「うたごころ」って何よ?

 この数か月間私の頭の片隅からくっ付いて離れない疑問、それが「歌心」。レッスンで多用される「歌って」という指示と同じく、私にとっては曖昧で具体性に欠ける言葉です。自分がわかっていなくても言葉にしてしまえばそれとなく格好がつく表現ではあるので、便利だけど。個人的には使用を控えたい言葉。
 ちなみに辞書で「歌心」を調べると、和歌について書いてあります。

 「自分の感情や思いを込めろ」ではない気がするのです。個人的なものを音に込めようとすると、木枠に何かを無理矢理嵌めようとする違和感が拭えません。ましてや音楽は形のないもの。メールや電話と違って具体的な言葉じゃないから、相手によって受け取り方は千差万別。そこに込めた思いや感情が180度違う方向に解釈される可能性は大いにあるわけで。
 しかし何をやるにしても、演奏に歌心が必要不可欠であり、尚且つ自発的なものであることは確かなようです。例え目の前にある音符が主旋律でなかったとしても。

 子供の頃は何の疑問も持たず自然にできていたようです。それが出来なくなって早ウン十年。演奏楽器の変化と、環境の要因は少なからずあったでしょう。
 まず「できなくなった」と気付くのに時間が掛かって、そこから解決策を探し始めたときの気持ちはさながら『魔女の宅急便』で飛べなくなったキキ。最近ようやく見えてきたのは、「うたごころ発揮に必要とされるものは読解力と国語力なのではないか」ということ。
 まだ母国語が日本語である人の演奏しか私の中にはサンプルがありませんが、普段文章に触れる機会の多い人とそうでない人の演奏には違いがあるような気がするのです。よく算数の文章問題を解くのに国語力が必要とされる話を耳にしますが、演奏もそこに通じるのでしょうか。
 繋がらないフレーズに奮闘していた時、数分だけ音読をして、それから改めて弾いたら、それまでの奮闘が嘘のようにフレーズが繋がったことがありました。コロナより前ですが、興味を惹く出来事です。
 もし音読が演奏の歌心に関するコンプレックスや課題解消に一役買ってくれるのであれば、より効率的に練習が捗るのでしょうか。

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