見出し画像

サキミの事例インタビュー② 『目指すは事例性の解消!』

病院に行けばよくなるよね・・・?!

サキミ:
 今回は、周囲が「発達障害かもしれない」と対応に困っていた事例について、B社の人事Sさんとともに振り返ります。

Sさん:
 新入社員のYさん、最初は本当に面食らったな。
・ 定時ぎりぎりに当日締め切りの書類チェックを依頼して、自分は帰ってしまう
・ 打ち合わせ時間変更の連絡を受けたのに、同行する先輩に伝えない
・ 指導の最中に突然おにぎりを食べ始める
 などなど、驚く行動は挙げればきりがないという。
 所属部署の皆も最初は優しく接していたけれど、だんだん任せられる仕事がなくなって、「あまりにひどくてフォローできない」と人事に異動要請がきてしまった。
 ひとまず聞いた話をネットでいろいろ調べてみたら、「発達障害」の特徴によく当てはまるなと思って。現場の皆も「そうだと思う」って言っていたんだよ。

サキミ:
 それで、EAPにご連絡くださったんですね。

Sさん:
 そうそう。「発達障害」、病気なら医者に行ってもらわないと改善しないだろうし。必要なら休職して、しっかり治療してもらいたいと思って…。

サキミ:
 あのときのSさん、お忙しい時期でしたし、本当に困っていらっしゃいましたよね。最初から「休職」と仰っていましたし。

Sさん:
 いやあ、休職中にEAPを使った社員は皆、しっかり改善して戻ってきているし、休職してもらったら、こちらも態勢を整える時間ができるかなと考えていたんだよ。
 あのとき、サキミさんが状況について、事実に基づいて丁寧に再確認してくれて、自分が「とにかく何とかしなくちゃ!」と焦っていることに気づけた。
 そうしたら、思い出したんだよ。Yさん、私たち人事とのやりとりでは、そんな違和感はなかったことを。ちょっと幼いところはあるけれど、真面目でしっかり者だなと、むしろ印象は良かった。

サキミ:
 Sさんや貴社の人事の皆様は、社員の良いところをよく理解してくださっていますよね。

Sさん:
 それそれ、あのときもサキミさんの言葉で、自分たちが大事にしていることも思い出した。
 Yさんの良さを踏まえて、もう一度状況をよく考えてみると、Yさんだけの問題というより、互いの相性というか、ボタンの掛け違いがあったんじゃないかなあと思い当たって。でも、仮に発達障害だったら、それはそれで対応しないといけないと、冷静に考えられるようになってきた。

サキミ:
 『発達障害という診断をもらって休職』という策について、ご一緒にじっくり検討しましたよね。

Sさん:
 そのとき、サキミさんから、
・ 発達障害と診断されても休職が必要とは限らない
・ 通院治療だけでは、問題となった行動は改善されない
・ 病気扱いされると、本人が傷ついてしまい、協力し合うことが難しくなる
 と教えてもらって。
 なかでも、「そもそも、Yさんは仕事を休んでいますか?勤務中、仕事をしていないですか?」という質問にはハッとしたよ。
 だって、その日ももちろんのこと毎日出社していたし、「仕事をください」って言って、頑張っていることは確かだった。きっと誰にもわかってもらえなくて、つらかったよね…。

サキミ:
 そのYさんに寄り添える姿勢こそ、Sさんのすごいところであり、問題解決の重要なポイントです。

どうしておかしな行動をとるんだろう???

Sさん:
 Yさんの立場になって考えてみたら、「あんな真面目な子がどうしておかしな行動をとるんだろう」とすごく不思議だった。
 「最前線で顧客対応をする部で、ベテランスタッフが多いから、やっぱり、それだけでプレッシャーが大きかったかも」と思えて、もっと詳しく状況を確かめたくなった。

サキミ:
 それで、「まずは、本人の話を聴いてみないと。面談してみよう」と、ご提案くださいました。

Sさん:
 まずは、自分がYさんを理解しないとね。その面談前にも、サキミさんが
・ 一度の面談で対応を終えようとしない
・ Yさんの気持ちや事情、Yさんからみた事実を理解できるまで聴く
・ Yさんの困っているところを捉えて、EAP利用を勧める
 と助言をくれたから心強かった。
 それから、自然な形で面談を設定するための方法や双方の安心感のために2名体制で面談をするなど、具体的なことも確認できたから、うまくいく気がしてきた。

サキミ:
 「まずは本人理解!」という目的がばっちり決まって、具体的な対応がイメージできていらっしゃいました。実際にうまくいきましたね。

Sさん:
 そう、本当にうまくいった。何度も怒られ、先輩方があきれていると思ってしまって、相当委縮していることが理解できた。だから、なおさら判断も間違えてしまってミスが上乗せされるという悪循環…。本人もつらい中、じっと耐えていたんだよね。それで、「異動できるなら、異動したい」と。
 話を聴いて、よかった・・・。多少過敏なところはあるかなと思うけど、つらくても逃げずに頑張れる長所を改めて認識したよ。それにね、もとの部の者たちも大変だったと思う。あそこは、顧客相手の業務だから特に緊張感を持って仕事をしている。ミスが重なると、よけいにピリピリしてしまうのは無理もなかっただろうと改めて思ってね。
 状況がよく理解できたから、うちの人事部で受け入れることを自信を持って部内に提案できた。人事部ももちろん重要業務ばかりだけれど、内部的なものも多いし、何より人に関心があって世話好きな者が多い。異動の経緯を前提に互いに理解を深めやすい環境だしね。
 実際、今、周りに確認しながら、着実に仕事をしてくれている。病気扱いしなくてよかったと、つくづく思うよ…。

お互いのことを考えると、対応策が見えてくる!

サキミ:
 そのときもお伝えしましたけれど、Sさんの持前の共感力が発揮されたからこそ、問題となった行動や状況の改善が実現できたと思います。慣れない職場で誰にも助けを求められなかったYさんは、自分を理解しようと話を聴いてくれるSさんにどれだけ安心感を覚えたことでしょう。
 また、部の皆様の困惑やご苦労にも共感をし、慮ってくださったことにより、周囲も安心してYさんに仕事を任せられる環境がみえてきました。Yさんの利益だけでなく、職場の利益につながる対応が実現できた、鮮やかな事例性の解消ですね!

Sさん:
 こうして振り返ると、最初は、問題を訴えてきた側にだけ共感してしまっていたよね。立場が違うと、見えている状況が違うことも改めて感じたよ。
 「あの人が悪い」「あの人は病気だ」って言っていても、仕事は進まないからね。それぞれの立場に寄り添って、気持ちや状況への理解を深めることで、おのずと有効策が見えてくる、面白いね。

サキミ:
 いろいろな人が集まっている職場では、互いの個性や違いがプラスにもマイナスにもなりえます。マイナスになってしまうときには、ご一緒に理解を深め、職場の問題や困りごと『事例性』を解消していきましょう!

サキミのおさらい①-2

−ここからは、読者の皆様だけに−

 実は、この事例のYさん、異動が決まってからEAPを利用してくれていて、セルフ相談でサキミがサポートをしています。Yさんの安心感を高めるために、現段階ではSさんと連携はしていません。
 人事に異動したYさんは、「人事部では、周りから声をかけてくれるから相談しやすい。仕事も少しずつだけど、できることが増えてきたし、最近は周りの人と雑談もできるようになった!」と仰っていて、笑顔を取り戻しています。
 Yさんと周囲が互いに理解しようとし合い、繋がりが強固になっていくことに喜びを感じながら、サキミもマネコンに邁進します。。。

■サキミのプロフィール 
ビジョン・クラフティング研究所 シニアコンサルタント
臨床心理士・公認心理師・1級キャリアコンサルティング技能士

サキミさんアイコン縮小版

お問い合せ:https://www.jes.ne.jp/form/contact