同性パートナー在留資格訴訟判決:弁護団声明(2022年10月1日)

1 判決の概要
 東京地方裁判所は、2022年9月30日、日本国籍者Bの同性パートナーである米国籍者Aにつきパートナー関係に基づき定住者の在留資格への変更の不許可処分の取消し等を求めた事件(第一事件)、また、これを認めなかったことについてA及びBが国家賠償を求めた事件(第二事件)について、判決を言い渡した。

 判決は、第一事件については訴訟要件を欠く等の理由により却下し、第二事件については、「定住者」への在留資格への変更を許可しなかった点については違法でないとする一方、法務省入国管理局(当時)入国在留課長の平成25年の通知が、外国籍者同士の同性婚の配偶者に人道的な配慮から「特定活動」の在留資格を付与するとしながら、入国管理当局において、日本国籍者との同性婚の相手方である外国籍者については同通知の射程外と解し、一律に「特定活動」の在留資格を付与しない運用を行っていることは、法の下の平等を定めた憲法14条の趣旨に反するとした上、AとBのパートナー関係についての個別的事情を踏まえれば、AとBが本邦において安定的に生活することができるよう人道的配慮を行う必要性があり、Aに対し「特定活動」への在留資格の変更を認めなかったことは客観的に違法であるとした。ただし、平成25年の通知の運用に関して、日本国籍者の同性婚の相手方である外国籍者を射程外とすることに疑義を呈する公権的判断がなかったことなどを理由に、東京入管局長には過失が認められないとして、国家賠償は認めなかった。

2 判決の評価
 これまで、同性の日本国籍者とパートナー関係にある外国籍者については、その関係の継続性や真摯性、婚姻の有無などにかかわらず、パートナー関係に基づく在留資格を得ることが一切認められてこなかった。そのため、日本国籍者と外国籍者のカップルが一緒に暮らすには、外国籍者がパートナー関係と無関係の仕事などに基づく在留資格を得て何とかその在留を維持し続けるか、日本に住むことを諦めてカップルで海外に移住するかのいずれかしかなかった。

 本判決は、このような状況に置かれてきた日本国籍者と外国籍者の同性カップルにつき、入管の運用が憲法14条の趣旨に反するとして外国籍者の在留につき人道的配慮の必要性を肯定し、ようやく日本国籍者と外国籍者の同性カップルが安定して日本に在留する道を開くもので、その意義は非常に大きい。
 他方で、本判決が、憲法上及び国際人権法上、同性のパートナー関係も家族として保護されるべきであり、同性カップルと異性カップルの取扱いの区別は性的指向に基づく差別にあたるのではないかという根本的な問題についての判断を避けたこと、また、その理由として、憲法や国際人権法より下位に位置する入管法のさらに下位規範の法務省告示に本件が当てはまらないことを主たる理由とし、「憲法・・・や国際人権法違反等の主張について判断するまでもない」としたことは、不当である。また、在留資格に関し裁判所の判断を得られる場合を著しく狭く解して第一事件につき訴訟要件を欠くとしたことや、Bにパートナー関係に基づく在留資格を与えなかったことを違法としつつ過失はないとして国家賠償請求を否定したことは、国による誤った判断や人権侵害に苦しむ者への司法による救済の道を閉ざすものであっておよそ適切でない。

3 出入国在留管理庁への要望
 出入国在留管理庁においては、人道的配慮の必要性からBに在留資格を与えるべきであるとの本判決の指摘を受け止め、直ちにBに安定的な在留資格を付与するとともに、新たな通知を発出するなどして、AとBと同様の状況にある、日本国籍者と外国籍者の同性カップルが安定して日本で暮らすことができるように取扱いを変更することを求める。
                           以上

2023年3月12日追記:当事者のAとBの表記を、判決等の表記に合わせて修正しました。


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