見出し画像

北風と太陽と追い剥ぎ(ナンセンス小説 2023/12/27)

北風「いいか、あの旅人の上着を脱がせたものの勝ちだ」
太陽「わかった」
追い剥ぎ「エッヘッヘ、あっしが勝つでやんすよ」

北風「じゃあ、まずは俺から……」
追い剥ぎ「なーにを言ってんですかい、こういうのは早いもの勝ちでやんす」

そういうと追い剥ぎは、旅人の方向へ走り始めました。

太陽「追い剥ぎのやつ、かなりの俊足だ。あっという間に旅人に追いつくぞ」
北風「俺も負けてられねえ!それ、ピューッ!」
追い剥ぎ「うおおおおお、寒っ!巻き添えでやんす!」
太陽「なるほど、寒い風で追い剥ぎの行動を妨害しつつ、旅人の上着を脱がしにいってるのか。一石二鳥の攻撃だ」

追い剥ぎ「くう、ならばこうだ!ファイヤアアアアア!!!!」
北風「うお、なんだあれは?燃えている!?」
太陽「追い剥ぎのやつ、自分の衣服に火をつけたぞ。これなら寒さを凌げるが、追い剥ぎ自身もダメージを受ける捨て身の行動だ」
北風「そんな炎吹き消してやる!ピューッ!」
追い剥ぎ「甘いでやんすね。服にアルコールが染みわたっているから、そんな簡単には消えねえでやんす」
北風「く、くそ!なんのこれしき!ピューッ!」
太陽「ダメだ。火は消えないどころか、風の乾燥で強さを増している」
北風「なんだとおおおお!」

太陽「追い剥ぎのやつはもう旅人のすぐ後ろだ」
追い剥ぎ「ヘッヘッヘ、あとちょっとであっしの勝利でやんす」
北風「だが、あいつ体燃えたままだぞ!?怪しすぎるだろ!」
太陽「あ、旅人が追い剥ぎに気付いたようだ。これは流石に逃げられてしまうか」
北風「ざまあ見ろ!逃げられてしまえ!」
追い剥ぎ「へっ、だから甘いでやんすよ」

太陽「あ、これは、逆だ!旅人が燃えている追い剥ぎを心配して駆け寄ってきたぞ!」
追い剥ぎ「エッヘッヘ、最初からこれが狙いでやんす」
北風「何!?まずい旅人!そいつに近づいちゃダメだ!身ぐるみ剝がされるぞ!」
追い剥ぎ「ギヒヒヒ、覚悟!」
太陽「追い剥ぎが旅人に飛びついた!決まったか!」
北風「くそおお!やめろおお!」

追い剥ぎ「ぐああ!」
太陽「おっと、ここで旅人がローキック!追い剥ぎが転倒した!」
北風「旅人が反撃している!?」
太陽「追い剥ぎに馬乗りになったぞ!そして殴る!殴る!まだ殴る!」
追い剥ぎ「ぎゃああ、やめてやめて!痛い!」
太陽「旅人、まったく手を止める気配がない!まさか追い剥ぎの命をとる気か!?」
北風「え、あいつ死ぬの?」

追い剥ぎ「ちょっとまて!話を聞くでやんす!あっしは雇われただけでっさあ!」
北風「追い剥ぎのやつ、何言ってんだ?」
太陽「嫌な予感」
追い剥ぎ「あいつらにやれって言われただけでやんす!ほら、空見て!あっち!あいつらが首謀者!極悪の化身!」
北風「あ、押し付けるつもりか!」
太陽「逃げるぞ!」
北風「おう!」

北風と太陽は逃げました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?