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噓日記 4/28 ドライフルーツ

ドライフルーツが好きだ。
瑞々しい果物がカサカサに乾燥しているだけで面白いのにそれがさらに美味いときたらもう嫌いになれない。
俺のようにヤンチャな見てくれの人間はどうせハンバーガーが好きなんだろと周りの人間から思われている。
だが実際のところは果物が好きなのだ。
髪にパーマを当てて、髭を生やして、ネックレスをじゃらつかせていても俺は果物を食べる。
まるで浮浪者のような佇まいだが、スーパー、ネット通販、輸入品店を巡ってカサカサの果物を日々かき集めているのだ。
俺はその時間を大航海時代と呼んでいる。
俺はもうリンゴやバナナ、オレンジが乾燥しているだけで堪らない。
俺の食性は丁度エジプトルーセットオオコウモリと同じだ。
俺がエジプトルーセットオオコウモリなのか、エジプトルーセットオオコウモリが俺なのか。
もはや見分けもつかない。
母親は俺のことをエジプトルーセットオオコウモリからとって、ルーちゃんと呼ぶ。
トルーセと呼んでくれ。
こんな俺だが母親から生まれてきた時はフルーツコウモリのような可愛らしい見た目をしていたと聞いた。
祖母が昔そう言っていた。
祖父も言っていた。
痴呆とは怖いものだ。
孫を畜生のように思ったと平気な顔をして言うのだ。
恐ろしい。
彼らは今、本当の俺を探しにエジプトに飛んだ。
しかしここまで言ってきたが、現在の俺は思考がほとんどフルーツコウモリである。
フルーツが頭から離れないのだ。
きっと果肉の芽が頭に埋め込まれている。
あぁ、死ぬまでにドライフルーツの宗教を作りたい。
全日本ドライフルーツ教団及び北アイルランド連合王国。
今の所、予定している宗教の名前だ。
教祖は勿論、勝海舟。
勝海舟が広めた宗教ってことにしたい。
箔をつけたい。
ついでに危険思想だと、公安からもマークされたい。
武器を持った小2くらいの危険度だと認識されたい。
見つかり次第、小さな小さな赤ちゃんの小指程度の大きさの銃で撃たれたい。
痛いけど泣くほどではない痛みに襲われたい。
反撃は勿論、カシューナッツ。
それを投げて戦いたい。
自由のために。
自由な戦いだ。
スペイン語にならってその闘争、そのカシューナッツの投擲をルチャ・リブレと呼ぶことを教義にしたい。
そして毎週木曜にはでっけぇでっけぇ気球を飛ばして、住宅街の上から撒きたい。
メンズ脱毛のパンフレットと小粋なレザーのパスケースを。
現代のファフロツキーズだと後世の教科書に載りたい。
地理の教科書に載りたい。
あと道徳。
あと生活。
そんな大人に、なりたい。

どりゃあ!