見出し画像

「隻眼の紅蓮丸」について作者の目線から、あとがきのような物

「隻眼の紅蓮丸」の脚本の公開をしたのでせっかくなのであとがき的なものを書いてみようと思いました
執筆したのはけっこう前なので、当時の事などを思い出しながら、どのように構想を練ったのか、登場人物の事はどう考えたのか、など
作品に興味を持ってくださった方や、脚本を書く方の刺激や参考になればと思います
順を追って書いてみました

脚本執筆の経緯について


隻眼の紅蓮丸が初めて舞台上で躍動したのは2014年1月
今から6年前と言うことになる
会場は三島市民文化会館
俺が主宰するZ・Aのホームである藤枝市とはかなり距離が離れている
数字にして約65kmだそうだ
数字で考えるとイマイチ分からないけど、県内では遠い印象だ
それまで静岡県内中部・西部での活動はしていたが、東部ではなかった為、新しい挑戦として挑んだ
とは言え、自主公演ではなく三島市演劇祭と言うイベント出演だ
有り難い事に三島市出身者や在住者がいないのに受け入れてくれた三島の方々には感謝である
俺の考え方の一つにアウェーでの出演は挑戦的な、意欲的な作品で挑む機会であると思っている
言い方が悪くなるが、そこで失敗してもほとんどの観客は今後も定期的に会う方々では無いし、もしウケれば遠方にファンが出来る
ネットやSNSが発達した今の時代では、アウェー公演と言うのは実は得る物の方が大きいのだと思っている

さて、「隻眼の紅蓮丸」である
では、その作品は挑戦的であったか?
意欲的であったか?
答えは「YES」

当時のZ・Aはテーマ性を前面に打ち出し
重い雰囲気の作品を多く作っていた(これも後日少しずつ公開予定)
明るく笑い溢れる、と言う雰囲気とはかけ離れていたのである
もちろん俺自身がお笑いやコメディなどを幼い頃から好きだったこともあり
それまでの作品でもそういうシーンを入れることはあったが、あくまでもアクセントとしてである

つまり「隻眼の紅蓮丸」は当時のZ・Aからしたら大きな挑戦だったのである
本格的にコメディ要素を前面に押し出し、明るい終わり方で幕を下ろす
当時のZ・Aから考えたら想像つかない作品ではあった
しかし当時のZ・A、と言うか俺は行き詰っていた感があり、雰囲気を変えて挑戦してみたいと言う思いが強かった
そこでそれまで「これはZ・Aでは出来ないだろう」と思っていくつか引き出しにしまっていたアイデアをいくつかひっぱり出してきて
この三島での公演で実験してみようと言う思いで構想を練り始めた

隻眼の紅蓮丸がうまれるまで

そしていくつか候補があった中で一番しっくりきたのが
「見た目はかっこよくて、強そうなんだけど、実は弱い主人公」
「でも本気出すと実は強い主人公」
と言うベース設定が出来上がり

具体的にはどんな見た目なのか?と言うヴィジュアルから創ると言う、自分としては珍しい始まり方をしたのである
で、出てきたのは
「片目は眼帯」
「二刀流使えそう」
と言う柳生〇兵衛的なキャラクターである
と言うかもう〇兵衛さんマンマですね
でも、見た目のインパクトと言ったら最高だと思うんですよね
中二病が目指す一つの頂点と言うか
誰もがやってみたい格好と言うか
そんな男の妄想を恥ずかしげもなくやってしまう主人公なら、これはもうインパクト十分だ、と言うことで即採用
こうして生まれたのが「隻眼の紅蓮丸」である

ストーリーの構成

肝心の物語に関してだが
それまでは基本的に全部自分で考えていたが、「隻眼の紅蓮丸」を執筆するにあたって自分自身のやり方も少し変えてみようと思い、当時の団員2名に声を掛け
上の主人公の設定を説明し、この紅蓮丸が活躍する物語を作りたいんだけど、何かいいアイデアないかなと相談をした
つまりはこれまで自分の脳内だけで行っていた「脚本会議」を初めて団員と開催したのである
これはいくつか理由があって
当時たまたま読んだ雑誌の記事に新しく始まるアニメのインタビューが掲載されていて
確か「PSYCHO-PASS」だった記憶があるが、そこで企画を立ち上げてキーワードを元に討議を繰り返し物語を作ったと言う記事を読んで、そう言うやり方もあるのか面白そうだな、と思ったのがきっかけである
またなるべく団員の意見を取り入れる事で、ワンマン気味だった劇団の色を変えていきたいと言う想いもあったが、それはまた別の話

そして様々な意見を三人で出し合って、その中で俺がまとまったものを採用し、物語を構築していった
アイデアがあれば構成を考える事自体は得意だったので、この会議は比較的短時間で終わったが、その時間が無ければ全く違った作品になっていたと思う
その中でも良く取り上げた話題は自分が以前から考えていた「漫画の様に気軽に観れるような作品」と言うことだ。
読み切り漫画を読むような感覚で、三島の方々に楽しんでもらえたらと思い「漫画」をキーワードに挙げて会議を進めて行った
そこで少しずつヴィジュアルしか見えていなかった紅蓮丸の個性も固まっていった
モチーフにしているのは「るろうに剣心」の緋村剣心と「銀魂」の坂田銀時である
普段は少し抜けたキャラクターだが、いざと言う時は強くかっこいい
俺自身も好きなキャラクターだったので、自分もそんな役を書いてみたいと思った

登場人物「ムスリ村の住民」

紅蓮丸が決まったら、そこからは関わる人物たちを決めて行った
イメージは「るろうに剣心」の読み切りバージョンだったので、「人助け」だ
なら助けられる対象が必要で、それが「ムスリ村」だった
さらにヒロインが必要で、さらにさらに抜けている主人公をサポートする役が必要だと言うことで「ヒヤ」と「シュウ」が誕生した
話が少し逸れるが、実はこの二人ここが初出ではないのだ
2013年に清水マリナートで開催された「演劇カタログ」に「SEPARATION」と言う作品で出演したのだが、そこで主人公とヒロインが「シュウ」と「ヒヤ」だったのだ
物語上直接のつながりはまだないのだが、世界観が近しいのでちょっとしたパラレルワールド的な楽しみ方をしてくれればと思っている(「SEPARATION」に関してもいつか公開できればと思います)
そしてムスリ村の他の住民として「ロロ」や「米彦」が誕生
彼等にはシュウを追いつめる役を担ってもらった
それとは別に、俺は特別な力を持たない役たちが立ち上がる姿に感動を覚えるタイプなので紅蓮丸に背中を押されて、必死で前に進む場面を務めてもらいたかった
自分としては一番好きなシーンでもある

馬堂組の誕生

そして「人助け」と言うからには悪役である
しかしそれまでZ・A作品の悪役と言うのは、結構巨悪が多く
目的や思想が明確で、最後まで折れない対象として描くことを心がけていた
さらには俺のポリシーとして、誰もが自分の正義を持っていると言うことで、目線を変えれば、一つの正義とも取れるようにしていたのだが
今回はそんな思い悪役はやめよう
と思い
目的が曖昧な馬堂組が誕生した

「何となく一旗揚げる為に村を襲う」
実に単純である
しかしこの単純さが、彼らをとても人間らしくしてくれたのかもしれない
どこか憎めない彼らの存在がこの作品の空気を作ってくれるとも感じる
彼等の場面は本当に書いていて愉快だった
次から次へと周りがボケて、リーダーである馬堂がドンドン突っ込まなくてはいけない構図
会話のテンポも非常に大事になるが、比較的読みやすく書けたのではないかな

作品全体が重たくならなかったのは彼らの存在が大きかったように思う
ちなみに上演するたびに、馬堂と弥勒以外はメンバーチェンジを繰り返しているのだ、実は

初演時の反応

最初にも書いたが、この作品はZ・Aとしても新しい試みで、悪く言えば失敗する可能性も多分に有ったし覚悟をしていたのだが
こちらの不安とは裏腹に、初めての三島の地で初めてZ・Aを観る方々に大いに歓迎されたのだ
終演後様々な年代の方から声を掛けてもらい、今までのZ・Aとは違う手ごたえを感じた
小さな子供からお年寄りまでが笑顔で話しかけてくれて、楽しかったと
「演劇を盛り上げる」と言うテーマも持つZ・Aとしては一つの新しい形が作れたのではないかなと思い、すぐに中部での再演に動き始めた
そして当時ホームグラウンドであった金谷の夢つくり会館にて再演
これもZ・Aのファンに高評価を得る
また当時Z・Aの作品は重たくてちょっと、と敬遠していた客層が「隻眼の紅蓮丸」は何回も観たいとまで言ってくれるようになり、劇団としても一つの結果を出せたと思う

その後の展開

反響を受け、続編を次々と発表
「乱舞の章」「偽りの章」
ご当地番外編として「清水の章」
更にはスピンオフ作品「闇夜の三日月丸」
そして様々なイベントに招待され、短編バージョンなどの上演

今後も新作はもちろん執筆していくのだが
やりたいことはたくさんあって
その一つが「漫画化」である
漫画を描ける方に是非この「隻眼の紅蓮丸」を漫画化していただきたいのだ
漫画を舞台にする2.5次元舞台は流行っているが、その逆はあまり見たことが無い
しかし俺としては舞台作品を逆輸入する2.5次元漫画があってもいいと思う
ので、今後はそちらも視野に入れて様々な方と出会っていきたい

まずは「隻眼の紅蓮丸」最初の作品について書いてみました
今後加筆、修正する事も有ると思いますがご了承ください

問い合わせなどは気軽にご連絡ください
脚本執筆・ワークショップ開催・演技指導・演技相談などなど
visualrockza@yahoo.co.jp

気に入っていただけたらサポートも嬉しいです サポートしていただいた分は全て演劇界の発展のために使わせていただきます