか、わからないまま…忘れてはいけない『時』があることを記しておきたいと思いました。

後輩が好きだった山本彩さんの曲と共に

後悔のない日々を
大切な人たちと共に…(u_u)

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