大学練習室あれこれ2

前回までのあらすじ(?)

扉を開けると……

 音大の練習室にはいくつか種類があります。詳細は「大学練習室あれこれ」を御覧ください。
 教室には色々な匂いがあります。学科授業の講義室は木の机の匂い、冬の教官室の灯油ストーブの匂い、藝祭シーズンの廊下調理で染み付いた唐揚げの匂いetc.。個人練習室は扉を開けると、
・カップ麺
・汗
・香水
 3つのうちどれかの匂いでした。
 中が暗いから空室だと思って扉を開けると、幅の狭い出窓のような場所で人が寝ている時もありました。

壁の落書き

 途中で校舎が建て替えられて消えてしまったけれど、個人練習室の壁は落書きだらけでした。チャットのように、壁に書いた愚痴が人生相談のようになっていたり。作曲家の名前に次々漢字を当てはめていたり(例:肺呑(ハイドン)、美鈴九(シェーンベルク)など)。
 一番驚いたのは、壁一面に大きく、口を開けた人の顔が書いてあったことでした。他の落書きと同じように、鉛筆で。どうやって書いたのでしょう。どれだけ鉛筆の芯を使ったのでしょう。どれだけ(以下略)。色んな意味であれは怖かった。
 練習室の覗き窓にも修正液で落書きがしてありました。
 「冷やし中華はじめました」と。

閉まらないドア

 個人練習室のドアノブがガタついているのは日常茶飯事。中にはドアノブが無い練習室もありました。取っ手があるはずの場所には丸い穴が。
 どうやってドアを閉めるのかって?
 中に駐車場の車止めにしか見えないコンクリートブロックが置いてあり、部屋の中に入ったらそれを蹴ることで移動させ、ドアを閉めていました。
 当然のことながら木の床は擦り傷だらけです。

形あるものは消える

 在学中に工事が行われ、これらボロいながらも愛すべき校舎は姿を消し、数年後綺麗に生まれ変わりました。ON/OFFしかなかった冷暖房のスイッチが温度調整パネルに変わった時は本当に有り難かった。
 でも他の校舎の工事で行き場を失った資料入り段ボール箱が個人練習室の一室を占拠していた(地震を恐れなければ、辛うじて一人なら使えた)様子に、いくら校舎が新しくなっても変わらないものもあるのだなと感じたのでした。

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