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「赤を啜り、終焉は虚無と知る」前篇脚本公開

HIROKI KIDA

今日は、先月上演した作品「赤を啜り、終焉は虚無と知る」を早速公開したいと思います
「隻眼の紅蓮丸」とは違い、ファンタジーの世界観で人間とバンパイアの対立を描いた少し重厚感のある作品です
コメディ的な要素はあまりないので、じっくり読んでいただけたらなと思います
また稽古場所で様々な修正も加えてあります
実際に観劇された方は思い返しながら楽しんでいただければ幸いです

作品情報
ジャンル  ダークファンタジー・シリアス・立ち回り
上演時間  130分程度
出演者   20名~25名
場面転換  有り(工夫次第で暗転ほぼ無)
上演難易度 高

「赤を啜り、終焉は虚無と知る」

   これは人間と異形の者との戦いの物語
   一人の若者が、人間の弱さと強さを知る物語
   そして一人の男が人間に絶望と希望を見出す物語でもある

序章「ベニバナ村の悲劇」

   物語は過去から始まる
   舞台上に男が一人
   男の名はオーカー
   この大陸一の大国であるマゼンタ王国の騎士団に所属する
   新米騎士である
   オーカーは語り始める

オーカー 
「ベニバナ村の悲劇。それは俺がまだ子供の頃の記憶。燃え盛る炎と叫び声、そして赤い鮮血。その日、住んでいた村が襲われた。大人たちは必死で抵抗し、子供たちを逃がそうとしたが、あまりにも無力だった。あの、人の血を啜る化物たちの前では・・・。」
   
   オーカーが語り始めると舞台上に子供が一人浮かび上がる
   辺りは炎に包まれ、様々な声が聞こえる、
   叫び声、悲鳴、怒号、泣き声
   子供があたりを見回し口を開く

子供   
「お父さん、お母さん。お姉ちゃん、どこ・・・?」

   その声に応えるかのように複数の人影が子供の前に現れる
   その人影は力なくユラユラと歩いてくる

オーカー 
「俺の前に現れたのは、最早父でも母でも、姉でも無い存在だった。」
子供   
「お父・・・さん?」

   そう呼ばれた人影が低いうなり声を上げて子供に襲いかかる
   子供は必死に抵抗するが、簡単に捻じ伏せられてしまう
   しかし、次の瞬間、その人影の身体に剣が刺さり、倒れる
   そこへ現れたのは一人の男
   男、まだ息がある人影に近づき、止めを刺す

子供   
「お父さん!」

「家族か・・・残念だが、これはもう君の家族では無い。バンパイアに血を吸われたアンデッドだ。」
子供   
「でも・・・でも・・・。」
男    
「せめて苦しまずに死なせる。」

オーカー 
「そう言って男は俺の家族だったはずの化け物をその手で葬っていった。俺はその光景をただ涙を流して見ている事しか出来なかった。」

   その間に舞台上には、オーカーが化け物と呼んだ人影が現れる
   しかし男はその人影を次々と葬って行く
   やがて全ての人影が動かなくなる

オーカー 
「どれほどの時間だったのかは分からない。泣き止んだ頃、辺りは静寂に包まれていた。ゆっくりと顔を上げた俺の前で、化け物たちの返り血で真紅に染まった男が悲しそうな顔で微笑んだ。」

   舞台再び暗くなり、オーカーだけが浮かび上がっている

オーカー 
「それから親戚に引き取られた俺はしばらくして、化け物を殺すためにマゼンタ王国の騎士団へ入った。あの男が腕につけていた腕章を今は俺も付けている。しかしあれからあの男を見たことは無かった。」
声    
「おい、オーカー!聞いているのか、オーカー。」
オーカー 
「へ?」

   次の瞬間そこは広い部屋
   数人の男女が並び、その前に一人の女がいる
   そこは、マゼンタ王国のアカデミーである
   オーカーを呼んだ声は彼らの教官であり、
   マゼンタ四将軍の一人バーガンディ
   隣にいたニールが話しかけてくる

オーカー   
「あれ?ここは?」
ニール    
「バカ!バーガンディ将軍の講義中だよ。」
バーガンディ 
「ほう、いい度胸だな、オーカー。居眠りとは。」
オーカー   
「いえ、そんな事は決して。」
ニール    
「将軍、オーカーは将軍のかっこよさに見惚れていたんだと思います。」
オーカー   
「おい、ニール何を。」
ニール    
「な?そうだよな?」
オーカー   
「あ、ああ・・・。そうです。」
バーガンディ 
「ふん。まあ、いい。ニールに免じて見逃してやろう。話を続ける。我がマゼンタ王国の新たな騎士となる君たちは、戦う敵の事を知らねばならない。今日はバンパイアについてだ。」
オーカー   
「バンパイア。」
ニール    
「将軍。バンパイアって人間の血を吸って、その人間をバンパイアに変えるって言うのは本当ですか?」
バーガンディ 
「ニール、それは半分正解で半分不正解だ。奴らに血を吸われた人間は確かにバンパイアになる。だがそれは純粋なバンパイアでは無い。」
シンシャ   
「バンパイアではなく、生ける屍アンデッドになる。そうですよね、バーガンディ将軍。」
バーガンディ 
「君は、確か。」
シンシャ   
「はい。マゼンタ四将軍が一人そして次期国王候補と呼び声の高いあのシナバー将軍の妹、シンシャです。」
バーガンディ 
「なるほど、シナバー将軍の。シンシャの言った通りだ。バンパイアに血を吸われた人間はアンデッドになる。我々はそれらを第三世代。ドライと呼んでいる。」
オーカー   
「第三世代?」
ニール    
「ドライ?」
シンシャ   
「あなたたち何にも知らないのね。バンパイアは三種類いるのよ。ですよね、バーガンディ将軍。」
バーガンディ 
「ああ、現在確認されている限りでは奴らには3種類のタイプがある。我々はそれを第一世代アインス、第二世代ツヴァイ、第三世代ドライと呼んでいる。最も目撃されるのが第三世代ドライと呼ばれる奴らだ。それらは第二世代ツヴァイに血を吸われた者たち。人間だった頃の意識や記憶はなく、ただ血肉を求め彷徨うアンデッドだ。」
オーカー   
「じゃあツヴァイは。」
シンシャ   
「ツヴァイは人間の頃の意識と記憶を若干残してこそいるが、理性はほぼなく凶暴な生き物。人間の3倍から5倍ほどの身体能力を持つと言われています。喋ることは無いが、言葉は理解できるものと考えられており、ドライを率いて村を襲うこともあります。」
バーガンディ 
「その通りだ。」
ニール    
「ってことは第一世代アインスが純粋なバンパイアって事か。」
シンシャ   
「ようやく理解できたかしら?」
バーガンディ 
「いいや、少し違うな。」
全員     
「え?」
バーガンディ 
「純粋なバンパイアはこの世に一匹しか確認されていない。我々はそのバンパイアを『始まりのバンパイア』と呼んでいる。そしてその『始まりのバンパイア』に血を吸われたのが第一世代アインスだ。奴らは人間だった頃の記憶も意識も残しながら、化け物の力を手に入れている。そして言葉を発する。いいか、これだけは言っておく。もし言葉を発するバンパイアと出会ったら迷わず逃げろ。絶対に戦うな。」
オーカー   
「何故ですか?」
バーガンディ 
「アインスはその数こそ少ないが、その力は強大だ。並の人間がどうにかできる相手では無い。今日はここまでだ。来月には諸君もこのアカデミーを卒業し、正式な騎士となる。騎士になれば各部隊に配属される。その名に恥じぬ行動を心がけろ。以上、解散。」
全員     
「はい。ありがとうございました。」

   バーガンディ去る
   生徒たち、リラックスする

ニール    
「バンパイアか、本当にそんな奴らがいるのかな。なあ、オーカー?」
シンシャ   
「本当、あなたたちは何も知らないのね。バンパイアはこの数年目撃情報こそ激減したけど、昔はこの国を脅かすほどの勢力だったのよ。」
ニール    
「そんな勢力が何で大人しくなったんだ。」
シンシャ   
「もちろんお兄様のおかげに決まっているじゃない。5年前、バンパイアが住みついていた大森林へ討伐に出たのが、あのシナバー将軍率いる精鋭部隊。始まりのバンパイア討伐は果たせなかったものの、多くのバンパイアの殲滅に成功。以降、マゼンタ王国領内でのバンパイアの被害は大幅に減少した。つまり、今あなたたちが呑気に暮らしていられるのもお兄様のおかげっていう訳。ま、あなたたちはバンパイアに出会ったら迷わず逃げる事ね。」

   シンシャ去る

ニール    
「何だ、あいつ?それにしてもオーカー、いよいよ俺たちも騎士になるんだな。」
オーカー   
「そうだな。」
ニール    
「同じ部隊に配属されると良いな。俺、早く手柄を立てて、田舎に置いてきた恋人にプロポーズするんだ。」
オーカー   
「・・・え?何でこいつフラグ立てるの?」
ニール    
「同じ部隊に配属されると良いな。」

   暗転

第一章「バンパイア」

   暗転の中、人々の叫び声と金属がぶつかる音が聞こえてくる
   戦闘が行われている様子
   舞台明るくなると様子が見えてくる
   数人の影が倒れている
   そしてオーカーとニールが剣を手にしている
   対峙している影を切り倒す

ニール  
「終わった・・・のか?オーカー生きてるか。」
オーカー 
「何とかな。生き残ったのは俺達だけか?」
ニール  
「一体何だってんだよ、治安維持の簡単な遠征だって言ってたじゃねえか。せっかくお前と同じソルフェリノ将軍の部隊に配属されたと思ったら、いきなりこんな危ない目に遭うなんて。」
オーカー 
「それは多分お前のフラグのせいだ。」
ニール  
「え?」
オーカー 
「いや。それにしてもこいつら一体何だったんだ?敵国の兵か?」
ニール  
「何だってこんな田舎村に?それにこいつら何か様子が変じゃなかったか?」
女の声  
「それはね、アンデッドだよ。」
オーカー 
「誰だ?」

   そこにいたのは一人の女
   シャドと言う

シャド  
「こんばんは、いやあ、お兄さんたち強いね。」
ニール  
「何だ、この村の娘か。まだ敵がいるかもしれない、向こうへ行っていなさい。」
オーカー 
「アンデッド?何でそんなこと。」
シャド  
「まだいるよ、お兄さんの前に。」
オーカー 
「ニール、離れろ!」

   しかし、シャドの手がニールを貫く
   ニール倒れる

シャド  
「アハハハハ、死んじゃった死んじゃった。」
オーカー 
「お前。」
シャド  
「さ、そろそろ出来上がった頃かな。」
オーカー 
「出来上がった?」

   シャドが手を翳すと倒れていた影が起き上がる
   そしてオーカーに向けて襲い掛かる

オーカー 
「よせ、みんなやめろ。俺だ、オーカーだ。」
シャド  
「無駄だよ。君の仲間はもう僕の兵隊さんだから。言ったでしょ、アンデッドだって。」
オーカー 
「まさか、さっき襲ってきたのは・・・バンパイア?何でこんな所に。」
シャド  
「アハハハハ!決まってるだろ、僕たちは食事に来たんだよ。お腹が空いて空いて仕方ないから、君たち人間をさ。」
オーカー 
「僕たち・・・喋るバンパイア。まさか、アインス。」
シャド  
「そう、僕はね、スカーレット様の忠実な僕、シャドって言うんだ。さあ、どこから食べてやろうか?腕?足?腹を切り裂いて内臓を貪るのも良いよね。それとも頭の中身を啜ってやろうかな。アハハハハ。」
オーカー 
「お前たちのせいで、みんなが、家族が。お前たちのせいで!」

   バンパイアたちがオーカーを襲う寸前
   一つの影が走りこんでくる
   そしてバンパイアたちを斬り伏せていく
   シャドはかろうじて躱す

シャド  
「誰だよ、食事の邪魔するのは。」

   そこに現れたのは一人の女性
   彼女の名はソルフェリノ
   「微笑の将軍」の異名を持つ、マゼンタ王国四将軍の一人である

ソルフェリノ 
「ごめんね、遅くなっちゃって。生きてるかい、新人君たち。って、もうみんなやられちゃってるじゃないか!生き残ってるの君だけ?」
オーカー   
「は、はい。恐らく。」
ソルフェリノ 
「嘘だ。どうしよ、これ、絶対バーミリオン様に怒られちゃうよ。おーい!お前だな、やったのは。」
シャド    
「それがどうした?」
ソルフェリノ 
「お前がやったって証拠にその首持ち帰らせてもらうね。」
シャド    
「はは!やってみな。」

   ソルフェリノ、シャドとバンパイア相手に立ち回り   
   ソルフェリノ、シャドとバンパイアを相手に引けを取らない

シャド    
「何だ、お前!人間のくせに。」
ソルフェリノ 
「お前こそ何だ。バンパイアのくせに。大したことないな。」
オーカー   
「ソルフェリノ様。」
シャド    
「ソルフェリノ?そうか、お前、マゼンタ四将軍のソルフェリノか。なるほどなるほど、こいつはいいや。こんなところで会えるとはね。でも、残念だけど今日はここまでかな。またね、次はじっくり殺してあげるよ。」

   シャドそう言うと残っていた者と去る

オーカー   
「待て・・・。」
ソルフェリノ 
「いいよ、新人君。それより、みんなを弔ってやらないと。あたしがもっと早く駆けつけていれば・・・。」
オーカー 
「ソルフェリノ様。」
ニール  
「うう・・・。」
オーカー 
「ニール?生きているのかニール。」
ニール  
「ああ、何とかな。」
オーカー 
「そうか、フラグ立てていたからもうダメかと思ったぞ。」
ニール  
「何のことだ?もうダメだって時に、大切な事を想いだしたんだ。」
オーカー 
「何だ?」
ニール  
「俺には恋人なんていなかったんだ。」
オーカー 
「そうか。」

   暗転

第二章「大国マゼンタ王国」

   音楽
   舞台上に数名の男女が出てくる
   また同時に机・椅子を運んでくる
   現れたのはマゼンタ王国の要人達
   国王であるマゼンタ、その娘カーマイン
   四将軍シナバー、バーミリオン、バーガンディ
   東部都市国家の王女アリザとその付人であるリサージ
   リサージの護衛であるギュールズ

リサージ   
「以上が今期東部都市国家から同盟国であるマゼンタ王国へと献上する物資の内訳です。何かご質問はありますでしょうか?」
シナバー   
「いや、結構。リサージ卿、そしてアリザ王女貴国の変わらぬ援助感謝する。」
アリザ    
「とんでもありません。我々は国家と言っても都市の集合体に過ぎません。そんな小国がこの大陸で安心して暮らせるのも、大陸一の大国マゼンタ王国の庇護があってこそ。マゼンタ王の為なら出来得る限りの事はさせていただきます。」
マゼンタ   
「アリザ王女、その言葉ありがたく頂戴しよう。」
アリザ    
「光栄です。」
マゼンタ   
「この国での生活は差し障りないか?」
アリザ    
「もちろんです。皆様親切にして下さり、カーマイン様にも良くして頂いております。」
カーマイン  
「はい、お父様。私もアリザ王女には仲良くしてもらっています。」
バーミリオン 
「お二人とも年の頃も同じですからね。アリザ様もカーマイン姫のよき理解者であられます。」
マゼンタ   
「そうか。これからも娘を頼んだぞ。」
アリザ    
「喜んでお引き受けいたします。」
シナバー   
「では、次の議題に入る。バーガンディ将軍。」
バーガンディ 
「はい。先日ソルフェリノ将軍が北部治安維持の遠征中、所属不明の敵の襲撃を受けたとの報告がありました。」
シナバー   
「聞いている。新人騎士も失ったらしいな。その所属不明の敵の目的は?」
バーガンディ 
「不明です。」
シナバー   
「規模は。」
バーガンディ 
「不明です。」
シナバー   
「行方は。」
バーガンディ 
「不明です。」
シナバー   
「所属は。」
バーガンディ 
「所属不明です。」
シナバー   
「何も分かっていないのか。一体あの娘は何をやっていたんだ。相変わらず使えんな。」
バーガンディ 
「それは少し言葉が過ぎるのでは?」
シナバー   
「どうかな。お前たち女は一緒にいないと何も出来ないのではないだろうな。」
バーガンディ 
「なるほど、ではお確かめになりますか?」
バーミリオン 
「やめろ、バーガンディ。」
バーガンディ 
「バーミリオン様。」
バーミリオン 
「シナバー将軍も。王の御前ですよ?」
シナバー   
「・・・。」
バーミリオン 
「まあ、確かに今回の件、ソルフェリノに責任があります。多くの未来或る若者が命を落とし、敵の目的も掴めなかった。大きな失態です。しかし、彼女に新人を任せ、遠征に行くように命じたのはどなたでしたか?」
シナバー   
「それは・・・。」
バーミリオン 
「それに、重要度の低い地域だから危険は無いと、最低限の戦力で行くように命じたのはどなたでしたか?どなたでしたか?」
シナバー   
「あ、俺だ。」
バーミリオン 
「ええ。ソルフェリノには私からも伝えておきましょう。それで、そのソルフェリノが出会った敵ですが。」
シナバー   
「不明なのだろう?」
バーミリオン 
「ええ、ただ敵はバンパイアだったと。」
リサージ   
「バンパイアですって?」
バーミリオン 
「それも、アインス。」
アリザ    
「アインス・・・。」
シナバー   
「なるほど、それならソルフェリノ将軍だけの責任には出来ないな。マゼンタ王、今は大陸統一と言う大いなる目的の為の大切な時期です。化け物どもに邪魔をされるのは都合が悪いかと。至急調査部隊の編制を。」
マゼンタ   
「うむ。数年動きを見せなかった奴らだ。何をしでかすかわからん。近隣各国とも不安定な時期だ。バーミリオン将軍、調査部隊を編成しろ、人選は任せる。シナバーは引き続きアントラ王国への侵攻作戦の準備を進めるがいい。」
シナバー   
「は、仰せのままに。」
バーミリオン 
「仰せのままに。」
リサージ   
「では、我々も失礼いたします。」

   バーミリオン、バーガンディ去る
   リサージ、ギュールズ去る

カーマイン 
「まさかバンパイアがまた現れるなんて。」
アリザ   
「カーマイン様、大丈夫。きっと将軍たちが退治してくれます。」
シナバー  
「アリザ王女の言う通りです。あなたとこの国はこのシナバーが必ず守って見せますよ。カーマイン。」
カーマイン 
「ご無事を祈っています。シナバー『将軍』。」

   カーマイン、アリザを連れて去る

シナバー  
「まだエカルラート様の事を忘れられていないようですね。」
マゼンタ  
「仕方あるまい。あのような悲劇、簡単には忘れられぬよ。」
シナバー  
「しかし新たな婚約者である私が、大陸統一と言う大きな幸福で必ず笑顔にして見せましょう。」
マゼンタ  
「期待しているぞ、シナバー。」
シナバー  
「全てはマゼンタ王国の栄光の為に。」

   暗転

第三章「王女と罪人」

   マゼンタ城内とある一画
   ソルフェリノとオーカーがいる

ソルフェリノ 
「へー、じゃあ新人君はあの「ベニバナ村の悲劇」の生き残り何だ?」
オーカー   
「はい。」
ソルフェリノ 
「確か、突然村がバンパイアに襲われて、殆ど生き残りがいなかったって聞いてたけど。」
オーカー   
「生き残ったのは僕だけだと聞いています。」
ソルフェリノ 
「そっか。それで、もう二度とあんな事が起こらないようにって騎士になったんだ?」
オーカー   
「ええ、まあ。」
ソルフェリノ 
「新人君は偉いんだねー、凄いなー、尊敬しちゃうなー。」
オーカー   
「いえ、それほどでも。それと将軍、オーカーです。」
ソルフェリノ 
「ああ、オーカー君ね。」
オーカー   
「でも、ソルフェリノ将軍の部隊に配属されて光栄です。将軍は何故騎士に?」
ソルフェリノ 
「あたし?あたしはほら、家が名門だから。」
オーカー   
「なるほど。」
ソルフェリノ 
「でもオーカー君だけでも生き残れてよかったね。」
オーカー   
「はい。自分も襲われそうになった時、助けてもらったんです。」
ソルフェリノ 
「助け?」
オーカー   
「マゼンタ王国の騎士でした。」
ソルフェリノ 
「誰だろう?名前は?」
オーカー   
「いえ、分からないんです。ソルフェリノ様ならご存じありませんか?当時ベニバナ村に誰が助けに来たのか。」
ソルフェリノ 
「あたしは人の事に興味ないからなー。」
オーカー   
「ですよね、そんな気がしました。」
ソルフェリノ 
「何か特徴とかないの?」
オーカー   
「それもあまり覚えていないんです。ただ物凄く強い方でした。」
ソルフェリノ 
「そうなんだ。あたしより?」
オーカー   
「そんなことはありません。ソルフェリノ様より強い方なんて。」
ソルフェリノ 
「いるよ。少なくとも3人、ね。」
オーカー   
「え?」
ソルフェリノ 
「あれ?あっちから来るのカーちゃんだ。」
オーカー   
「カーちゃん?ソルフェリノ様のお母様ですか?」

   そこへやってきたのはカーマインとアリザ

ソルフェリノ 
「カーちゃん。」
カーマイン  
「ソフィ?何でこんな所に?さっきまで将軍は集まっていたけど。」
ソルフェリノ 
「あー、何かシナバーに怒られそうだったからさぼっちゃった。」
カーマイン  
「さぼったって、全くあなたは偉くなっても変わらないのね。」
ソルフェリノ 
「別に偉くなってる訳じゃないからね。」
オーカー   
「カーちゃんって、まさか、カーマイン様?」
カーマイン  
「初めまして。マゼンタ王が娘、カーマインです。」
オーカー   
「お姫様じゃないですか。そんな方を何て呼び方してるんですか、ソルフェリノ様。」
ソルフェリノ 
「え?」
カーマイン  
「いいんです。ソフィとは友達ですから。その呼び方の方が私も落ち着くので。気兼ねなく話せる友人と言うものがあまりいませんから。以前なら、また違ったんでしょうけど。」
アリザ    
「エカルラート様やクリムゾンがいた頃ですか?」
オーカー   
「確かエカルラート様は殺害されたんですよね・・・。あ、失礼いたしました。軽率な発言でしたお許しください。」
カーマイン  
「いいえ、気にしないでください。みんな知っている事ですから。そうでしょう?」
ソルフェリノ 
「ま、大事件だったからね。3年前、王女カーマインの幼馴染であり許嫁だった、エカルラート様が暗殺された。この国の次期国王になるはずだった存在を失った国民はその死をひどく嘆いた。そしてそんな悪魔の所業をした男を憎んだ。エカルラート様を殺したのは、カーちゃんとエカルラート様の同じく幼馴染だった男、そしてマゼンタ王国の英雄、真紅の将軍とまで言われた男、クリムゾン。」
オーカー   
「確か、死罪になったんですよね。」
ソルフェリノ 
「一応ね。」
オーカー   
「(ソルフェリノの声は聞こえていない)それにしても恐ろしい男ですね、そのクリムゾンと言う奴は。姫様の許嫁でもあり、自分の友達でもあるエカルラート様を殺害するだなんて。考えられません。」
カーマイン  
「私もいまだに信じられません。何故クリムゾンがあんなことをしたのか。」
アリザ    
「それは仕方ないのでは。身分の違いが気に入らなかった。幼馴染が次期国王と王女で片や自分はたかが成り上がりの近衛騎士団長の息子。嫉妬するのも無理有りません。」
オーカー   
「なるほど、きっとそうに違いありませんね。悪鬼クリムゾンめ、死罪になって当然だ。もし、生きていたのならこの僕が地獄へ叩き落としてやります。ところで、あなたは?(アリザに)」
アリザ    
「申し遅れました。東部都市国家王女アリザです。」
オーカー   
「王女?アリザ王女。失礼いたしました。」
ソルフェリノ 
「いいよ、オーカー君、そんなに気を遣わなくて。」
アリザ    
「ソルフェリノ将軍は相変わらず私をお嫌いの様ですね。私がカーマイン様と仲がいいのが気に入らないのかしら。」
ソルフェリノ 
「別に。あ、てゆーかさオーカー君。さっきのカーちゃんなら知ってるんじゃないの。」
カーマイン  
「さっきの?」
ソルフェリノ 
「随分前にベニバナ村の悲劇ってあったの覚えてる?」
カーマイン  
「確か、バンパイアの集団に村が襲われて壊滅させられたって言う。」
ソルフェリノ 
「オーカー君、その村の生き残り何だって。で、その時に誰が助けてくれたのか知りたいんだって。知ってる?」
カーマイン  
「ええ、知ってますけど。」
オーカー   
「本当ですか?」
カーマイン  
「はい。」
オーカー   
「名前をご存知なら教えていただけませんか。僕の命の恩人なんです。」
カーマイン  
「でも・・・。」
オーカー   
「お願いします!」
カーマイン  
「当時の事は良く覚えています。だって、ベニバラ村の救援に向かったのは、その・・・クリムゾンだったから。」
オーカー   
「クリムゾン?エカルラート様を殺害した・・・?」
ソルフェリノ 
「そんな、何かの間違いじゃなくて?」
カーマイン  
「ううん、はっきりと覚えてる。物凄く疲れた顔で帰ってきたのを。多くの村人を斬らなくてはならなかったって。」
ソルフェリノ 
「オーカー君を助けたのが、裏切り者のクリムゾンだったなんて・・・。(顔色の悪いオーカーに気付き)大丈夫?オーカー君?」
カーマイン  
「ごめんなさい。わたし、何か飲むものを持ってくる。」
ソルフェリノ 
「いいよ、あたしが行ってくる。カーちゃんは看ててあげて。」

   ソルフェリノ去る

オーカー 
「すいません、カーマイン様。ちょっと驚いてしまって。」
カーマイン 
「気にしないでください。少し座って休みましょう。」
オーカー 
「僕を助けたのも、カーマイン様の許嫁を殺したのもクリムゾン?一体何がどうなってるんだ!あんたは一体何者なんだ、クリムゾン。」

   そのまま場面は切り替わる
   叫び声が聞こえてくる
   舞台上には逃げ回る人々
   辺りは炎に包まれている

兵士1  
「敵の侵入を許すな!何としてもここで食い止めろ!」
兵士2  
「ダメです、既に我が隊以外は壊滅した模様です。ここも持ちません。」
兵士1  
「馬鹿な、この砦はマゼンタ王国の東の要だぞ。それがこんな短時間で・・・。」
兵士2  
「せめて隊長だけでもお逃げ下さい。ここは私が。」 

   兵士2がそう言った直後、その身体が貫かれる

兵士1  
「どうした!」

   そこに現れたのはバンパイアドライたち

兵士1  
「この化け物どもめ!覚えておくがいい、必ずこの借りは返してやる。」

   しかし言い終わる前に、一人の人影が現れる
   その人影を見た途端、兵士が固まる

兵士1  
「馬鹿な、何故あなたがここに・・・?だってあなたはすでに・・・。」

   次の瞬間、人影によって兵士1の命は絶たれる
   兵士1崩れ落ちる
   一人の女が現れて人影に話しかける
   そして舞台上からゆっくりと人がいなくなる


第四章「エカルラート暗殺事件」

   場面変わり、マゼンタ城内に戻る
   先の場面でオーカーとカーマイン、アリザがいる
   
オーカー  
「ありがとうございます、カーマイン様、アリザ様。もう大分落ち着きました。ご迷惑をかけてしまい、申し訳ありません。」
カーマイン 
「気にしないでください。私にも原因がありますし。」
オーカー  
「そんなことありません。」
アリザ   
「カーマイン様はお優しいですね。一兵卒にもこのように平等に接するとは。」
カーマイン 
「身分なんて関係ありません。苦しい時はお互いに手を差し延べるべきだと思います。」
アリザ   
「それでこそ私の敬愛するカーマイン様です。私も見習わせていただきます。」
カーマイン 
「ありがとう、アリザ。ところで、オーカーでしたね?あなたに折り入ってお願いしたいことがあるのですが。」
オーカー  
「カーマイン様が僕に?一体何でしょうか?」
カーマイン 
「その、先ほどの話です。」
オーカー  
「ベニバナ村の悲劇の事でしょうか。」
カーマイン 
「はい。あなたはクリムゾンに助けられたと言っていましたね。今、あなたは彼をどう思いますか?」
オーカー  
「どう思うか、ですか。正直、良く分かりません。真紅の将軍と呼ばれ、国民に慕われていたのに、カーマイン様の許嫁のエカルラート様を殺害し国を裏切った男。」
カーマイン 
「そうでしょうね。エカルラート殺害についてはどこまで知っていますか?」
オーカー  
「いえ、詳しくは。ただ、次期国王であるエカルラート様が、幼馴染でもある真紅の将軍に殺害された、としか。」
カーマイン 
「二人は東のはずれの森で決闘をしたと言われています。そしてその中でクリムゾンがエカルラートを殺した、と。」
オーカー  
「決闘・・・しかしこの国で決闘は禁じられているのでは。」
カーマイン 
「その通りです。それに二人は本当に信頼し合っていました。私にも何故そんなことをしたのか分からないのです。ただ、エカルラートは小さい時から体が弱く、クリムゾンのように強くなりたいと願っていました。」
オーカー  
「それで決闘を?」
カーマイン 
「分かりません。でも、その気持ちを誰かに利用されたとしたら・・・?」
オーカー  
「つまり誰かに嵌められたと言うことですか?」
カーマイン 
「それはまだ・・・。だから、それをあなたに調べて欲しいんです。」
オーカー  
「僕に?」
カーマイン 
「あなたもクリムゾンの事を知りたがっている。そうではありませんか?」
オーカー  
「それは、そうですが。」
カーマイン 
「何故二人は決闘をすることになったのか?決闘の場で何が起こったのか。それを調べてくれませんか?」
オーカー  
「でも何故僕に?ほかにも適任者が。」
カーマイン 
「あなたはあの事件の頃にまだ城にいませんでした。だから冷静な目で見ることが出来ると思ったんです。それに。」
オーカー  
「それに?」
カーマイン 
「あの人にどこか似てる気がするんです。あなたは。」
オーカー  
「え?」
カーマイン 
「お願いしますね。」

   そう言うとカーマイン去る
   次の瞬間場面が変わり、騎士団の詰所
   ニールがやってくる

ニール  
「オーカー、どうしたんだ?そんなところでボーっとして。また居眠りか?」
オーカー 
「ニール。もう体は平気なのか?」
ニール  
「ああ、もうばっちりだ。で、何だ?考え事か?さては、好きな女でも出来たか?」
オーカー 
「そんなんじゃない。ちょっとカーマイン様に、な。」
ニール  
「カーマイン様?お前、カーマイン様に惚れたのか?馬鹿馬鹿、身分違いにもほどがあるだろ。でも、俺はお前の親友だ。お前がどうしてもって言うなら、応援するぜ。」
オーカー 
「だから違うって。用事を頼まれただけだ。」
ニール  
「何だ、そっか・・・って姫様に用事って、何でお前が?」
オーカー 
「ちょっとあって、少し昔の事を調べることになってな。お前、エカルラート様暗殺事件について何か知らないか?」
ニール  
「何かって、特別なことは知らないぜ。お前と同じくらいだ。俺よりソルフェリノ将軍に聞いた方が良いんじゃないか?」

   気付くとそこにソルフェリノがいる

ソルフェリノ 
「私に何か用かな。おお、オーカー君と、君は生き返った新人君。」
ニール    
「ニールです。」
オーカー   
「ソルフェリノ様、いつの間に。」
ソルフェリノ 
「で、私に何か用かい。」
オーカー   
「ソルフェリノ様。よろしければ、エカルラート様が暗殺された時のお話を聞かせていただけませんか?」
ソルフェリノ 
「別に構わないけど。」
オーカー   
「ソルフェリノ様は事件の日、何をしていたんですか?」
ソルフェリノ 
「私?私は、事件があった日はカーちゃんと一緒にいたかな。で、急に城内が騒がしくなって、衛兵に聞いたら、エカルラート様が刺されて重態だって。カーちゃんは凄く動揺しててね。私はずっとそばにいたよ。でも何で?」
ニール    
「それが、聞いてくださいよ。オーカーの奴、カーマイン・・・。」
オーカー   
「(遮って)いえ、興味本位です!クリムゾンと言う男の事を調べてみたくなりまして。」
ソルフェリノ 
「なるほどね。自分を救った奴がどんな男だったのか知りたいって訳だ。」
オーカー   
「はい。ところで、エカルラート様を医者の所までお運びしたのはどなただったかご存知ですか?」
ソルフェリノ 
「確か、バーガンディじゃなかったかな。」
オーカー   
「バーガンディ将軍が?ありがとうございます。」

   オーカー、一礼して走り去る
   別の場所にバーガンディが現れる
   そこへオーカーがやってくる

オーカー   
「バーガンディ将軍。」
バーガンディ 
「ああ、オーカーか。久しぶりだな。アカデミー以来か。今はソルフェリノの部隊に配属されているらしいな。どうも、あいつのお気に入りらしいじゃないか。」
オーカー   
「いえ、そんなことは。」
バーガンディ 
「そう謙遜するな。それで今日は何の用だ?」
オーカー   
「はい、実は・・・。」
バーガンディ 
「なるほどな、当時の事か。確かにエカルラート様を運んだのは私だ。しかし私が駆けつけた時にはエカルラート様は既に意識を失い、大量の出血をしていた。現場の様子までは覚えていないな、何しろ緊急事態だったから私もそこまでの余裕は無かったよ。」
オーカー   
「そうですか。」
バーガンディ 
「バーミリオン様なら何かご存知かも知れないな。私よりも先に現場に駆けつけていたはずだ。」
オーカー   
「バーミリオン将軍ですか?しかし僕なんかがお話を伺えるでしょうか
うか?」
バーガンディ 
「私も一応将軍なのだがな。」
オーカー   
「それは。」
バーガンディ 
「何、冗談だ。いいだろう、教え子の頼みだ。私から取り成しておこう。近日中に会えるように手配してやる。」
オーカー   
「ありがとうございます!」
バーガンディ 
「オーカー。理由はあえて聞きはしないが、気をつけろよ。あの事件については語りたがらないものも多い。余計な敵を増やさぬようにな。お前にはまだまだ働いてもらいたいからな。」
オーカー   
「肝に銘じておきます。」

   そして場面変わりバーミリオンがいる
   その正面にオーカーが立っている

バーミリオン 
「確かに、バーガンディの言う通り私も現場に居合わせた。しかし私が付いた時、既にエカルラート様は倒れていらっしゃった。そしてその向かいには返り血を浴び呆然と立ち尽くすクリムゾンの姿があった。」
オーカー   
「やはり、クリムゾンが。」
バーミリオン 
「ああ、奴の剣にもエカルラート様の物と思われる血がべっとりと着いていた。すぐに私は部下に命じてクリムゾンを取り押さえた。奴は激しく抵抗し、逃亡を図ろうとしたがな。」
オーカー   
「そうでしたか。」
バーミリオン 
「少しは参考になったかな?」
オーカー   
「ありがとうございます。ところで、一つ伺いたいのですが。」
バーミリオン 
「何だ?」
オーカー   
「将軍は何故事件直後現場に駆けつけることが出来たのですか?確か現場は人気の少ない森の中だったと伺っているのですが。」
バーミリオン 
「良く知っているな。では答える前に、私からも一つ聞いてもいいかな?」
オーカー   
「何でしょう?」
バーミリオン 
「何故私にそれを聞く?」
オーカー   
「・・・いえ、深い意味はありません。ただ、気になったので。申し訳ありません。」
バーミリオン 
「(少し笑いながら)いや、いい。良い着眼点だ。あの日私が現場の近くにいたのは偶然だ。当時、あの辺りにはバンパイアの目撃情報があってな、シナバー将軍と共に警戒任務に当たっていた。」
オーカー   
「なるほど、それで。」
バーミリオン 
「ところで、オーカーだったかな。シナバー将軍には話は聞いたのか?私よりも早く現場に駆け付けたのは彼だけだ。彼ならより詳しい話を知っているだろう。とは言え、彼は一番忙しい男だ。そう簡単に取り次ぐことはできないだろうが。機会があれば彼にも聞いてみるがいい。」
オーカー   
「わかりました。ありがとうございました。」
バーミリオン 
「ああ、でもくれぐれも気を付けてくれ。私が「偶然あの場にいた」のは、シナバー将軍に任務を依頼されたからだ。それに彼はとても頭がいい。何を考えているか分からないからな。」

   オーカー、頭を下げ去る

バーミリオン 
「オーカー、かつてクリムゾンに命を救われた男か。彼なら真実に辿り着けるかもしれない。良い部下を持ったな、ソルフェリノ。大切にしろよ。」

   そして再びニールの元へもどって来る

ニール  
「よう、収穫はあったか。」
オーカー 
「ああ、将軍たちに色んな話を聞けたんだけど。」
ニール  
「情報過多で余計に混乱してるって顔だな。」
オーカー 
「シナバー将軍に話が聞ければ、何か分かるかもしれないんだけどな。」
ニール  
「シナバー将軍か。国の内外を国王に一任され、マゼンタ王国の発展を飛躍的に向上させた男。将軍のおかげで国内の産業は一気に活性化し、国民の支持も高い、また軍事面でも数々の戦術や兵器を開発。この国がこの数年で大陸一の大国になったのは将軍のおかげとも言われている。しかも国王のお気に入りで、カーマイン様の新しい婚約者。つまり次期国王、か・・・。」
オーカー 
「そんな方が、一兵卒の俺の話を聞いてくれるわけが・・・。」
声    
「その通りですわ。」

   そこへシンシャがやってくる

ニール  
「あ、お前は。」
シンシャ 
「そう、そのシナバー将軍の妹、シンシャよ。」
オーカー 
「どうしたもんかな・・・。」
ニール  
「そうだなぁ・・・。」
シンシャ 
「ちょっとちょっとちょっと、あなたたち私を無視して話を進めようとしないでくれるかしら。あなたたち、お兄様の話が聞きたいのでしょう?」
オーカー 
「もしかして、紹介してくれるのかい?」
シンシャ 
「嫌よ。あなたたちみたいな、平民をお兄様が相手にする訳ないじゃない。」
ニール  
「何だよ。何しに来たんだよお前。」
シンシャ 
「失礼ね。私だって好きで来た訳じゃないわよ。カーマイン様に、これをあんたに渡してほしいって頼まれたの。」
オーカー 
「カーマイン様が?何だろう?」
シンシャ 
「そこに住んでいる人に話を聞くと良いとのことよ。確かに伝えたからね。」
オーカー 
「ああ、ありがとう。」
シンシャ 
「じゃあ、私はもう行くわ。あなた達と違って、忙しいのよ。」
ニール  
「はいはい、そうですか。じゃあな。」
シンシャ 
「行くわよ。本当に行くからね。もう私に聞きたいことは無いでしょ。」
ニール  
「聞いても教えてくれないんだろ。」
シンシャ 
「当然じゃない。まあ、どうしてもって言うならもう少し話を聞いてあげても良いけど、私もそんなに暇じゃないのよ。」
オーカー 
「あのさ。」
シンシャ 
「何よ!仕方ないわね、少しなら聞いてあげるわよ。」
オーカー 
「君のお兄さんってエカルラート様暗殺事件の時に何をしていたか知ってる?」
シンシャ 
「え?随分昔の事ね。そんなの詳しくは知らないわよ。でも、事件の犯人を捕まえたのはお兄様よ。」
オーカー 
「君はクリムゾンの事は知ってる?」
シンシャ 
「真紅の将軍とか呼ばれていい気になってた小物ね。大した能力もないくせに、コネと剣の腕前だけで将軍に成り上がった男よ。マゼンタ王も見る目が無いわよね。そんな男を、一時的とはいえお兄様より評価していただなんて。」
オーカー 
「え?」
シンシャ 
「エカルラートもそうよ。病弱で何も出来ないくせに、家柄のおかげで次期国王だなんて。でもまあ、結局は真面目に王国に尽くしてきたお兄様が幸せを手に入れるのよ。『鳴かぬなら鳴くまで待とう』って奴よ。」
ニール  
「何それ?」
シンシャ 
「東の島国に伝わる格言よ。あなたたち本当に何も知らないのね。さ、もういいでしょ、私はもう行くわよ。せいぜい頑張る事ね。」

   シンシャ去る

オーカー 
「ニール。」
ニール  
「ああ、どうやらお前は何とかして話を聞かなくちゃいけなくなったな。」
オーカー 
「シナバー将軍が何か知ってるかもしれない。」
ニール  
「そうだな。だが気をつけろよ。この件、あまり深追いしすぎるなよ。」
オーカー 
「お前のその一言が無ければ大丈夫だったんだがな。」
ニール  
「え?」
オーカー 
「何度もフラグを立てるな!」

   
第五章「バーミリオン出陣」

   場面変わりマゼンタ城内
   再び要人が集まり会議が行われる

シナバー   
「バーガンディ将軍、東の砦が落とされたと言うのは本当か?」
バーガンディ 
「ああ、派遣した部隊がその眼で確認したそうだ。」
シナバー   
「あそこは簡単に落とされるような砦では無いぞ。我が国の東の守りの要だ。」
バーガンディ 
「私も報告を受けた時は疑ったさ。しかし現場の様子を聞いて納得するしかなかった。」
シナバー   
「現場の様子?敵兵の死体から何か分かったのか?」
バーミリオン 
「何も無かったのだよ、将軍。」
シナバー   
「何もなかった?」
バーミリオン 
「死体が、一体も。敵も味方も、だ。砦はもぬけの殻だったそうだ。ただ、流れた血だけがおびただしい量、確認できたそうだ。」
シナバー   
「つまり・・・。」
カーマイン  
「砦を襲ったのは、バンパイアだと言うことですか?」
バーミリオン 
「その通りです、カーマイン様。そして味方の兵が一人も見つからなかったということは。」
カーマイン  
「ドライとなり、バンパイアの兵となったと言うことですね。」
バーミリオン 
「はい。」
シナバー   
「我が兵をアンデッドの兵にして取り込んだと言うことか。化け物どもめ。」
アリザ    
「我が国は?東部都市国家は無事なのですか?」
バーガンディ 
「被害は確認できていません。しかし、予断を許さない状況でしょう。」
アリザ    
「そんな・・・。」
カーマイン  
「大丈夫。シナバー将軍、すぐに対応を取ってください。東部都市国家はわが国にとっても欠かせぬ存在です。何としても守り抜いてください。」
シナバー   
「承知しました。ただちに部隊を編制、向かわせましょう。」
バーミリオン 
「私が参りましょう。」
バーガンディ 
「バーミリオン様?」
バーミリオン 
「たまには体を動かさないとな。それにバンパイアどもとは因縁もある。アリザ王女、ご安心ください。東部都市国家は必ず守って見せましょう。」
アリザ    
「バーミリオン将軍。お願いします。」

   バーミリオン去る

第六章「真紅の将軍」

   舞台上には無数の蠢く影
   様々な声・音が聞こえてくる
   まるで異界の様相
   それもそのはず、ここはバンパイアたちの居城である
   そこへ一人の男が現れる
   すると影たち静かになる
   一人の男、かつて真紅の将軍と呼ばれた男、クリムゾンである

クリムゾン 
「純血なる者たちよ。お前たちの身体には我らが主、スカーレット様の血が流れている。それはこの世界でもっとも美しく、強い生命だと言うことだ。しかし、我らの敵、人間どもはお前たちの存在を否定し、その土地を奪い続けている。許されていいはずが無い。空を愛し、森を愛し、大地を愛するスカーレット様のために、戦え。それがお前たちの生きる意味であり、目的だ。その命をスカーレット様とこの世界の為に捧げろ。」
全員    
「(激しい呻き声)」
クリムゾン 
「そして、一人でも多くの人間を殺せ。血を啜れ、肉を千切り、臓物を喰らえ、あの醜く歪んだ生き物を叩き潰せ。」
全員    
「(激しい呻き声)」
クリムゾン 
「マゼンタ王国東の拠点は制圧した、このまま進軍し、東部都市国家目前まで侵攻する。邪魔する者は捻じ伏せろ。」
全員    
「(歓喜の呻き声)」

   影たち、叫び声を上げながら去る
   数名の影だけが残る
   その影はシャド、ギュールズ、リサージ、セキ、コウ
   そしてクリムゾン

リサージ  
「いやあ、見事見事。素晴らしい演説です!人間だけではなく、化け物どもまで統率されるとは。いや、これは失敬、化け物ではなく、気高い「バンパイア」でしたね。」
シャド   
「おいこら、人間。お前ケンカ売ってるのか?今すぐその頭かち割って脳みそ啜ってやってもいいんだぞ。」
リサージ  
「シャド様、そう怒らないでくださいよ。失言ですよ、失言。ほら、馬鹿な人間どもと一緒にいるから、つい言葉づかいなんかもクセで。あるでしょ、そういうこと。」
ギュールズ 
「シャド、やめろ。こいつも今は仲間だ。」
シャド   
「チッ・・・。」
ギュールズ 
「我々の今後は?」
クリムゾン 
「ギュールズは引き続きリサージ卿の警護を任せる。」
セキ    
「私たちは?」
クリムゾン 
「セキ、コウお前たち二人はマゼンタ王国に敵対する国へ行ってもらう。この人間が用意した書状を届けろ。」
コウ    
「もし言う事を聞かなかったら?」
クリムゾン 
「少し位なら血を流しても良い。」
シャド   
「僕は僕は?」
クリムゾン 
「シャド、お前の出番はまだだ。スカーレットの傍にいろ。」
シャド   
「また?スカーレット様の近くもいいけど、たまには僕にも派手に暴れさせてよ。一杯殺したいんだよね、一杯いっぱいいっぱい。」
クリムゾン 
「それはまだ先だ。やることはたくさんある。」
シャド   
「そんなさあ、人間みたいな戦争の仕方しなくても良いじゃん。僕たちバンパイアなんだよ?適当に村襲って、血を啜って、アンデッド作ってさー。ぐちゃぐちゃな、ぐちゃぐちゃな戦争しようよ。」
クリムゾン 
「ダメだ。」
シャド   
「てめえ、何調子こいてんだ?あ?勘違いするなよ。僕はお前の部下になった覚えはねえんだぞ。スカーレット様が言うから仕方なくお前の言うとおりにしてやってるだけだ。本当だったらお前も今すぐ食っちまってもいいんだからな。」
ギュールズ 
「やめろ。」
シャド   
「うるさい、黙ってなギュールズ。」
ギュールズ 
「やめろ。」
シャド   
「・・・分かったよ。忘れるなよ、いつでもその首食いちぎれるからな。」
クリムゾン 
「覚えておこう。」

   シャド、ギュールズ、セキ、コウ去る

リサージ  
「ちょっとちょっとめちゃくちゃ怖いじゃないですか。良くこんな所で平気でいられますね。」
クリムゾン 
「もう慣れましたよ。」
リサージ  
「頼みますよ。ここで唯一の人間であるあなたが殺されてしまったら、私なんてイチコロなんですから。」
クリムゾン 
「善処します。それで、首尾はどうですか。」
リサージ  
「それはもう、お任せください。東部都市国家国王を始め、近隣諸国はスカーレット様に力を貸すと言っております。あなたが描いた連合国家がまもなく建国されるでしょう。でもでも、忘れないでくださいよ、約束の方。」
クリムゾン 
「ああ。アインスの力でしたね。」
リサージ  
「人間を越える力と再生能力に長い寿命。これが欲しくない権力者なんていませんからね。話をまとめるのは思ったよりも簡単でしたよ。」
クリムゾン 
「そうでしたか。それはなにより。」
リサージ  
「おっと、それでは私もこれで。大事な仕事がありますからね。では真紅の将軍、クリムゾン様。」
クリムゾン 
「ええ。よろしくお願いします。」

   リサージ上機嫌な様子で去る
   舞台上にはクリムゾンが一人

クリムゾン 
「くだらないな、エカルラート。こんな世界が理想だったか?それなら壊してやろう、何もかも。そして教えてやる、行きつく先に何が残っているか。」

   暗転


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ありがとうございました
まずは第一篇として、6章までを公開しました
近日中に全篇をお届けしたいと思います
また公演特設サイトに様々な解説も掲載しているのでそちらもごらんになりながら楽しんでいただけたらと思います
小説とは違い、戯曲は風景や感情などの描写が少なく、俳優の演技に左右されるところがあります
皆さんの頭の中の想像力と言う俳優を使い楽しんでいただけたら幸いです

次回予告

東部都市国家を救うべく出陣したバーミリオン
マゼンタ王国最強と言われる彼女が戦場を駆ける時
そこは化け物どもの血の海が出来上がると言われている
第七章
「鮮血のバーミリオン」

お楽しみに


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HIROKI KIDA

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