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「赤を啜り、終焉は虚無と知る」中後篇 脚本公開

「赤を啜り、終焉は虚無と知る」
中篇後半部分です
全4回に渡って公開予定です
先に公開中の前篇・中前篇をご覧になってからお楽しみください

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第十二章「宣戦布告」

   場面は変わりマゼンタ城内
   マゼンタ、シナバー、バーミリオン、バーガンディ
   カーマイン、アリザがいる

シナバー   
「アントラ、ピュース、クルムズ、メラー、アドム。近隣国家を含む各国がマゼンタ王国領土に向け進軍を開始したとのことだ。」
バーガンディ 
「偶然、のはずがありませんね。」
シナバー   
「当然だ。何者かが糸を引いている。」
バーミリオン 
「何者か、考えるまでもないがな。」
シナバー   
「クリムゾン。ふざけるな、何故バンパイアどもと人間が手を組む。」
バーミリオン 
「まあ、理由はいくつか考えられるが、今はどうでもいい。すぐに対策を打たねばな。」
カーマイン  
「待ってください。本当にクリムゾンがまだ生きていて、そんなことをしているのでしょうか?」
バーミリオン 
「姫様。心中お察ししますが、私はこの目で見ました。奴はこの国の敵です。」
カーマイン  
「でも、あの人は。」
マゼンタ   
「カーマイン。これは戦争だ。お前の感情論を聞いている猶予は無い。」
カーマイン  
「お父様。」
アリザ    
「カーマイン様。落ち着いてください。」
バーミリオン 
「各国の戦力は何とか防ぐことはできるでしょう。問題は、敵の本隊。バンパイアどもがどこから攻めてくるか。」
バーガンディ 
「先日のソルフェリノからの報告は覚えておいでですか。」
シナバー   
「城下にアインスが入り込んでいたと言う奴か。しかし内通者は戦闘の最中バンパイアに殺害されたと聞いたが。」
カーマイン  
「まさか・・・。」
バーミリオン 
「他に内通者がいないとは限らない。とすれば、敵の狙いは。」

   そこへドアが開く音
   同時に、リサージがギュールズを従え入ってくる

リサージ   
「これはこれは皆様、お揃いでしたか。」
シナバー   
「リサージ卿。今は会議中だ。後にしろ。」
リサージ   
「(仰々しく)いえ、私も大切な話がありまして。是非、皆さんに聞いていただきたく参った次第でございます。」
シナバー   
「貴様、ふざけているのか。」
バーミリオン 
「待て。話とは?」
リサージ   
「はい。東部都市国家はここにいる皆様を滅ぼすことになりました。」
マゼンタ   
「・・・今、何といった?」
リサージ   
「ですから、今この瞬間より我が東部都市国家はマゼンタ王国との同盟を破棄、同時にバンパイア『スカーレット』様を頂点とした連合国家に参加します。よって、ここにマゼンタ王国へ宣戦を布告します。」
シナバー   
「何を言っているのか分かっているのか、リサージ卿。」
リサージ   
「存じております。既にこの事は我らが王も承知の事。つまりはあなた方に死んでほしいと言うことです。」
シナバー   
「冗談にしては笑えんな。」
リサージ   
「笑わずとも結構。私が欲しいのはあなた方の悲鳴と泣き叫ぶ声。つまりは阿鼻叫喚!」
バーミリオン 
「バーガンディ!」

   バーガンディ、リサージに斬りかかる
   しかし、それをギュールズが止める

リサージ   
「残念ですが、私には強い味方がいるんです。ギュールズ様、お願いしますね。」
ギュールズ  
「やっと、出番か。これで堅苦しい人間の真似をしなくていいわけだ。」
バーガンディ 
「アインスか。」
バーミリオン 
「バーガンディ、下がれ。」
カーマイン  
「あなた方、アリザはどうするつもりですか?何も知らずこの国で生きてきた彼女を見捨てると言うのですか。」
アリザ    
「カーマイン様・・・。」
カーマイン  
「大丈夫、あなたは守って見せます。」
アリザ    
「カーマイン様、あなたは本当に、本当に、愚かなのですね。」
カーマイン  
「え?」
アリザ    
「守る?誰から?私は奪う側なのですよ。あなた方の命を。」
カーマイン  
「何を言っているの、アリザ。」
アリザ    
「私は東部都市国家王女アリザ。スカーレット様に忠誠を誓う者。あなた達の命を蹂躙する者。リサージ、よく働いてくれました。ギュールズ様もありがとうございます。」
カーマイン  
「どういう事?あなたはマゼンタ王国で幸せに暮らしていたじゃない。私と友達になってくれたじゃない。」
アリザ    
「ええ、この国の生活はとっても、とっても屈辱でした。幸せ?冗談じゃない。同盟国とは形だけ、実際は我々は植民地も同然、一方的な貿易を押し付けられ、政治にも介入。留学と言う名目でこの国に送られた私は人質も同然。あなたに分かりますか?使用人や侍女たちにも奴隷のように見られる屈辱が。」
カーマイン  
「そんなことが・・・。」
アリザ    
「知る訳もありませんよね、お優しいカーマイン様は、人間の綺麗な所しか見ないのですから。私が兵隊どもの慰み者になっていることも、女たちの嘲笑の的になっている事も。人間の汚い部分なんて、ご存知ないのですよね。だから、殺すんです。マゼンタ、お前たちを。この王国を。この弱者が搾取され続ける世界を。いいんです、そんな顔をしなくても、生まれてから奪う側だったあなたには何も分かるはずありませんから。クリムゾン様が教えてくれたの、奪う側になる幸せを。」
カーマイン  
「クリムゾンが・・・。」
アリザ    
「今度はあなたから私が奪う番です。世界も、殿方も。」
シナバー   
「言いたいことはそれだけか?マゼンタ王、カーマイン様への侮辱は後で晴らすとして。それで、お前たちはこの状況で何をするつもりだ?お前たちは袋の中の鼠、いくらアインスと言えど我らを相手に逃げられると思っているのか。」
リサージ   
「逃げる?なぜ我々が逃げる必要が?ここに我らがいるということはどういうことか分かるでしょう。」

   そこへニールが走りこんでくる

ニール    
「大変です。城下にバンパイアどもが現れました。数は不明ですが、多数です。」
バーミリオン 
「お前たちが手引きしたのか。」
リサージ   
「さあ、どうしますか?私たちの相手をしていると国民がアンデッドにされて活きますよ。」
バーガンディ 
「ここは私が引き受けます。」
バーミリオン 
「バーガンディ・・・死ぬなよ。」
バーガンディ 
「承知しました。」
バーミリオン 
「行きましょう。」
カーマイン  
「アリザ・・・。」

   マゼンタ、シナバー、カーマイン、バーミリオン去る

リサージ   
「ギュールズ様。」
ギュールズ  
「あの人間どもはあいつにくれてやる。私の役目はゴミ掃除だ。」
ニール    
「将軍、自分も残ります。」
バーガンディ 
「ニール。死ぬかもしれないぞ。」
ニール    
「将軍を死なせるよりマシです。」

   暗転

第十三章「正体」

   オーカーがやってくる
   その後にシンシャがついてくる

シンシャ   
「一体どうなってるのよ。何で街にバンパイアがいるのよ。」
オーカー   
「言っただろう、恐らく内通者がいる。」
シンシャ   
「そんな、お兄様は無事なの?」
オーカー   
「分からない。けど、俺たちも行かないと。」
シンシャ   
「どこに?」
オーカー   
「カーマイン様の所に、それからクリムゾンの所に。」

   そこへソルフェリノが現れる

ソルフェリノ 
「それで?何をするつもりなのかな、オーカー君。」
シンシャ   
「ソルフェリノ将軍。ちょうど良い所に。街中にバンパイアが。」
ソルフェリノ 
「うん、分かってるよ。だからここに来たんだ。オーカー君、行くよ。」
オーカー   
「ソルフェリノ将軍。」
ソルフェリノ 
「どうしたんだい?これは隊長命令だよ。君の仇のバンパイアから国民を守るんだ。」
オーカー   
「ずっと考えていたんです。何故クリムゾンがエカルラート様を殺したのか。僕を救ってくれたのか。本当に同じ人物だったのか。当時何があったのか。」
ソルフェリノ 
「知ってるよ。君がカーちゃんに頼まれて昔の事を調べていたことは。それで、何か分かったかい?」
オーカー   
「いいえ、分からなくなりました。どう考えても分からないんです、あの人がこの国を裏切った理由が。」
ソルフェリノ 
「それは君も言っていたじゃないか、身分違いがあいつの動機だって。」
オーカー   
「はい。でもどうしても納得できないんです。だから僕なりに考えてみました。クリムゾンは利用された、この国の権力争いに。」
ソルフェリノ 
「つまり君はシナバー将軍を疑っていると?」
シンシャ   
「ちょっとあんた何言ってるのよ。」
オーカー   
「それだけじゃないんです。ソルフェリノ将軍、将軍も何か知っているんじゃないですか?教えてください、将軍はエカルラート様殺害に関わっていませんよね?」
ソルフェリノ 
「・・・やっぱり君は面白いね。もし私が関わっていたとして、正直に話すと思うかい?」
シンシャ   
「そうよ、全部あんたの妄想よ。訂正しなさい!」
ソルフェリノ 
「でも、それで正解だよ。」
シンシャ   
「え?」
ソルフェリノ 
「エカルラート暗殺は、私たちがシナバーにやらせたことだよ。だって仕方ないじゃん。あの二人は邪魔だったんだから。クリムゾンは貴族でも無いくせに将軍になりやがって、その親友のエカルラートが次期国王だよ?それはつまりね、私たち貴族社会の崩壊を意味していたんだよ。知ってる?二人の目指した世界。争いの無い、平等な世界だって、笑っちゃうよね。だから殺したんだ、二人とも。」
シンシャ   
「そんな、嘘よ。だって、お兄様は。」
ソルフェリノ 
「国の覇権を握って、次期国王になれたでしょ?感謝してね、今のあんたがあるのは私のおかげだよ。」
オーカー   
「何で、そんなことを。将軍はカーマイン様の友達じゃなかったんですか。」
ソルフェリノ 
「どうでもいいんだ、そんなこと。私はね、楽しめれば。カーちゃんは最高だったな。何にも知らないのに、無理してる姿を見ると、ゾクゾクしちゃう。でも今君とカーちゃんを会わせる訳には行かないな。」
オーカー  
「ソルフェリノ将軍。」
ソルフェリノ 
「ねえ、今どんな気持ち?憧れてた将軍に裏切られて、今どんな感情なの?怒り?悲しみ?憎しみ?怖い?大丈夫だよ、知りすぎたオーカー君は、私が優しく殺してあげるね。」
オーカー 
「僕は、僕は・・・。」
シャドの声 
「このド変態が!」

   そこに現れたのはシャド
   走りこんできてソルフェリノを殴り飛ばす

シャド    
「ソルフェリノ。いつも邪魔ばっかりしてくれたけど、今日はお前の邪魔をしてやったよ。」
ソルフェリノ 
「何だよ、良い所なのに。」
シャド    
「そうそう、その顔。お前のそういう顔が見たかったの。さあ、ソルフェリノ僕と殺し合おうよ。今日は最後まで付き合ってあげるから。お前が千切れるまでね。」

   シャド、ソルフェリノに襲いかかる

ソルフェリノ 
「仕方ないな。行きなよオーカー君。」
オーカー   
「え?」
ソルフェリノ 
「私ね、好きな物は最後に食べるタイプなの。」
オーカー   
「でも。」
ソルフェリノ 
「それとも何?先に食べられたいの?」
シンシャ   
「行くわよ。こんな嘘つきに付き合う必要ないわ。今はお兄様を助けるのが先よ。」

   シンシャ、オーカーを連れて去る

ソルフェリノ 
「さてとメインディッシュの前の前菜と行こうかな。」
シャド    
「ソルフェリノ。」

   暗転

第十四章「犠牲」

   場面変わり城内
   バーガンディ、ニール、ギュールズ、アリザ、リサージがいる
   バーガンディ、ギュールズ、ニールの立ち回り

ギュールズ  
「凄いな、人間のくせにここまで出来るとは。」
バーガンディ 
「光栄だな。かつて西の強国コーラルの英雄にそう言ってもらえるとは。」
ギュールズ  
「随分と昔の話だ。しかし、何故本気で向かってこない。」
アリザ    
「ギュールズ様。バーガンディ将軍は、ゴミを守りながら戦っているから本気を出せないんですよ。」
ニール    
「ゴミ?え?俺の事?」
アリザ    
「そんな戦い方、かつてクリムゾン様を陥れた一人とは思えませんね。」
ニール    
「え?」
アリザ    
「ああ、この国の人間達はご存知なかったのでしたね。この女は、エカルラート殺害を企てた女の一人なんですよ。ねえ?」
ニール    
「いい加減なことを言うな。将軍がそんなことをする訳。」
バーガンディ 
「ペラペラペラペラと五月蠅い女だな。そう言う女は一人で十分だ。そこまで知っているのなら隠す必要もないな。」
ニール    
「将軍?」
バーガンディ 
「消えろニール、奴の言う通り、足手まといだ。」

   バーガンディ、ニールの足を剣で貫く

ニール    
「ぐあああ!」
リサージ   
「これはこれは、さすがは烈火のバーガンディ。ここからが本気と言う訳ですね。」
ギュールズ  
「面白い。」
バーガンディ 
「面白い?勘違いするなよ、今から始まるのはただのゴミ掃除だよ。」

   バーガンディとギュールズの立ち回り
   二人立ちまわる

ニール    
「嘘だ、将軍が・・・嘘に決まってる」

   ニール、ギュールズに斬りかかる
   しかしギュールズそれを受け止める

ギュールズ  
「邪魔だ。」

   ギュールズ、ニールを斬ろうとする
   しかしそこにバーガンディが割って入る

バーガンディ 
「ニール。」

   バーガンディがニールを庇い斬撃を受ける
   
ニール    
「バーガンディ将軍!」
バーガンディ 
「だから言っただろう、足手まといだと。」
ニール    
「何で。」
リサージ   
「これは驚きです。まさかあなたほどのお方がそんな一兵卒を守って死ぬとは。」
バーガンディ 
「私も驚きだ。どこかで後悔していたのかもしれないな。自分がしたことを。」
アリザ    
「そんな言葉であの方が納得するとは思えませんね。クリムゾン様はあなた方の死を望んでいるのですから。さようなら、バーガンディ将軍。美しい散り際でしたよ。」

   アリザ、バーガンディに止めを刺す

ニール    
「ああ・・・。」
アリザ    
「さて、この男も死んでもらいましょうか。」
ニール    
「うわぁぁぁ!」

   暗転

第十五章「落日」

   場面変わる、そこにはマゼンタとシナバー

マゼンタ  
「カーマインは?」
シナバー  
「安全な場所へ避難していただきました。マゼンタ王も早く。」
マゼンタ  
「うむ。」

   しかし、その行く手を阻むように現れたのはクリムゾン

マゼンタ  
「お前は。」
シナバー  
「クリムゾン。」
クリムゾン 
「お久しぶりですね、マゼンタ王、シナバー将軍。お元気でしたか。」
シナバー  
「お前こそ、本当に生きていたとはな。」
クリムゾン 
「死ねていたらどれほど楽だっただろうな。しかし、生き残った。だから決めた。全てを奪ったこの国を壊す事を。」
マゼンタ  
「全てを奪った?確かにお前の家族を死罪にしたのは確かだ。だが、お前がエカルラートを殺害さえしなければ、あんなことは起こらなかったのだ。」
クリムゾン 
「まだそんな戯言を信じているのか。これは滑稽だ。教えてやったらどうだ、シナバー?エカルラートを殺害したのはお前だと。他の将軍たちと口裏を合わせ、俺を犯人に仕立て上げ、邪魔者を排除したと。」
マゼンタ  
「馬鹿な、シナバーが。」
クリムゾン 
「お前たちは俺の言う言葉には耳を貸さず、俺を死罪にし、家族さえも見殺しにした。」
マゼンタ  
「待て、なら何故ここまでする必要がある?その話が真実ならシナバー達に復讐をすれば十分ではないか。」
クリムゾン 
「自分には非が無いとでも言うのか。お前たちは皆、等しく罪がある。あの日お前たちは俺と家族を殺すことを求めていた。貴様も、国民たちも、何も疑わずにな。そして何の罪もない母と妹が殺された。同じことをしてやるだけだ、お前たちとな。」
シナバー  
「なるほど、言いたいことは分かった。」
マゼンタ  
「シナバー。」
シナバー  
「マゼンタ王、あなたの出番はここまでのようです。」

   シナバー、そう言うとマゼンタを斬り殺す

シナバー  
「やはりお前はそうでなくてはな、常に俺の邪魔をし続け、厄介な存在。それでこそクリムゾンだ。覚えているか、お前はいつも一番だった。剣の腕も、決断力も、国民からの信頼も。名門の出である俺ではなく、平民出身のお前がだ。だからお前に絶望を与えてやりたかった。お前が泣き叫ぶ顔が見てみたかった。だから殺した。エカルラートもお前の家族も全てな。それでどうなった?俺が実権を握ってからこの国は大国となり、技術は革新した。お前には出来なかったことを俺は実現した。俺が一番になれなかったのは、こいつらに見る目が無かったせいだ。そして今日、またお前を殺して俺は証明できる。」
   
   シナバー、短銃を取り出しクリムゾンに撃つ
   クリムゾン、膝をつく

シナバー  
「はっはっはっ。どうだ、クリムゾン。これが俺の力だ。既に剣を振り回す時代などでは無い。時代は歩み続けているんだ、お前たちの様な過去の亡霊は小説の中で生き続けるがいい。お前はバンパイアにはなっていないらしいじゃないか。そういうところがお前の弱い所だ。」

   しかし、クリムゾンはシナバーに歩み寄る
   シナバー、銃を撃ちクリムゾンその場に倒れる
   クリムゾンは剣を落とし、拾おうとするが
   シナバーその手を踏みつけ、撃ち抜く
   クリムゾン苦痛に顔を歪める

シナバー  
「せめてもの手向けだ。この手で直々にその首、斬り落としてやる。」

   シナバー、クリムゾンに斬りかかるが
   クリムゾン、その手を取り体勢を入れ替える
   シナバーが銃を構える前にクリムゾンが落ちていた剣を拾い
   シナバーの胸に突き刺す

シナバー  
「馬鹿な。俺が、お前に・・・。」
クリムゾン 
「時代の歩みが命を奪うなら、もう二度と歩けなくするまでだ。」

   クリムゾン、その場に倒れそうになる
   そこに現れたのはバーミリオン

バーミリオン 
「なるほど、シナバーもやられたか。」
クリムゾン  
「バーミリオン。」
バーミリオン 
「参ったな。これはこれで使いやすい駒だったんだがな。どうだ、クリムゾン、私と組まないか?マゼンタも死んだ、シナバーも死んだ。私がお前を新たな王にしてやっても良いぞ。カーマイン様もお前なら喜ぶだろう。」
クリムゾン  
「お前が全て仕組んだな。」
バーミリオン 
「ああ、エカルラートもお前も邪魔だったからな。私がシナバーに話を持ちかけた。こいつは単純で使いやすかったよ。」
クリムゾン  
「何故エカルラートを。」
バーミリオン 
「奴の目指していた世界は知っているだろう?和平で争いの無い世界だ。冗談じゃない、それでは面白くもない、戦争が必要な人種は大勢いるんだ。で、どうする?と聞くまでもないか。」

   クリムゾンとバーミリオン立ち回り

バーミリオン 
「大したものだよ、その身体で。だが、終わりだ。」

   バーミリオン、クリムゾンに止めを刺そうとした時、銃声
   シナバーがバーミリオンを撃ったのだ

バーミリオン 
「何だと。シナバー、貴様。」
シナバー   
「クリムゾンを殺すのは、この俺だ。お前なんかにやらせるか。」
バーミリオン 
「この死にぞこないが!」

   バーミリオンがシナバーに止めを刺した直後
   クリムゾンが隙をついてバーミリオンを斬る
   バーミリオン、倒れる
   辺りを静寂が包む
   そこへ姿を現したのはカーマイン
   しばしの沈黙

カーマイン 
「・・・クリムゾン。生きていたのね。でも、これはあなたがやったの?」
クリムゾン 
「・・・」
カーマイン 
「シナバー将軍、バーミリオン将軍、お父様・・・。答えて、クリムゾン。答えなさい!」
クリムゾン 
「見てわからないのか?今お前が見ている景色、これが現実だ。」
カーマイン 
「じゃあ、あの時は?エカルラートの時もやっぱりあなたがやったの?私はずっと不思議で仕方なかった。あなたがエカルラートを殺す訳なんかないって。本当の事を教えて、あの時何があったのか。」
クリムゾン 
「エカルラート。そんな人間もいたな。何か勘違いしていないか?俺はお前たちの事が最初から嫌いだった。王族と貴族様とただの護衛役。いつも見下されていると感じていたよ。だから奪おうと決めたんだ。この王国を。」
カーマイン 
「嘘よ。だって、ずっと一緒だったじゃない。小さい時からずっと一緒で、エカルラートが次期国王になった時も、私たちを支えるって、言ってくれたじゃない。」
クリムゾン 
「お前たちを騙すのは簡単だった。傲慢であるからこそ、弱者の言葉を疑いもしない。そのざまがこれだ。将軍も死んだ、エカルラートも死んだ、マゼンタも死んだ。後はお前だけだ。」
カーマイン 
「お父様も、エカルラートも、ソフィ、みんな・・・許さない。絶対に許さない、クリムゾン!必ず、殺してやる、マゼンタ王国王女カーマインの名に懸けて、必ずお前を殺してやる!」

   そこへオーカーとシンシャがやってくる

オーカー  
「カーマイン様!これは・・・。」
シンシャ  
「そんな、将軍、国王。お兄様?お兄様!」
オーカー  
「クリムゾン、あなたがやったんですか。」
カーマイン 
「その通りよ。全てあの男がやったのよ。」
オーカー  
「何で、ここまで。あなたに無実を着せた将軍たちにだけ復讐をすれば済むことでは無かったんですか。」
カーマイン 
「いいえ、違うわオーカー。あの男が全ての元凶。私から全てを奪ったのよ。」
オーカー  
「違うんですカーマイン様。分かったんです、エカルラート様殺害の真相が。」
カーマイン 
「私も聞いたわ、あいつから直接、自分が殺した、と。」
オーカー  
「何でそんなことを。」

   そこへギュールズ、リサージ、アリザがやってくる
   反対方向よりスカーレット、セキ、コウがやってくる

ギュールズ 
「随分と騒がしいと思えば、まだ生き残りがいるじゃないか。」
アリザ   
「あら、まだ生きていらしたんですのね、カーマイン様。」
ギュールズ 
「すぐに始末いたします。少々お待ちください、スカーレット様。」
オーカー  
「スカーレット?始まりのバンパイア?」
シンシャ  
「そんな事言っている場合じゃ無いわ。カーマイン様、ここは逃げましょう。」
オーカー  
「でも。」
シンシャ  
「何を言っても無駄。今はカーマイン様を逃がすのが最優先よ。それが私たちが出来る唯一の事よ。」
オーカー 
「・・・分かった。行きましょう、カーマイン様。」
カーマイン 
「クリムゾン、そしてバンパイアスカーレット。その顔忘れないわ。必ずこの手で殺してみせる。そしてこの王国を取り戻す。」
クリムゾン 
「取り戻してどうする?また大陸の統一か?全てを統治して、それで何が残る?」
オーカー  
「え?」
シンシャ  
「行くわよ。」

   オーカー、シンシャ、カーマイン去る
   ギュールズ追おうとするが、クリムゾンが止める

ギュールズ  
「何故止める?」
クリムゾン  
「どうせ何も出来ない小娘だ。」
ギュールズ  
「しかし。」
スカーレット 
「ギュールズ。」
ギュールズ  
「スカーレット様の意のままに。」
スカーレット 
「自分を憎しみの対象とすることで生きる意味を残したと言うことかしら。確かに本当の事を知ったら生きていけなくなりそうだもの。優しいのね。」
クリムゾン  
「人間もバンパイアも、女は勝手な事を良くしゃべる。少し黙っていろ。」
スカーレット 
「それで?あなたの復讐は果たした。これからどうするの?」
クリムゾン  
「言ったはずだ。お前の目指している世界に俺も賛同していると。」
スカーレット 
「そう。じゃあ、これからも私に力を貸してちょうだい。我が眷属と、我に従う人間達に告げる。マゼンタ王国は我らが物となった。これよりこのマゼンタ城を居城とし、大陸全土へ進軍を開始。大陸を我らが連合国家の物とせよ。そして新たなの世界を創り上げましょう。」

   バンパイア、人間の歓声が混ざる

ギュールズ  
「刃向う者に容赦はするな。スカーレット様の為、その命を捧げろ!」

   再び歓声
   場面暗くなる

リサージ   
「この日、大陸一の大国マゼンタ王国は崩壊した。それはあまりにもあっけない結末の様に人々の目には写った。そして同時に恐怖した。自分たちの死と、人間の世界の終わりに。バンパイアたちは各地の人間達をアンデッドに変え、想像を超える速さで周辺国家を制圧していった。世界は人間の手からバンパイアの手に渡ったのだ。」

   舞台暗くなる中、別の空間に影が浮かび上がる
   少女が何かを引きづっている模様
   少女の笑い声が響き、ゆっくりと暗くなる

――――――――――――――――――――――――――――――――――

ありがとうございました
ついにマゼンタ王国がバンパイアによって制圧されてしまいました
しかし王女カーマインはオーカーたちの手を借りて脱出に成功
大陸がバンパイアによって次々と制圧されていってしまう中
オーカーたちはどうなってしまうのだろうか・・・

次回16章「再起」

いよいよ次回で最終回です
お楽しみに

気に入っていただけたらサポートも嬉しいです サポートしていただいた分は全て演劇界の発展のために使わせていただきます