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経営管理からはじめる経営支援とは①「経営支援の抽象論」+3年半の振り返り

こんにちは。シクミヤ代表の山岡です。2019年1月30日にシクミヤという会社を創業してから、2022年7月30日で3年半が経過しました。

まずは設立以降、信頼して仕事を依頼いただいたクライアントの方々、協力いただいた専門家の方々、一緒に頑張った社員・インターン・アルバイトの方々には改めて御礼申し上げます。

振り返るとそれなりの期間を活動してきたのですが、自分たちが何をやっているか・今後何をやりたいと考えているのか・どこに向かっているのかについてなど、シクミヤという会社そのものについて積極的に発信ができていませんでした。

このタイミングで、これまで取り組んでいた事業を通じてたどり着いた事業コンセプトや、今後取り組みたい方向性について発信したいと考えました。

このnoteでは、シクミヤという会社がこれまで何をしてきたかの振り返りと、行ってきていた「経営管理から始める経営支援」についてコンセプトの解説と、今後はなにを目指すのかについてお話したいと思います。

このnoteでシクミヤを知った人や、これまでシクミヤが何をやっているかわかっていなかった人に面白いと思ってもらえたら嬉しいです。(また、面白かったらシェアしていただけると嬉しいです!!)。

創業からこれまで取り組んだこと

創業から3年半、少人数の組織サイズの企業(例外はあるが300名以下。10-50名が主な対象)を対象に、経営支援を行ってきました。スタートアップ企業が主な支援先ですが、士業事務所やIPOを視野に入れていない伝統ある企業も対象としています。

スタートアップ企業を支援する際には「スタートアップ支援」、それ以外の会社を支援する際には「業務最適化」と呼んでいます。

両方の支援とも、経営管理体制構築から開始する経営支援となります。この経営支援が、どのようなコンセプトで行われているかについて述べたいと思います。

経営管理から始める経営支援の抽象論

スタートアップ企業からの多くの相談は、「これから起業するがどのように会社を作ればいいのかわからない」という起業前後における組織づくりの相談と、「資金調達をしたがどのように会社を整えたらいいのかわからない」という1−2回資金調達をした後に社内を整備してIPOに向かうまでのフェーズの企業からの相談の2つが多くを占めます。

これらの相談を受けた場合、いずれのケースでも経営管理の体制を整える所から依頼が始まります。

僕らの仕事において、経営管理体制構築からはじめる経営支援がクライアントにとって、どのような意味をなすと捉えているのか共有します。

(1)ログを取る手段として:意思決定を最適にする組織作り

「経営管理」を具体的な業務に分類すると、経理・労務・財務・法務・税務などの領域となります。
これら具体的に区分された業務領域たちは領域ごとの専門性によって特徴づけられていますが、共通して過去または現在に起こっていることについて正確に文字・数字で記録することが求められます。

経営管理整備からスタート(①)

経営管理の整備を行うことを通じて、組織に関する各種ログを意図して取れる状態にすることが、最初に達成したいゴールになります(①経営管理整備)。
僕らの業務としては、まずは会社の状況を把握し、現状認識に合わせて経営管理体制をデザインして、実装を行います。実装後に業務運用面が円滑にまわるようにサポートを行います。

モニタリングから意思決定(②→③)

組織に関する各種ログがある程度取れる状況になると、次に、事業上で重要性の高い各種計数の確認を行います。
組織状況がどのようになっているか、事業は本当に前に進んでいるのか、立てていた仮説通りに事業が動いているのか、計数の確認を行います(②ログのモニタリング)。
シクミヤ提供業務上では、まず、計数を確認できる環境(ダッシュボードなど)の設計・実装を行い、その後、経営陣や事業責任者と共に計数の解釈を行います。

会社の状況・組織の状況を把握するために必要な各種情報が揃ったら、それらの情報を元に、その時に直面している重要な経営課題を解くための意思決定をクライアントと共に行います(③意思決定)。

意思決定後の組織変革(④)

経営課題を解くための意思決定を行うと、新たな事業を開始する・新しいサービスメニューをつくる・事業部を新設するなど、組織的な新しい取り組みが行われます(④組織の変革)。これらの取り組みによって組織環境が変わった後に、再度、その時の組織状況に合わせて経営管理体制の整備を行います(①経営管理整備)。

意思決定〜経営管理サイクル

スタートアップ企業の支援を行っている期間において、①経営管理整備から④組織の変革までのサイクルを何周も循環させていくことが、1つの目標となっています。

経営管理体制の整備が意思決定に強く結びついていること、意思決定が組織の変化を生むこと、組織変化の結果経営管理体制の整備が必要になることを実感できるかどうかは、組織サイズに依存します。社内体制整備と組織を前にすすめる行為が密接に結びついていることが少人数の組織の特徴です。

対してこのような少人数の組織に対して、経営管理体制整備(①)と会社の意思決定(③)を両方とも考えて業務を提供できる人材は、経済社会においてとても少ないように感じています。

この両方をチームで提供できる体制構築はまだ完全ではありませんが、シクミヤではこの両方を担えるチームを運営して、この分野で価値提供をしていきたいと考えています。

(2)組織のインフラとして:良いカルチャーを作る組織環境

これまで、経営管理業務が持つ性質のうち「組織内外のログをとること」に着目して、シクミヤの業務の特徴を論じました。

別の角度から、経営管理業務(バックオフィス業務)が社内のインフラ(基盤)として機能していることに着目して論じます。

経理・労務・法務・税務・総務などの経営管理機能は、その会社が営んでいるビジネスに対して、直接的・間接的に影響します。例えば、契約書を締結する時の法務手続や、請求書を発行する時の手順などは直接ビジネスのシーンに影響を与えます。入社手続は、入社するメンバーが、会社に入社してはじめて会社とやり取りをする手続きとなります。

あるコミュニティにおけるインフラ(基盤)がどのようにデザインされているかは、そのコミュニティにおける人員の行動様式や価値観、コミュニティ内の文化に影響します。

たとえとして少し乱雑かもしれませんが、作業場におけるインフラの1つである「ディスプレイ」は、会社の考え方が反映される1つの興味深い事例です。

社内の全席に置かれている、Amazonで販売されている1個19,800円のディスプレイは「このディスプレイから頑張ろう」「ディスプレイは何でもおければ良い」など、複数のメッセージを発しています。
起業当初に購入した1個219,800円するStudio Display(Appleが販売しているディスプレイ)も、「作業者の作業効率を大事にしたい」「予算感覚がない」などポジティブなメッセージも・ネガティブなメッセージも包含しています。

選択されたディスプレイから発信されるメッセージは、経営陣の普段の発信の受け取られ方に影響したり、社員の行動・言動に影響します。

勿論広く捉えれば、会社内で行うすべての意思決定はカルチャーに影響すると言えてしまうのですが、インフラに関する意思決定はその後起こる組織的な行動に幾度も影響することから、より強い影響力があると言えるでしょう。

経営管理者への要求5構造+1レイヤ

経営管理業務は組織のインフラでありコーポレートカルチャーに影響を及ぼすものという観点を踏まえて、シクミヤでは経営管理業務を5+1のピラミッド構造に分けて捉えています。

図の形式から想起される通りマズローの「欲求5段階説」を参照していますが、こちらは経営管理業務を担う人に段階的に要求したい内容が記載されています。
シクミヤのチームメンバやクライアント先の経営管理担当者には、下位のレイヤの仕事がこなせるようになった場合、上のレイヤまで意識して業務を行ってもらうように求めています。

最も基礎的な1段階目は「1.成果物」です。最も基礎的と位置づけていますが、最も重要で、達成することが難しい階層です。経営管理業務における成果物は、正しくミスなく書類を作成する・所定の手続きを行う・数値の集計を行うことにより作成されます。

成果物を正しく作れるようになった人に対して、次に求める段階は成果物を正しく作るための「2.ワークシート」のデザインと実装です。ワークシートとは、成果物を生成するために設計された作業場所を指します。名称の通り、表計算ソフト(ExcelやGoogle Spreadsheet)を主眼においていますが、作業場所として正しく設定されたSaaSも指します。成果物を正しく作る論理を理解した経営管理人は、それを生成するためのロジックを組むことを求められます。

次のステップとして、ワークシートの使い方自体や、ワークシートを用いる前後の作業工程を含めた「3.業務フロー」をデザインすることを求めます。
ワークシートのデザインを行う上で成果物生成の論理を把握することが求められました。
業務フローをデザインするためには、組織内の標準的なリテラシー水準や作業スケジュールなど組織の論理を把握することが求められます。組織内で異物感のある業務フローが組まれていないか、フルタイムではない関わり方をする人ほど(組織にとって)自然な業務フローを設計する難易度があがります。

業務を通じた「当たり前の水準」の形成

これ以降のステップは、各コミュニティ内の「当たり前の水準」に対して良い影響を及ぼせるか、という視点でのステップになります。

当然トップダウンで規則制定という形でコミュニティ内の共通ルールを直接的にデザインする手法もありますが、普段の業務(成果物に関するコミュニケーション、ワークシート・業務フローの設計・運用)を通して、間接的にボトムアップの形で、チーム・会社に良い影響を与えることができないかと考えています。

思想に裏付けられたワークシートや業務フローたちを通じて、業務を行う部署内・会社内で、仕事のすすめ方や考え方(「4.作法」)が徐々に自然と形成されることは、負荷をかけずに組織を変革させる方法として理想の1つではないでしょうか。

実務的にはトップダウン的な情報発信(業務に関する思想・やり方の発信)と組み合わせることになりますが、やり方を具現化した業務設計と思想をセットで提供することで、仕事の作法を部署内・会社内に浸透させたいと考えています。

正しく業務設計を行ったとしても、各コミュニティの行動様式を正しく変化させることは困難です。

カスタマイズ可能なSFAツールのベンダーに多額の開発費を費やして開発を依頼して完成したが、いざ導入しようとしても営業がツールを活かしきれずに、結局従前通りの営業管理手法が使われてしまっているという事例は珍しくないと聞いています。

SFAツールを導入することで商談ログをつける重要性や定量データに基づく意思決定を当たり前の水準にしたいのであれば、いきなり抜本的に全ての業務を変えるのではなく、普段の業務を新しい価値観を実現させる形で徐々に置き換えていく形式が良いのではないかと考えています。

なお、普段の業務を通じて部署内全体・会社全体の仕事のやり方に対して良い影響を与える、というコンセプトの先にある考え方は、経営管理業務の経営管理業務を通じて会社の「5.カルチャー」にいい影響を与える・カルチャーを強固にするという考え方があります。
管理業務を行う場合(特に制度を設計する場合)、カルチャーに即しているか・カルチャーを損ねるものとなっていないのかについて、正しく理解して振る舞うことが期待されます。

経営管理業務のピラミッド(経営管理者への要求5構造)の構造を振り返り、これまで述べていたことを総括します。

ピラミッドの下層3段(成果物・ワークシート・業務フロー)は具体的な業務に関わる事項、上層2段(作法・カルチャー)は組織内の行動様式や意識付けに関連するものとなります。

正しくデザインされた業務・正しく作られた成果物を通じて組織内の行動様式・意識付けが良い方向に変化することは1つの理想です。その後、行動様式や意識付けが変わることに伴い、新しい組織行動をすべく、既存の業務内容に対して変更が求められることになります。
このような、具体的な業務・行動様式の変化のサイクルを良い方向に回すことが良い支援だと考えています。

IPOを行いたいスタートアップに対して支援を行う際には、「(1)ログを取る手段として」で述べた経営管理業務・意思決定のサイクルと本サイクルの両方を意識して支援を実施します。
対して、士業事務所やIPOを視野に入れていない伝統ある企業から業務最適化の相談を受ける場合には、こちらの具体的な業務設計・行動様式の変化の相互作用が強く意識されることになります。

(再掲)経営管理者への要求5構造+1レイヤ

最後に、経営管理業務のピラミッド(経営管理者への要求5構造)の一番上の段階に存在する「業界全体」に対する影響について補足します。

経営管理業務に関する自社の取り組みを発信することで、他社を含めた「業界全体」における標準的なやり方に影響を及ぼす事例があります。

著名な例としては、2017年10月にメルカリの当時の社長である小泉さん(現会長)が育休を取得した(当時の記事)ことは、「未上場のスタートアップの経営陣も育休を取得する」という流れを作ったように思えます。
他の例としては、2018年に当時ウォンテッドリーのCFOだった吉田さん(現CADDi)が書いた「Wantedlyの経営管理のシステム&フローを図解してみた。」の記事をきっかけに、経営管理体制のフロー図を公表する企業が一時的に増えました。

シクミヤとしても、これまで設計した業務フローや取り組み・コンセプト(本noteも含みます)について積極的に発信することで、業界全体を前にすすめるな貢献ができたら良いと考えています。

やりたいこと:「新たな専門性」を確立させたい

これまで2つの視点から、シクミヤが提供している経営支援のコンセプトを説明しました。

経営管理を「ログを取るもの」とみなした場合、意思決定に資する経営管理体制の構築と、その体制で取れたログに基づく意思決定の実行が、支援対象となります。
経営管理を「組織のインフラ」とみなした場合、経営管理体制構築を通じて組織全体の行動様式・カルチャーに良い作用をもたらす、組織作りの面での支援を行うことになります。

今シクミヤとして取り組みたい挑戦としては、これら意思決定・組織づくり・管理体制構築の3つを包含する支援業務の概念(コンセプト)を、新たな専門分野と呼べるものとして確立できないかと考えています。

勿論、コンセプトを構成する3つの観点のそれぞれは0から生み出したオリジナリティあるものではありません。
具体的な経営管理業務設計について、「公認会計士業」「経営工学」「ソフトウェア工学」の技法に、設計がコミュニティに影響を与えるコンセプトについては建築技法である「パタン・ランゲージ」に、事実に基づく意思決定方法としては「経営コンサルティング」「デザイン思考」に用いられる各種技法に、それぞれ強く影響されています。

ただの既存の専門知識の掛け合わせとなるか、これらの知識に立脚した新たな専門性が確立できるか、1つの挑戦となります。組織運営や具体的な経営支援業務を通してコンセプトを磨き上げることになりますが、チームとして難しい山に挑戦したいと考えています。

最後に:仲間を探しています

ここまでnoteを読んでいただいてありがとうございます。

コンセプトについてこれまでつらつらとお話しましたが、これらのコンセプトはチームとして仕事を行う中で徐々に言語化していったものです。経営支援の中でクライアントのバリューアップをこころみる過程で、よりよい支援方法を模索する中で、徐々にコンセプトが形作られてきました。

今noteを読んでいただいた方に対して一番伝えたい内容なのですが、一緒に経営支援をしながら「新たな専門性」の確立を模索して目指して働いてくれるメンバーを探しています。これまで7人で支援を行っていましたが、人数を倍ぐらいにしたいと考えています。

これまで振り返ってみたのですが、やはりメンバーが増えて一緒に仕事を開始したタイミングで、コンセプトの具体化が前に進んでいました。チーム全体に新たな視点がもたらされ、知見が増えた中で全力で良い支援を模索する中で、それに関連する専門性が磨かれます。また、チームで仕事をするための仕事のやり方が徐々に確立され、それによって専門性の確立が促進すると考えています。

noteの内容をみて気になる内容があったり、僕らと「話してみたい」と頭によぎったのであれば、Meetyや採用ページをクリックいただけると嬉しいです。
現状公認会計士が多い組織ですが、公認会計士ではない方や、経営管理業務に関連してこなかった方も広く募集しています。また公認会計士試験合格者についても、公認会計士資格を取るまでのサポート体制を構築したいと考えていますので、興味があれば是非お話しましょう。

最後になりますが、このnoteは前篇として業務のコンセプトについて説明しました。
冒頭でも述べましたが、仲間探しの観点や、いろんな方に届いて欲しい内容ですので、シェアいただけるととても嬉しいです。

後日、続編として、業務で用いる具体的なツールや技術的な挑戦・チーム運営の克服したい課題点・最近展開したデータベース事業など、少し具体的な取り組みについて述べたいと考えています。


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