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この言葉を自分で言うと背筋がのびシャキッとする。
 
それは

「今日一日

 怒らず 怖れず 悲しまず

 正直 深切 愉快に、

 力と 勇気と 信念とをもって

 自己の人生に対する責務を果たし、

 恒に平和と愛とを失わざる

 立派な人間として活きることを、

 厳かに誓います!」



約35年前、財団法人天風会に入りたての頃、

中村天風師の『天風誦句集』(しょうくしゅう)で憶えた
「吾等の誓い」(われらのちかい)の言葉だ。



私の実践は、まだまだ未熟だ。

しかし

私は、この言葉が大好きだ。




ポイントは

【今日一日】ということ。



われわれは生きていれば、つらいこともある。

しんどいこともある。苦労もあって当然だ。


しかし、

そのような苦労も一生ひきずるのではなく、


【今日一日だけ】で良いと思うと、

だいぶん気がラクになる。




苦労は今日1日だけで良いのだ。

1日だけなら、
やり過ごせるかも知れない。




こんな話がある。


天風先生の弟子である佐々木将人氏が

結婚したばかりの頃、


奥さまのご両親が、

佐々木氏の自宅へ

よく足を運ぶようになり、

とうとう佐々木氏が、

奥さまのご両親の世話をしてるかぐらい、

長居をするようになった。




これでは義兄に対して失礼であり、

筋違いではあるが、さりとて、


もう来るなともいえず、


はたと迷っていた。




そこで

中村天風師の教えを

乞いにいった。


天風先生は、佐々木氏が、

ひととおり事情を説明するのをじっと聞き、

おもむろに口を開いた。


「妻の御両親と共に住むというのは、

 道が違うというものだ。


 しかし親孝行というものも、修行のうちだ。


 帰ってもらうにしても、

 せめて【今日一日】だけ、

 面倒をみてごらんなさい」とおっしゃった。



佐々木氏は、

『命を捨てても』とまで

信頼していた天風先生のお言葉だったが、


正直がっかりした。



だが

何度も、天風先生の言葉が頭の中をめぐる。




『今日一日だけ、面倒みなさい』

『今日一日だけ、今日一日だけ・・・』



突然、「ハッ!」と気がついた。




「そうか!親孝行は【今日一日】だけなんだ。



【毎日が今日一日なんだ!】」


無明の迷いから醒めた。




【人生は今日只今あるのみ、明日も昨日もない】と。


つまり、毎日が【今日一日】だ。



「私は親孝行がいくらよいといっても、

 正直なところ、一生面倒をみるのは嫌です。



 しかし、

 今日一日だけは我慢できます。



 ですから、『今日一日』だけは気楽にして、

 明日になったら、帰ってください」


奥さまの御両親と奥さまは、言葉もなく涙を流した。



それから【今日一日】が20年続いた。


そして義理のお父様は、寝たきりの病に伏した。


奥さまひとりでは、風呂に入れることも出来ないので、

佐々木氏が、三日に一度は仕事の途中で帰宅し、

義理のお父様を風呂に入れては、また出かけることを

約2年続けた。


最後の時、

義理のお父様は佐々木氏の手を握り、

一筋の涙を流して旅立っていった。




(引用及び参考 佐々木将人著 『人生山河ここにあり』)

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