演劇をより多くの方に届けるのはどうしたらいいのか考えてみる

演劇に携わる者なら一度は
「より多くの人に演劇の面白さに触れて欲しい」
と感じた事・考えた事があるのではないだろうか?
もちろん演劇だけではなく、この感覚は様々なジャンルに携わる方の多くが感じるものであるのだと思う
スポーツであろうと、芸術であろうと、娯楽であろうと
自分が好きな物を多くの人にも知ってほしいと感じるのは当然の欲求であると思う

今日はこのテーマについて考えてみたい

「演劇をより多くの人に触れて欲しい」

これはつまり演劇初心者、観劇初心者をどう迎い入れるか?
ライトユーザーをどう取り込んでいくか?

地方で演劇を続けていく中で強く感じるのが、「客層の狭さ」である
これは年齢層ではない
基本的に社会人劇団の客層は「身内」が圧倒的多数を占める
団員の知人・友人・家族、そして仲の良い演劇関係者
一言で言えば身内でお金を回しているだけ
もちろん例外も存在することは知っている
でも
「ウチはそんなことない」
と、ここで反論したくなっている方は図星なのだろう
ウチの話ではなく、「演劇界」の話をしている
冷静に他者の考え方を楽しめる方が以下も読み進める事を薦めます

「観に来てくれた知人・友人を演劇ファンに出来ているか」

知人や友人が演劇をやっているから劇場に足を運び、そこから演劇を好きになる例も無い事は無い
しかし問題はその時に、知人以外の公演を観に行くかどうかである
自分の劇団の事ばかりを考えている人は、ここで自分たちよりも面白い劇団を紹介することが出来ない
自分のお客様が取られてしまうと恐れるからだ
この気持ちは分かる
自分も二十歳そこそこの頃はまさにそうだった
当然自分若しくは自分の劇団のファンになってもらいたいと考えるのが当然である
しかし何かを好きになるには比較しないと確信を持てないものだ
100円のアンパンしか食べた事ない人間はそのアンパンを美味しいと思うが
1000円のアンパンを食べた事のある人間は比較し、選択することが出来る
そしてそれでも100円のアンパンが好きだと感じる人もいる、当然だが
どちらを選ぶのが良いと言う話ではなく、色んな物を知っている人に選ばれた方が嬉しくは無いだろうか?
俺は団員に良く話すのだが、「自分だけしか知らない異性だけでなく、多くの異性の魅力を経験している異性に一目置かれるような人間になってほしい」と

少し話が逸れてしまったが、演劇に興味を持ち始めた知人・友人には間髪入れずに他の劇団、公演を薦めるべきだ
「鉄は熱いうちに打て」である
終演後、見に来てくれた友人にこんなことを言われた経験はないだろうか?
「次はいつやるの?」
そう、一度観劇し終わった後は、観劇欲が出てくるのだ
しかしこれが間をおいてしまうと少しずつ冷めていく
そして話題に上がらなくなっていく、それでは勿体ない
せっかく演劇に興味を持ち始めてくれたのだ
「今度知り合いの公演があるから一緒に行こうよ」
と言えるようになりたいものである(俺もそれほど実践できていないから一緒に頑張ろう)

「周りに演劇に携わる存在がいない方々にどうやって届けるか?」

さて、演劇に携わり演劇を盛んにしようと考える全ての者の協力を得て、これで観に来てくださった知人・友人は解決するとして
問題は、そもそも知人・友人に演劇に携わる者がいなくて、普段から演劇と触れ合う機会の無い層をどう取り込むか?である
きっかけさえあれば劇場に足を運んでみたいと考えている潜在的な演劇人口は実は想像以上にいる
それは知人・友人に観劇を誘ってみれば分かる事だと思うが(これに気付けていないあなたはもっと知人・友人の言葉に耳を傾けてみよう)
自分と関係性の無い演劇を観に行くきっかけをどう作るか?と言うのが問題になってくる
もちろん様々な方法があるだろう
路上演劇でこちらから出向いていく
これも素晴らしい事だと思う、路上演劇を頻繁にやっていただいている劇団には本当に感謝しかない、ありがとうございます
他にも、地域のイベントやお祭り、学園祭への参加
これはZ・Aが良く行っている方法である
自治体や企業の依頼を受けてイベントへ出演し、そこに集まった方々に観てもらう
若しくは、此度のコロナウイルスの影響を受けて脚光を浴びた感はあるが、映像での配信をしていく
劇場に足を運ばずとも自宅で演劇に触れることが出来る
今後この手法も増えていくかと思う
事実、俺自身も映像配信とライブの両面での活動を視野には入れている

しかしどの方法もやはり一長一短があるように思える
路上演劇はその性質上、物語を見せるのが難しくなってしまう、全部を観てくれる方ばかりではないからだ
そうなった時に、瞬発的な面白さや魅力が大切になってくる
イベント参加は、短編の上演になってしまい余興としての側面しか見せられないこともある
映像に関してもやはりつまらないと感じたら最後まで見てくれない
しかしどの方法もやらない理由にはならない、こういう地道な活動を通して演劇の認知度を上げていくことが大切だと思う

「関心を持ってくれた方の不安を解消しよう」

そして大事なのはそこからどうやって劇場に足を運んでもらうか、だ
何かしらの方法で演劇に関心を持った時
この「関心期」にどんな手を差し伸ばせているかが大切だ
演劇への「関心期」に多くの人が思うのは
「どこでやっているんだろう?」「いつやっているんだろう?」
「そもそも近くで演劇なんてやっているのか?」
と言う疑問だ
しかし現代社会では、簡単に調べることが出来る
なので、当然劇団側はHPやSNSで常に情報を発信していくことが大切だ
勘違いしてはいけないのは、俺たちは有名アーティストでも人気アイドルでも無いと言うこと
こちらの情報を待ってくれているのはごく一部
あくまでも情報はこちらのタイミングではなく、お客様が自身のタイミングで手に入れるものなのだから
「情報は惜しまずどんどん投げてみよう」

ありがたいことに演劇に関心を持ち、情報を検索してくれた人が次に悩むことが
「どれを観に行けばいいの?」
「このお芝居面白いの?損しないかな?」
「何着て行けばいいのかな?」
「チケットってどこで買うの?」
と言った具体的な不安だろう
ここが非常に大事になると俺は考える
関心を持ったお客様が全ての悩みを解決できる情報を詰め込んであげられるかどうか?
これがライトユーザーも迎い入れようと努力したい劇団にとって大切な部分だと思う
しかし、ここまで読んでくれたあなたなら答えは見つかっているのではないだろうか?
上に挙げた(一例だが)疑問に丁寧に答えることが出来たら、観劇初心者が、劇場に足を踏み込むのはすぐそこまで来ている
そのお手伝いを出来た時、俺はこの仕事に就いた価値を強く感じる


もちろんこれは俺が20年近くかけて独自に考えて来た事であり、正解では無いだろう
また知り合いや仲間たちに色んなアドバイスをもらい気付けたことも多数ある
そして俺自身が実践できているかと言えば、完全には出来ていない
なのでこの記事は自分自身への再確認も兼ねています
しかしそれでも演劇をより多くの人に楽しんでもらいたいと考える人の力に僅かでもなれたらと思い執筆させていただきました
これで終わりではありません
もちろん明日にはもっともっといいアイデアがたくさん浮かぶかもしれないし、間違えるかもしれない
でも試してみる価値はあるのではないか、と
今後も演劇をより多くの方に楽しんでもらえる社会を作るために、記事を書いていきたいと思います

全ての演劇に関わる人に敬意を込めて
最後までありがとうございました

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