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噓日記 4/23 大きな木

今日、散歩中に大きな木を見つけた。
普通にそこらに生えている木を1とすると、その木は8はあった。
思わず、世界樹、とこぼしてしまうほどに立派な木だった。
WEBサービスで写真から被写体の名を検索できると聞いたので、その木の写真を撮り、検索してみる。
インカメラで自分と一緒に写ったのが悪かったのか、検索結果には大江裕と出てきた。
改めて、木を単体で写す。
再度調べてみるとその気はガジュマルというらしい。
そのまま検索結果からいろいろ調べてみると、この木よりもさらに大きくなるらしい。
自然の雄大さを改めて見せつけられたように感じた。
木の根元まで行き、幹をそっと撫でる。
愛撫とも言えるかもしれない。
そして、撫でくりまわされ、ガジュマルが油断した瞬間。
木の幹からスッと何かが抜けるような感覚が手に伝わってきた。
ここだ。
期を逃してはならない。
私はポケットから左手を引き抜き、鞭のようにしならせてそれをガジュマルの幹に叩きつけた。
丁度、居合のような形だ。
バチンと高い音があたりに響く。
そして、枝が震え、葉が舞う。
ガジュマル全体が命を持って泣くかのように大きく揺れる。
やったか?
次の瞬間、私の眼前には小さな子どもがいた。
正確には、小さな子どもが上から降ってきたのだ。
赤い髪をしたその子は私の足元に着地し、目にも止まらぬ速さで体を撫でるように駆け上がってくる。
愛撫だ。
そしてそのまま、私の左手にしがみつき、小指をその小さな手で掴んだかと思うと、私の顔を覗き込み言う。
「ピンキーリングつけてんじゃん」
そう言った瞬間に、パキョと小さな音が体の中から聞こえた。
その子どもが私の小指を折ったのだ。
それに気づいた瞬間、突き抜けるような痛みが私を襲った。
「なんでこんなことしはるんですか!」
いや、本当に。
ガジュマルを叩いたのは私だが、指を折られるとは思っていなかった。
その小さな子どもはドスの聞いた声で言った。
「お前、知らん奴に家どつかれたら嫌やろ。しかもそいつがピンキーリングつけてんねんぞ」
それは確かに嫌だ。
ピンキーリングをつけた奴にやられると思うと無性に腹が立ってしまう。
私は持っていたイワシの缶詰を詫びとして彼に渡した。
ガジュマル、赤い髪、子ども、そして家。
ここまで断片的に得られた情報から推測するに、この子はキジムナーだ。
キジムナーは魚介類が好きだと言われている。
これで、どうにか。
しかし、彼の怒りは収まらず我々は今後法廷で争っていくことが決まった。
全てはこのピンキーリングのせいなのかもしれない。

どりゃあ!