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10000000000回ゲーム(ナンセンス小説 2023/11/22)

ケンジ「ピザピザピザピザピザピザピザピザピザピザピザピザピザピザピザピザピザピザピザピザ……ピザ!」
ケンジ「やった!ついに言い終えたぞ!10000000000回だ!これでナオトとの約束を果たすことができる……あの丘に向かおう!」

約束の丘に着くと、そこには見知らぬ少年の姿があった。

ケンジ「そこの君、この辺りでナオトという男に会わなかったか?探しているんだ。」

しかし少年の回答は、予想だにしないものであった。

シゲル「ナオトは……亡くなりました。6年ほど前に。僕はナオトのひ孫のシゲルです。」
ケンジ「な……亡くなった……?」

10000000000回のピザ。それには、ひとりの人間が天寿を全うするには十分すぎる時間が費やされていたのだ。

ケンジ「私は守れなかったのか……約束を……この場所で続きをすると……誓ったのに……う……うぅ……」

私が声にもならない声を出して泣いていると、少年はあるものを私に向かって差し出した。

ケンジ「これは……一体?」
シゲル「曾祖父の遺言です。75年前、曾祖父があなたに10000000000回ゲームを仕掛けたあの日から、曾祖父はケンジさんとゲームの続きをする日を大変心待ちにしておりました。私が今日ここにいるのは、ケンジさんにこれを渡すためです。」
ケンジ「そうか……ありがとう。読ませてもらうよ。」

私はその場で封を開け、中に入っていた便箋を広げた。

ケンジ「これは……」

健二へ
ここは?
 直人より

ケンジ「ここは……ここは……」

私は、声を震わせながら答えた。

ケンジ「ここは、お前との思い出の地だ……!一日だって忘れたことはない。一緒にキャッチボールをしたり……くだらない悪戯をされたり……そして、理不尽すぎるゲームを吹っ掛けられたあの日のことも……昨日のことのように覚えている……!」
シゲル「今日、ケンジさんと会えて良かったです。」
ケンジ「私もだ……シゲルくん。」

シゲル「天国にいる曾祖父もきっと笑っていると思います。自分の膝を指さしながら……」
ケンジ「ああ、そうだな。」

……

ケンジ「いや待て、肘では?」
シゲル「引っ掛かりましたね。曾祖父の勝ちです。」
ケンジ「くそお!」

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