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「ファッションとワインのであい」を言語化する

Vol.028
ヴィーノサローネが、イタリアワインを多くのひとに楽しんでもらうために掲げた第一のコンセプトは、「イタリアワインの“本質”にであう」です。
すでにVol.023のnoteで書いたため、是非、こちらも読んでいただきたいのですが、今回は、ヴィーノサローネが、もうひとつキーワードとしている「ファッションとワインのであい」について、綴ります。

メンズファッションの編集を生業とする主は、もう随分前から、ファッションとワインとの関係性が気になっていました。むかしもいまも、ファッションの周辺に、いつもワインがあるからです。

具体的な例を話しましょう。
ラグジュアリーブランドのショップオープンに招かれることがあります。新ショップの入口で招待状を渡すと、すぐさま飲み物が差し出されます。アルコール類はたいがい、ワインやシャンパン。ワイングラスを片手に店内を歩き、ブランドのコンセプトが反映されたインテリアや服の並べ方などを観察します。店内で待機したPRやマーケティングディレクターから話を聞きつつ、新しいショップの魅力を自分なりに解釈して伝えるほか、いま手にしているワインにもコメントすることがあります。

ブランド=ファッションとワインとのつながりをさらりと読み取れれば、ブランド関係者は悪い気はしないでしょう。ワインとブランドとの関わりが特に密接でない場合でも、ブランドのイメージにあわせて、ワインは選ばれているのだから。

そのような場面は、イタリアに行くとさらに広がりを感じます。ラグジュアリーブランドだけではなく、個人経営の小さなブティックのレセプションでも、ワインは欠かせません。オーナーが選んだワインは、店の雰囲気やファッションとマッチしていることが多く、いつも感心します。

さらに一歩進んで、「ファッションとワインのであい」は、ワインそのものからもとらえることもできます。つまり、ワインの味覚や品種、色合いの特徴から、スタイルを関連づけることです。

先月開催された「カステッロ・ディ・モンテポ」のワイン試飲会でのひと幕です。
トスカーナ州のモンタルチーノに所有していた銘醸ワイナリーを、近年、フランス企業に売却し、新たな道を歩みはじめた「カステッロ・ディ・モンテポ」。いま、「カステッロ・ディ・モンテポ」のオーナーであるビオンディ・サンティ家は、それまで育ててきた極上品種のクローン“BBS11”を使い、最高のワインを多彩に造り出しています。“BBS11”とは、サンジョヴェーゼ・グロッソのクローンの意味。「カステッロ・ディ・モンテポ」は、クローンの使用権を独占しているため、圧倒的優位にワイン造りを継続しています。

そんなビオンディ・サンティ家の後継者、タンクレディ・ビオンディ・サンティさんが、試飲会で自社のフラッグシップワイン“スキディオーネ”を、あまりにも華麗に表現しました。

タンクレディさんいわく。
“スキディオーネ”を味わうといつも、『スーツを着た紳士』の姿を思い浮かべます。骨格のしっかりとしたサンジョヴェーゼ・グロッソは、クラシックなスーツを表し、ほかにブレンドしたカベルネ・ソーヴィニオンはエレガントなシャツで、メルローは正統的なネクタイ。厳格な紳士のようでエレガント、洗練された重厚な味わいを感じます」

この言葉をすぐそばで聞いた主は、これこそファッションとワインの接近だ、とうれしくなりました。ワインを探求したすえに導き出された、まさに「ファッションとワインのであい」です。

ヴィーノサローネは、実店舗を持たずにベイスのみでワインを販売するため、買い手にワインの実感が伝わりにくい課題を抱えています。それを克服するため、ワイン1本1本の背景にある「ワイナリーの歴史」「造り手の哲学」「品種の個性」「みんながハッピーになれるワインとはなにか」といったコンテンツをとおして、「なぜそのワインを販売しているのか」を言語化しています。このnoteです。

試飲会でタンクレディさんが発した言葉は、「ファッションとワインのであい」が、リアリティをもった瞬間でした。クラシックなスタイルはもちろん、より広範囲に「ファッションとワインとのであい」の可能性を、今後も探っていきたいと思います。

右がタンククレディ・ビオンディ・サンティさん。ビオンディ・サンティ家の7代目。
197㎝の身長に加え、ノーブルな雰囲気に主は飲み込まれそうでした。

Instagramもどうぞよろしくお願いします。
次回の“ディアリオ ヴィーノサローネ”に続きます。


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