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so.

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「so.(エスオー)」は、女子高のとあるクラスの一日の間に起こる出来事を、様々な時間、それぞれの視点から綴る群像劇です。
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2017年4月の記事一覧

【so.】野田 繁美[昼休み]

【so.】野田 繁美[昼休み]

 さっきの書道の時間に提出した「平和」の文字が、我ながらきついジョークに思えた。屋上から中庭へ真っ逆さまに落ちてバラバラになったものが、年末から燻っていた灰色い空気を、一気に真っ黒に染め上げた。

「人じゃない!」

 伊村さんが叫んで、散らばっているのは死体じゃないって分かると、勇気のある人はそれに近づいていった。わたしは吐きそうな気分のまま、この空間から離れようと歩き出した。

「おいっ! 教

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【so.】大和 栞蔓[昼休み]

【so.】大和 栞蔓[昼休み]

 はっきり言ってもういつでも泣くことができた。ナオにそそのかされてわたしの手柄ってことになっていた終業式の朝の事実を、橋本に暴露したのは悔しくなかった。むしろ降って湧いた話に乗ってしまって抱え続けた秘密を、ついに解き放つことができてすっきりした。サトミちゃんの自殺っていう衝撃的な出来事に対して、なにか隠蔽工作に関わっているような後ろめたさがずっとあったから。そんな告白の直後で心のガードが緩んでいた

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【so.】津田満瑠香[昼休み]

【so.】津田満瑠香[昼休み]

 猫ちゃんの死体の次に、のりんに腕を引かれてやって来た中庭で見たのは、バラバラに散らばった人間だった。

「人じゃない!」

 近づいていた伊村さんが叫んだら、委員長も近づいていってみんなに叫んだ。

「みんな安心して、これは人体模型です」

 それを聞いて少しホッとして、のりんと落ちている人体模型の側へ近づいてみた。

「ホントだ。気持ちわりー」

 イズミンが胴体のところへ近づいていって、それ

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【so.】佐伯 則佳[昼休み]

【so.】佐伯 則佳[昼休み]

 大きな音がして大きな悲鳴が響いた渡り廊下は静まり返っていた。誰もが足を止め、クラスで一番落ち着いていると思っていた伊村さんは尻もちをついているのが意外だった。そのすぐ先には、制服を着た誰かの体がいくつかに分かれて飛び散っている。裏サイトに書かれていたあのこわい書き込みって、このことだったのだろうか? やってやる、っていう攻撃的な予告は、誰かを殺すっていうこと? だけど何か、違う気がする。高いとこ

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