【一曲入魂】 #2. I Always Wanna Die (Sometimes) - The 1975
第2弾は、The 1975 の「I Always Wanna Die (Sometimes)」です。
第1弾は Rihanna, Kanye West, Paul McCartney の「FourFiveSeconds」についてつらつら書いたので併せてぜひ。
The 1975 というバンドは、自分にとって劇薬だと思っていたので、意図的に避けてきました。とは言ってもアルバムは聴いていましたし(ながら聴き)、2022年の『Being Funny In A Foreign Language』は、バンドアンサンブルがキレイだったのと、何よりストレートなリリックに魅了されてかなり聴いてました。特に「I'm In Love With You」は当時めちゃめちゃリピートしていました。
去年カナダのバンクーバーに留学に来てから、環境の変化もあって The 1975 が妙に聴きたくなりまして。それで改めてちゃんと聴いてみると、予想通り、フロントマンの Matthew Healy は実は俺そのものだったことが明らかになっていきました。俳優の Matthew McConaughey も大好きなので、この2人をとって、カナダ生活でのイングリッシュネームを Matthew にしたくらいです。
さて、儚くも美しいこの曲の最大の魅力は、タイトルにもあるように、"Always" なのか "Sometimes" なのかハッキリしないところだと思います。以下の Genius の動画で本人が触れているように、誰でも「死にたい」と思ったことがあると思います。その深刻度も頻度も人によって全く異なりますが、それは全く悪いことではないし、悩むことでもない。「死」は常にすぐそこにあって、それが「いつも」現れるか、「たまに」現れるか、そんなのどうだっていいことな気がします。そういった精神状態を、ポジティブに(あるいはニュートラルに)受け入れられば、それでいいじゃないですかね。
「いつも」と「たまに」のこの矛盾、何か聞き覚えがあると思ったら、Oasis のデビューアルバム『Definitely Maybe』でした。
Oasis のこのタイトルは、ギャラガー兄弟のいい加減さ、言葉のテキトーさを表しているのだと思っていましたが、実は、感知できないもの、予測できないものに関しての哲学的な態度が反映されている気もしてきました。すべてのものを白黒つける必要はなくて、「絶対そうだって。たぶん、知らんけど」と、どちらにも耳を傾けられる方がよっぽど大事です。ブリッジの歌詞でも、”If you can't survive, just try"(訳:生きられなくても、いいから頑張れ)と歌っていて、案外投げやりです。でも、自死が目の前に迫っている人に対してかけてあげられる言葉って、たしかに "just try" くらいしかないのかもしれません。マンチェスターのバンドマンはそういう人たちなんでしょうか。たぶん、知らんけど。
もうひとつ、好きなラインがあります。"Am I me through geography?"(訳:俺は地理の産物なのか?)です。訳が難しいんですけど、つまり、「人間は(意思や選択など一切関係なく)、生まれた場所と時間によってのみ定義される生き物では?」という問いかけです。先に触れた動画でも本人が触れていますが、インドで生まれたらヒンドゥー教を、サウジアラビアで生まれたらイスラム教を、500年前のノルウェーで生まれたら雷神ソーを信じていた可能性が高いということです。宗教にしても何にしても、全ては場所と時間によって定義づけられるというのが彼の見方です。それには激しく賛成です。今の時代、世界各地で争いが起き、さまざまな格差がある中で、その中で生きている人たちのことを「かわいそう」と誰かが言うのを耳にします。その度に、「かわいそう」の言葉の意味と "geography" について考えてしまいます。
第2回でした。次はどの曲にしようかな。R&Bにしようかな。