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遡及型シンデレラ(ナンセンス小説 2024/1/5)

シンデレラという女性が王子様と結婚した。

それは、シンデレラの足がガラスの靴にピッタリはまったからである。
シンデレラの継母や姉たちにはこれができなかった。
そして王子様は、このガラスの靴の持ち主を探していたのである。

なぜ王子様はそのような者を探していたのか。
話は城で先日に行われた舞踏会まで遡る。

そのときのシンデレラはとても急いでいた。
城から素早く去ろうとしていたのだ。
そしてシンデレラが城から出たとたん、なぜか彼女の服装がみすぼらしいものへと変化した。
そのみすぼらしい姿を王子様に見られたくなくて急いでいたのだ。

シンデレラは城の階段を急いで降りる時に、ガラスの靴を落としていた。
そう、この靴こそが王子様が持ち主を探していた件のガラスの靴である。

ところで、シンデレラはなぜ城を去ろうとしていたのだろう。
シンデレラが城から急いで去ろうとしたのは深夜の12時、日付が変わる瞬間だった。
舞踏会の会場にある時計の鐘が鳴った突端、シンデレラは何かを思い出したように走り始めたのだ。

そもそも、この日シンデレラは舞踏会に参加していた。
それも、あの王子様に見初められ踊っていたのである。
このときのシンデレラの衣装は、それはもう美麗なドレスであった。

シンデレラという女性は、いったい何者だったのだろうか。

彼女は舞踏会の途中から会場入りしたのだが、実は城に到着した時点で異彩を放っていた。
なんとカボチャの馬車に乗って来たのである。
カボチャの馬車というのは、そのまんま巨大なカボチャの風体をした馬車だ。
こんな奇妙な乗り物を、そして件のガラスの靴を含む美麗な衣装も、いったい彼女はどうやって入手したのだろうか。
その裏には、なんとも恐るべき真相があった。

魔法使いの仕業だったのだ。
シンデレラは、魔法使いのバックアップを受けていたのだ。
魔法使いは、その日の12時に解けるという条件で、シンデレラに魔法をかけた。
その魔法によってシンデレラの来ていたみすぼらしい服は美麗なドレスへと変わり、ただのカボチャが馬車へと変わり、更にはネズミが馬車を引く馬へと変わったのだ。

しかし、シンデレラはこの時まで魔法使いと面識がなかったという。
魔法使いはシンデレラの前に突然現れ、彼女に魔法をかけていったそうだ。
いったい魔法使いは何の目的でそのようなことをしたのだろうか。
その理由は少し以外なものだった。

魔法使いはシンデレラの境遇を憐れみ、力となるために彼女の前に現れ魔法を授けたのだ。
つまり、善意であった。
となると気になるのは、魔法使いが憐れんだというシンデレラの境遇とはどのようなものだったのか。

まず、シンデレラは継母や姉たちと同居しているが、その継母や姉たちは最初から舞踏会に参加していた。
シンデレラにだけ留守番をさせていたのである。
また、シンデレラはそもそも舞踏会に行けるようなドレスを持っていなかった。
継母や姉たちは持っていたのにである。

ここまで話せば勘づく方も多いのではないだろうか。
そう、シンデレラは同居人から日常的にいじめを受けていたのだ。

ああ、なんと可哀想なシンデレラ!


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