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地理教育で土をどう教えるか?

学校の先生にとって土を教えるのは難しいことです。私自身、塾講師のアルバイトをしていた大学生のころ(夏期講習では1日に5クラス地理教えていました)、「関東ローム」、「テラロッサ」、「テラローシャ」を教えていましたが、実際のところ、見たことがありませんでした。生徒は暗記するしかなく、講師は暗記させるしかなくなる理由です。

これまでの高校地理の教科書とこれからの改訂案

覚える土が増えている?
土が増えているように見えますが、気のせいです。これまでは、地図上で図示できない「関東ローム」、「テラロッサ」、「テラローシャ」、妙に細かい「栗色土」、「褐色土」、「プレーリー土」、「パンパ土」、「レス」、「黄土」も存在し、16種類もありました。

謎の土1・テラロッサ
「地中海沿岸の石灰岩からできる赤色の土で、ブドウ(ワイン)やオリーブの生産が盛ん」と暗記します。しかし、地図上のどこにあるのか、誰も知りません。そもそも赤いだけだラトソルも赤いし、何が違うのか、札幌わかめラーメン、さっぱりわかりません。一つ問題を考えてみましょう。

これテラロッサかなぁ@イタリア

【地理(土)の問題1】地中海沿岸の赤い土・テラロッサは石灰岩の風化によって生成するとされていますが、石灰岩の龍泉洞、伊吹山、秋吉台の土もテラロッサなのでしょうか?

答えは否です。理由は地中海沿岸ではないから、だけ。赤い土の原因物質は鉄ですが、石灰岩にはほとんど含まれていません。石灰岩が風化しても、赤い土はできないのです。赤い土の原因物質は、レス(黄砂)だと考えられています。石灰岩の働きで中性条件では鉄が風化すると赤くなりやすい性質があります。秋吉台の赤い土も、テラロッサも同じです。テラロッサはアフリカのサハラ砂漠からの風シロッコ(ゲブリとも。スタジオジブリのジブリの語源。ジブリの発行している雑誌のタイトルは『熱風』ですね。)がもたらした砂が堆積したものです。

謎の土2・テラローシャ
「ブラジルの玄武岩地帯の赤紫色の土。コーヒー栽培が盛ん。」と暗記します。やはり、地図上のどこにあるのか、誰も知りません。赤紫色かどうかは土の分類条件にないのです。やはり、問題を解いてみましょう。

たぶん、これのことかな・・・と思いました@ブラジル

【地理(土)の問題2】玄武岩の風化によって生成する黒色の土・レグール土(インド)と同じように玄武岩の風化によって生成するブラジルの土は赤紫色の土・テラローシャ。なぜ違う土ができるのでしょうか?

玄武岩でできる土は二つあります。乾燥地にできるのは、ひび割れ粘土質土壌(インドローカル名:レグール)。玄武岩はマグネシウムが多く、pH高めの条件でスメクタイト粘土(猫砂、下痢止め薬の成分)を生み出します。これが乾燥湿潤で収縮膨潤を繰り返すために、土にひび割れができる。そこに有機物が入り込むために、土が豊かになります。綿花、マメなどの栽培が盛ん。

スメクタイト粘土の水あるときー、ないときー
ひび割れ粘土質土壌@カナダ

乾燥地でなく、温暖湿潤な地域では、玄武岩は速く風化し、鉄酸化物が多く残ります。テラロッサと同じです。粘土質なので有機物が多く、赤紫にも見えるのかしら。テラローシャはラトソルよりも地質年代が若く、栄養分を多く含んでいるために、サトウキビやコーヒーのプランテーションをするのにいいね、と言われて区別されてきたのだろうと思われます。

ラトソル@ブラジル

テラロッサは若手土壌(褐色森林土)、テラローシャは粘土集積土壌(ルビソル)で、そのうち色が目立った一部に過ぎない。でも、人文地理の先生が日本に持ち込むとき、土壌分類よりもイメージしやすい色で土を特徴づけ、生業と関連させようとしたのだろうと思います。視覚は最も強く、それゆえ、危険も伴うのですが。外国で火山灰土壌を「KANTOROOMU」って教えている感じなので、いつまで続けるのか、難しいなと感じます。

【地理(土)の問題3】寒帯のポドゾルは有機酸によって鉄とアルミニウムが溶けだし砂が残ります。では、熱帯のラトソルはなぜ風化の末に鉄とアルミニウムが集積するのでしょうか?

眠いので、また次回。今日の話はこちらがベース。

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