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イベント用「隻眼の紅蓮丸」Short Ver.

こんにちは
昨日に引き続き、多くのイベントが中止・延期の為少しでも自宅で演劇を楽しんでもらえるために脚本の公開をしていきます
昨日公開した「隻眼の紅蓮丸」は口コミで様々な所で上演依頼があった為、イベントに出演する際用の、ショートバージョンがいくつもあります
その中でも、近年もっとも上演したバージョンを今日は公開しますね
読み切り作品だと思って楽しんでいただければと思います

作品情報
ジャンル  コメディ・時代物(架空)・立ち回り有
上演時間  目安20分程度
出演者   4名
場面転換  多少あり
上演難易度 低

隻眼の紅蓮丸 イベント用Short Ver.

登場人物
 ・隻眼の紅蓮丸
 ・団子屋のおみつ
 ・団子屋剛助
 ・翡翠


   舞台は街道沿いの小さな団子屋
   椅子が二脚程置いてある程度
   一脚は男が一人座り、一脚は空いている
   団子屋の娘、おみつが団子と茶を座っている男に出す

おみつ  おまたせしました。当店自慢のみたらし団子です。
男    (軽く会釈をする)
おみつ  ごゆっくりどうぞ。

   そこへ一人の男、紅蓮丸がやってくる
   
おみつ  あ、そこのお侍さん。どうですか、長旅で疲れているなら、ウチで一休みしていきませんか?おいしい団子とお茶がありますよ。
紅蓮丸  団子か、そいつはいいな。よし、一休みがてら、もらおうか。
おみつ  はい、ありがとうございます。

   おみつ、店の奥へ

紅蓮丸  しかし、ここは良い所だな。空気は美味いし、眺めも良い。少しここでゆっくりするのも良いな。ここがどこらへんなのか、イマイチ分かってないけど。

   おみつが戻ってくる

おみつ  ここは森町ですよ。
紅蓮丸  森町?
おみつ  知らずに来たんですか?もしかして迷子。
紅蓮丸  迷子では無い。ただの方向音痴であって、迷子では無い。
おみつ  それ迷子って言うんじゃ・・・。
紅蓮丸  迷子では無い。
おみつ  はい。
紅蓮丸  それにしても、街並みも風情があって、実に住みやすそうな所だな。
おみつ  最近では、遠州の小京都と呼ばれて、人気なんですよ。
紅蓮丸  なるほど、それで今日はこんなに人が多い訳だ。
おみつ  はい、こちらが当店自慢のみたらし団子です。
紅蓮丸  おお、これは美味そうだ。自然の中で食べる団子はまた格別だな。うん、美味い。
おみつ  秘伝のタレを使っているのでウチでしか食べられないんですよ。

   そこへ、男が声を上げてやってくる

剛助   やい、おみつ!おみつはいるか。
おみつ  あの声は・・・。
紅蓮丸  どうかしたのかい?
おみつ  いえ、何でもありません。
剛助   おお、おみつ、どうだ?いい加減気持ちは固まったか。
おみつ  剛助さん、またその話ですか?そのお話はお断りすると言ったはずです。
剛助   何を意地を張っているんだ。断る理由がどこにある?親父さんの亡くなったこの店ごとお前を貰ってやると言っているんだぞ、この剛助が。
おみつ  ですから、そんなことお願いしていません。このお店はお父さんの分まで私が守って行きますから。
剛助   女手一つで何が出来る。俺の店の下に入れば、この店だってもっともっと大きくすることだってできるんだぞ。亡くなった親父さんを安心させてやるためにも、俺の嫁になれ。
おみつ  嫌です。私、自分より背の小さい人は好きになれません。
剛助   ガーン・・・。お前、言ってはいけないことを言ってしまったな。いいか、こんな小さな店、潰してしまうのは簡単なことなんだぞ。俺が本気を出せば今すぐにでもな。

   剛助、店の物を雑に扱う
   それを止める紅蓮丸

剛助   何だ、お前は?   
紅蓮丸  名乗るほどの者じゃないさ。それより、そのお嬢さん嫌がってるじゃないか。
剛助   それが、どうした?あんたおみつの知り合いか?それとも俺に何か恨みでもあんのか?
紅蓮丸  いいや、今初めて会ったし、あんたにうらみも無い。ただ。
剛助   ただ?
紅蓮丸  この状況で見て見ぬふりをする訳にも行かないだろう。
剛助   ふん。かっこいいこと言うじゃねえか。
紅蓮丸  そうだろう。
剛助   は?
紅蓮丸  見るがいい、悪党よ。この姿を。
おみつ  眼帯に、刀が二本・・・。
剛助   見るからに強そうだ。
紅蓮丸  そうだ、眼帯に二刀流。どこからどうみても強そうだろう。そうだ、俺はとっても強いのだ。だから、無駄な争いはやめ、大人しく手を引いた方が良い。痛い目を見たくなければな。
剛助   くっ、くそ。そうはいくか、今日は諦めるわけにはいかねえんだ。
紅蓮丸  え?
剛助   邪魔をするなら、こっちだって本気を出させてもらうぞ。
紅蓮丸  いや、やめといた方がいいと思うな。ほら、俺って強いし、怪我とかしちゃうよ?
剛助   うるせえ、このやろう!

   剛助が紅蓮丸に殴りかかる
   紅蓮丸倒れる

剛助&おみつ え?
おみつ  あれ?弱い?
剛助   ・・・ハハハハハ、何だこいつ。見かけだおしじゃねえか、おどかしやがって。ったく、余計な手間取らせやがって。さあ、おみつ。もう一度返事を聞かせてもらおうか。
おみつ  何度聞かれても同じです。私はこの団子屋を辞めるつもりはありません。
剛助   この分からず屋め。
紅蓮丸  (起き上がる)ふっふっふ、今のは手加減をしただけだ。そんな拳など、俺には効かぬ。
剛助   ちょっと涙出てるじゃねえか。
紅蓮丸  これは汗だ。
剛助   見かけだおしは黙ってな、俺はこいつに用があるんだ。

   剛助、おみつを叩こうとする
   しかし、その手を止める男

剛助   な、何だてめえは。
男    先ほどから一部始終を見させていただきましたが、あなたのやり方は少々目に余る。
剛助   てめえも邪魔しようって言うのか。
男    そうですね。か弱い女性が傷つくのを放っては置けませんので。
剛助   かっこつけやがって、てめえも痛い目に遭いたいらしいな。

   剛助、男に殴りかかる
   しかし男、その拳を躱し、剛助を取り押さえる

剛助   いててててて!
男    どうですか?これでもまだ続けますか?
剛助   わか、分かった。分かったから放してくれ、いてててて。

   男、剛助の手を放す

男    どんな事情があるのかは知りませんが、暴力は感心しませんね。それも男性が女性に手を上げようなど。愚の骨頂です。
剛助   ちくしょう、今日の所は引き上げてやる。でも俺はあきらめねえからな、おみつ。必ずこの団子屋はウチの下に入ってもらう。

   そう言うと剛助、去る

男    怪我はありませんか?
おみつ  はい。あの、ありがとうございました。何てお礼を言ったらいいか。
男    気になさらないでください。女性を守るのが私の使命です。
おみつ  (見惚れる)・・・あ!何かお礼を。
男    結構ですよ。おいしいお団子を食べさせていただいたお返しです。
おみつ  そんな、でも。
男    それに、礼なら既に頂きましたよ。
おみつ  え?
男    その可憐な笑顔が、最高のお礼です。
紅蓮丸  わあ。
男    それにしてもあの男、諦めた訳では無さそうですね。もしよろしければ、話を聞かせていただけますか?
おみつ  でも・・・。
男    あいさつが遅れましたね。私は翡翠と言います。行く先々で、困っている人々を助けるのが私の仕事です。
紅蓮丸  はっはっはっ、いやあ、奇遇ですね。実は私も旅をしながら、方々で人助けをしているんですよ。一緒ですね。
翡翠   あなたは?
紅蓮丸  これは失敬、あいさつが遅れたな。俺は紅蓮丸と言う。翡翠殿、よろしくな。
おみつ  さっき殴られてのびてましたけど、大丈夫ですか?
紅蓮丸  はて、一体何の事かな?しかしあの男、諦めた訳では無さそうですね。もしよければ、話を聞かせてくれないかい?
翡翠   それ、先ほど私が言いましたよ。
紅蓮丸  混ぜて、俺も。俺、主人公だから。活躍させて。
翡翠   やれやれ、面白い方ですね。しかし味方は多い方が良いですからね。紅蓮丸さんのお力も貸してください。
紅蓮丸  ありがとう。
おみつ  お二人とも、ありがとうございます。この団子屋は、父と二人でやってきました。大きなお店ではありませんが、父の作る団子を気に入ってくれる常連さんのおかげで、父も私も何の不満も無くやってきました。でも、その父が先月亡くなってしまって。
紅蓮丸  でも、団子屋が続けられなくなったわけじゃないんだろう。
おみつ  はい。父が残した秘伝のタレの料理法の巻物があるので、父が生きていた時と同じ味で作っています。
翡翠   では、あの剛助と言う男は?
おみつ  剛助さんは、街中で大きなお菓子屋を経営している人です。父の生前から、何度も自分の店の傘下に入らないかと勧誘に来ていたんです。
紅蓮丸  なるほど、親父さんの秘伝のタレを利用して、事業拡大を狙っているって訳か。
おみつ  おそらく。でも父も私もこの店を大きくするつもりはありませんでした。金儲けの為に店を増やしたら、どこかでこの味ではなくなってしまう、と父が言っていました。だから、私は父が残したこの味を守る為に、剛助さんの言うとおりにするつもりはありません。
翡翠   しかし剛助はあなたと縁談を無理やり結び、この店ごと奪おうとしている。と言う訳ですね。
おみつ  はい・・・私は自分より背の小さい人とは。
紅蓮丸  うん。それは分かったから。それ以上言うと、小さめサイズの男の子たちが傷つくからね。
翡翠   例えば、偽物の秘伝書を渡すと言うのはどうでしょう?
おみつ  そんなことをしたら、父の味が間違って広まってしまいます。
翡翠   では、おみつさんが別の方と縁談を結んでしまうと言うのは?
おみつ  え?
翡翠   思いを寄せている殿方はいらっしゃらないのですか?
おみつ  は、はい・・・。
翡翠   それは勿体ない。おみつさんはこんなにも美しいのに。
紅蓮丸  ゴホン。で、どうやってあの男を諦めさせるか、だな。
翡翠   勝負をしてはいかがでしょう?
紅蓮丸  勝負?
翡翠   あちらの代表者とこちらの代表者で試合をして、負けた方が言う事を聞く。あちらが勝てば、秘伝書を渡す。我々が勝てば二度とおみつさんには手を出さないと約束させる。
紅蓮丸  そんな勝負にあちらさんが乗ってくれるかね。
翡翠   私が行きましょう。こう見えても、交渉は得意なんです。
おみつ  でも、何から何までお願いしてしまっては。
翡翠   気になさらないでください。
おみつ  初対面の私の為に、何でそこまで?
翡翠   人助けに理由などありませんよ。人を好きになる時もね。
おみつ  え?

   翡翠、去る

おみつ  翡翠さん・・・。
紅蓮丸  それじゃあ、俺もちょっと準備をしてこようかな。
おみつ  紅蓮丸さんも?
紅蓮丸  もし翡翠殿が剛助との交渉に失敗したら、助けに行かないとだろう。
おみつ  そんな事言って、逃げたりしませんか?
紅蓮丸  しないよ。弱いかもだけど、そんな卑怯な真似しないよ。
おみつ  冗談ですよ。お願いしますね。
紅蓮丸  ま、翡翠殿がしくじるとは思えないけどな。
おみつ  え?

   紅蓮丸、去る

おみつ  お父さん、真面目にやってると助けてくれる人が現れるって本当だったね。

   おみつ去る(ここで椅子を片付ける)
   少しして、紅蓮丸が出てくる

紅蓮丸  あれ?ここどこだ?完全に道に迷ってしまったぞ。あっちが、団子屋?ん?こっちだったか?誰か助けてー!ん?誰か来る?あれは・・・。

   近づいてくる人影を見て、紅蓮丸物陰に隠れる
   そこへやってきたのは翡翠、少し離れて剛助

剛助   おい、わざわざこんなところで話さなくちゃいけないのか。
翡翠   ええ、大切な話ですからね。
剛助   なるほどな。で、どうなってるんだ?
翡翠   上手く行っていますよ。あのおみつと言う娘は完全に私を信用しています。
剛助   おお、そうか。なら、あの団子屋を奪うのも時間の問題だな。いやはや、あんたを雇って正解だったよ。
翡翠   私はただ、力づくなんて野蛮な真似をしなくても、団子屋を手に入れる方法があると教えただけですよ。
剛助   俺がおみつを追いつめているところをあんたが助ける。あんたはおみつを信用させて、俺に勝負を持ちかける。あんたがわざと負ける勝負だとも知らずにな。
翡翠   これで無駄な血が流れずに済みます。一人の娘が涙を流すだけです。
剛助   翡翠、お主も悪よのう。
翡翠   いえいえ、剛助の旦那ほどではございません。
二人   ハハハハハ。
翡翠   では、私は戻ります。
剛助   まあ、待て。計画が成功する前祝いをしようじゃねえか。
翡翠   少しですよ。

   二人去る

紅蓮丸  あら、いやだ。・・・ま、こんなことだろうとは思ったが。さて、どうしたもんかな。

   紅蓮丸、去る
   おみつが出てくる
   団子屋の前、紅蓮丸がやってくる

紅蓮丸  は~、やっと着いた。
おみつ  紅蓮丸さん。どうしたんですか?何か凄く疲れているようですけど。
紅蓮丸  いや、道が分からなくて。
おみつ  この道は街まで一直線ですけど。
紅蓮丸  方向音痴にはそう言うの関係ないから。何か大きな湖があった。
おみつ  浜名湖まで行ったんですか?
紅蓮丸  そんなことより、翡翠殿は戻って来たか?
おみつ  いえ、まだですけど。
紅蓮丸  おみつさん、いいかよく聞いてくれ。菓子屋の剛助と、翡翠殿はグルだったんだ。二人でこの団子屋を奪おうとしてる。翡翠殿の言うとおりにしてはいけない。
おみつ  ちょっと待ってください。紅蓮丸さん一体何を。
紅蓮丸  信じられないかも知れないけど、本当なんだ。あいつは勝負にわざと負けて、この団子屋を明け渡すつもりなんだ。勝負は止めるか、やるのなら俺にやらせてくれないか。
おみつ  そんなこといきなり言われても。
紅蓮丸  もうじきあいつは戻ってくる。いいか、勝負はやめると言うんだ。あいつの思い通りにさせちゃいけない。
おみつ  いい加減にしてください。何でそんなこと言うんですか。翡翠さんは、昼間この団子屋を守ってくれたんですよ。
紅蓮丸  だから、それがあいつの策略だったんだ。
おみつ  私は、恩人を疑うなんてできません。ひょっとして紅蓮丸さん、このままじゃ活躍できないから、翡翠さんの代わりになろうとしてませんか。
紅蓮丸  何で俺がそんな事を。
おみつ  だって、さっきもかっこよく出てきたのに、すぐやられちゃって。良い所全部翡翠さんに持っていかれちゃって、悔しいんじゃないですか。
紅蓮丸  それは、確かにあるけど・・・いや、そんなことは無い。
おみつ  とにかく、私は翡翠さんを信じます。これ以上翡翠さんを悪く言うのなら、いくらあなたでも許せません。
紅蓮丸  ・・・そうか、そうだな。俺の勘違いだったのかもしれない。すまなかったな、嫌な思いをさせてしまった。翡翠殿がいればこの団子屋は大丈夫だろう。俺は失礼させてもらうよ。達者でな。

   紅蓮丸、去る

おみつ  あ・・・紅蓮丸さん。

   おみつ、去る
   そして次の日になる
   舞台上にはおみつ、そして翡翠、剛助がいる

剛助   おみつ、とうとうこの日がやってきたな。もちろん約束は覚えているだろうな?俺が勝ったら、この団子屋はいただくぞ。
翡翠   そちらこそ、私が勝ったら、二度とこの団子屋とおみつさんに手を出さないと誓ってください。
剛助   フハハハハ。分かっているさ。さあ、さっそく勝負と行こうじゃあないか。
おみつ  翡翠さん。
翡翠   大丈夫、私に任せて。
おみつ  お気をつけて。

   剛助と翡翠の間に緊張感が溢れる
   そして次の瞬間

二人   最初はグー!ジャンケン!
二人   ポン!

   剛助はチョキ、翡翠はパー
   剛助が勝つ

剛助   よっしゃー!
おみつ  え?
剛助   これで団子屋は俺の物だ。いいな、おみつ。約束は守ってもらうぞ。
おみつ  ちょっとまってください。勝負って、じゃんけんだなんて聞いていません。
剛助   何を言う。ジャンケンだって立派な勝負だ。
おみつ  そんな・・・。
翡翠   すいません、おみつさん。私がパーを出したばっかりに。
剛助   はっはっはっ、これでこの団子屋と秘伝のタレは俺の物だ。もう、こんな暖簾は外してしまえ。
おみつ  やめてください。

   剛助が暖簾に手を伸ばした瞬間、剛助が腕を押さえて膝をつく

剛助   ぐわっ!腕に何かが・・・何だコレは?風車?誰だ、こんなもの投げたのは。

   そこへ現れたのは紅蓮丸

紅蓮丸  やれやれ、大の男がかすり傷一つで情けない。
翡翠   あなたは・・・。
おみつ  紅蓮丸さん。
剛助   てめえはこの間の。何しにきやがった。まさか、勝負にいちゃもん付けに来たんじゃねえだろうな。残念だが、この勝負はお互いに承知の上で行った事だ。
紅蓮丸  それはどうかな。そこにいる翡翠と言う男と、あんたがグルだったら、その勝負は無効だ。
剛助   何を言うのかと思えば。俺とこいつがグル?そんな訳ないだろう。俺はこいつに痛い目に遭わされたんだぞ。
紅蓮丸  それも全部演技だったんだろう?残念だが、俺のこの隻眼は全てを見通せるのだ。お前たちが話していたことも全て聞かせてもらった。
翡翠   まさか、あの時・・・?
剛助   証拠はあるのか?証人はお前だけだ。お前が嘘を付いてるって事も有るだろう。
紅蓮丸  証拠はある!
剛助   何。
紅蓮丸  今日、この会場に訪れている皆さんが証人だ。この二人が悪巧みをしていた所を見ていた人は拍手をお願いします!

   客席から拍手をもらう

剛助   ば、ばかな・・・こんな大勢に見られていたのか。
紅蓮丸  言っただろう。お前たちの悪事はすべてお見通しだと。さあ、大人しく諦めるがいい。
おみつ  翡翠さん。
剛助   くそ、て、てめえ何者だ。
紅蓮丸  てめえらみたいな悪党に名乗る名前は持っちゃいないが、そこまで言うなら教えてやろう。俺は、この荒んだ時代を嵐のように駆け抜けて、誰よりも熱く燃えたぎり、何よりも強い信念を突き通す。隻眼なれど、太刀は二振り、名は紅蓮丸。人呼んで隻眼の紅蓮丸だ。
剛助   せ、隻眼の紅蓮丸だと・・・。
翡翠   まさか、あなたみたいないい加減な方にいいようにやられてしまうとは。しかし、まだ終わりではありませんよ。美しい手段ではありませんが、力づくでこの団子屋を頂くとしましょう。
剛助   そうだ、こうなったらあんたの力をみせてやれ。どうせあの眼帯野郎は、見かけだおしだからな。
紅蓮丸  それはどうかな。本当にやるのか?止めておいた方が良いぞ。俺強そうだろ?怪我とかしちゃうぞ。
翡翠   残念ですが、私はもっと強いですよ。

   翡翠と紅蓮丸の立ち回り

おみつ  あれ?強い?
剛助   馬鹿な、俺の時はあんなに弱かったじゃねえか。
紅蓮丸  「能ある鷹は、頭隠して尻隠さず」って奴だ。
おみつ  大分間違えてますけど。
翡翠   爪ですよ。その刀、真剣ではありませんね。竹光ですか?
紅蓮丸  まあね。人を斬るのはあまり好きじゃなくて。
翡翠   それじゃあ私は斬れませんよ。

   立ち回り
   紅蓮丸が翡翠に一撃を加える

紅蓮丸  あんたを斬れなくても、悪事を斬れれば十分だ。
翡翠   馬鹿な・・・。
剛助   そんな。
紅蓮丸  さてと。それじゃああんたたちは奉行所に行って全部告白してもらおうか。
おみつ  待ってください。
紅蓮丸  うん?
おみつ  紅蓮丸さん、お二人を許してあげてくれませんか?
紅蓮丸  おいおい、こいつらはあんたの団子屋を。
おみつ  はい。でも、剛助さんが欲しかったのは、タレの秘伝書ですよね?差し上げます。
剛助   いいのか?
おみつ  でも約束してください。必ず、秘伝書通りに作ると。お父さんの味を変えないと。思ったんです、こんなもので争いになるなんて馬鹿馬鹿しいって。お父さんは、美味しい団子をみんなに食べて欲しがっていました。なら、秘伝書を誰かに教えてもいいはずです。
紅蓮丸  やれやれ、敵わないなあんたには。
翡翠   それでこそ、私が認めた女性です。素敵だ。
おみつ  あの、ずっと思っていたんですが、そんなにかっこつけてもかっこ悪いですよ。女の子にもてたかったら、もっと自然体でいた方が良いですよ。ちょっと一緒にいて恥ずかしかったです。
翡翠   そんな馬鹿な・・・。
紅蓮丸  そいつはいいや。
おみつ&紅蓮丸 (笑う)
紅蓮丸  それじゃあ、俺は行くよ。世話になったな。
おみつ  あの、紅蓮丸さん、この間は疑ってすいませんでした。
紅蓮丸  さあ、何のことか覚えてないな。俺が覚えてるのは、この森町が良い町だってことと、あんたの団子が美味かったって事だけだ。
おみつ  また来ることがあったら、是非寄ってください。
紅蓮丸  そうさせてもらうよ。達者でな。
おみつ  お気をつけて。

   紅蓮丸、去る
   見送るおみつたち
   幕   

最後まで読んでいただきありがとうございました
いかがだったでしょうか?
この脚本は2018年に初めてイベントで上演した物です
基本的にイベント出演は野外が多いので、街道沿いにある様な時代劇に出てくるあの団子屋さんをイメージして書きました
展開はベタベタですが(笑)
ちなみに翡翠さんは、「隻眼の紅蓮丸」に登場した弥勒と似たナルシストキャラですね
Z・Aでも基本的に同じ俳優さんが演じています
またイベント出演を前提で執筆しているのでお客様と絡むヒーローショーの様な場面も入れています
実際にやってみた印象としては、結構多くの方が反応してくれます
それ以外の場面でもお客さんの反応を見ながら演じる俳優さんがやるとウケが良いですね

最後までお付き合いいただきありがとうございました

また読んでくださいね

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