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「書く人あれば読む人あり」(号外)~課題解説~

※〈ちょこっと倶楽部・エディターコース〉メンバー向けの限定記事です
※メンバーでない方も途中までお読みいただけます

今日はメンバーシップ限定記事「書く人あれば読む人あり」の日ではないが、先週の限定記事でちょっとした課題を出したので、その解説を。

507字の文章を、300字以下に短くする課題だった。
きっと皆さんお忙しいから、課題に取り組んでくれるのは1人くらいだろうと書いたが、そのとおり1人だった。
先週「100人」と書いていれば100人が取り組んでくれたかもしれないと、今ちょっと悔やんでもいる。

課題の文章はこのようなものだった。

はて、「約束」っていったい何なんだ?

ためしに辞典で引いてみた。
「ある物事に関してあらかじめ取り決め、将来それを変えないことを互いに誓うこと」(小学館国語大辞典)

ん? 互いに?

ということは、
「もう二度と××しない。ごめん。約束するよ」
「××円貸してくれ!必ず返すから。約束するよ」
というような一方的な約束は約束でないということになる。
実際、そういう約束は約束というより、どこか言い訳めいている。
そして、そういう約束は平気で破られる運命にある。

逆に言えば、きちんと互いに誓いあう約束にはズッシリ重みがある。
「次は×月×日に会おうよ。約束しようね」
「仕事いっしょにしよう。がんばろうよ。約束しようね」
同じ約束でも、ここに言い訳めいた後ろ暗さはまったくない。
だから約束は守らなくてはならず、果たさなくてはならない。

約束をひとつするたび、そしてその約束を果たすたび、二人の間の信頼関係はより強固なものになっていく。
二人とは友人であったり、仕事仲間であったり、恋人であったり。
とくに、遠く離れてお互いを想う遠距離恋愛のカップルにとっては、この約束だけが日々を乗り越えるための力になるのだろう。

「約束」って、活力の源だったのか。

僕が16年前に書いたエッセイだ。
これを300字以下にし、タイトルもつける、という課題。


まいまいままさんの解答

この課題に取り組んでくれたのが、まいまいままさん。
ご家庭で起きるできごとを洗練された笑いに変え、ちりばめられた悪態さえウキウキ読める筆致で描く、日常エッセイのマジシャンだ。

「楽しそう~!」のひとこととともに、課題にチャレンジしてくれた。
ご本人の了解を得たので、この場にまいまいままさんの解答を晒し…もとい、公開しよう。

タイトル:活力の源、約束

「約束」って何なんだ?

「ある物事に関してあらかじめ取り決め、将来それを変えないことを互いに誓うこと」(小学館国語大辞典)

互いに?

ということは、
「もう二度と××しない。ごめん。約束するよ」
「××円貸してくれ!必ず返すから。約束するよ」
 というような一方的な約束は約束でないということになる。
 
逆に言えば、
「次は×月×日に会おうよ。約束しようね」
 「仕事いっしょにしよう。がんばろうよ。約束しようね」
ときちんと互いに誓いあう約束は、同じ約束でも守らなくてはならず、果たさなくてはならない。

その約束を果たすたび、二人の信頼関係はより強固なものになっていく。

「約束」って、活力の源だったのか。

(まいまいままさん作・289字)

この課題には正解はなく、300字以下の制限さえクリアしていればOK。
まいまいままさんの解答は289字、クリア!
いやいや、まいまいままさんにそんな低次元な評価は失礼だ。

講評

まずすばらしいと申し上げたい!
文意を変えず、文章全体の流れも失わずに289字に縮めたのはさすがだ。

まいまいままさんは、課題文中の「 」の4例文はそのまま残した。
このため、「約束ではない約束」と「約束中の約束」を明確化することができ、読者としては読み進めやすいだろう。
約束とは何かを明確にすることはこの文章にとって必要だからだ。

いっぽうで、残された字数が少なくなったために、「約束ではない約束」「約束中の約束」が帯びた雰囲気や、それゆえ破られやすい/守られるべきについての文を落とさざるを得なくなった。
ここは文章全体にとって大切な箇所でもあるので、惜しいところだ。

タイトルはメンバーシップ「エディターコース」の教えを無視した独自のつけ方だが、文章全体を代表するキーワードを埋め込みながら簡潔かつ明瞭であり、まったく問題ない。

総じてすばらしい解答だ。
なにしろ、その日のうちというスピード提出だった。
他人の文章をいじるのはとても骨の折れる作業なのに、だ。
しかも今回は5字に2字は削らねばならず、かなり大変だったと思われる。

すばらしい解答と、公開可というイバラの道を選ばれたまいまいままさんに、ぜひ皆さん大きな拍手を!

へんいちの解答

解答というか、僕がやるならこんな感じ、という一例だ。
まいまいままさんの解答を見てから後出しジャンケンのように作ったのではなく、あらかじめやってみたものだ。

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