見出し画像

ウクライナのお味噌汁?【ボルシチ】

Всім привіт!
皆様、こんにちは。

お待たせ致しました!
ついにウクライナの国民食と言われるボルシチの出番がやってきました。
私もまだボルシチ歴約8年のペーペーなので勉強中の身ではありますが、現時点で我が家の定番となっているレシピを皆様にシェアさせてください。


ボルシチでは通じなかった・・・

そうです、よくある話ですが
かつて夫に【ボルシ】と言ったら通じませんでした(涙)

Борщ の 【щ】は”シ”を強く鋭く発音した結果、小さな”チ”がおまけで飛び出したような発音になります。
例えば、『何』にあたる【Що】は”シチョ”と発音します。
でもボルシチの場合は”ボ”の部分がアクセントで強く発音され、しかもその後に巻き舌の【р】(rrrrrr) が続きますので 【щ】の音は限りなくおまけのような存在となります。つまり"チ!"とはっきり言うことはないのです。
ちなみに英語表記は Borsch, Borshch, Borsht 等となることからも""ではないのがおわかり頂けるかと思います。

とまあ、あれこれ言いましたが、みなさんご一緒に。さんはい!
Борщ!!!

ボルシチとは

義母がつくるボルシチ、レストランのボルシチ、ファストフード店のボルシチなど、とにかく様々なボルシチを食べてきましたが、ずばり正解はありません。
家庭の数だけ、お店の数だけボルシチの味があり、そして地域によっても特色があるのです。
例えばドナウ川沿の新鮮な川魚が手に入る地域では魚からブイヨンをとったり、ポルタヴァではハルシュキという小さなニョッキを入れたり、チェルニヒウでは豆を入れたり、リヴィウは牛肉ブイヨン派だったり。
日本で地域によって出汁や味噌の文化が違うようなものです。具材もいろいろ、出汁もいろいろ、心身に染み渡るそれぞれのお味噌汁がありますよね。
ボルシチもそういう存在なんじゃないかと私は思っています。


ハルキウの実家のボルシチ
大きな黒パンの器に入ったボルシチ
スメタナ,ニンニク入りサロ(豚脂)のペースト,チリと共に
困ったらここ!
ファストフードチェーン【プザタハタ】のボルシチ
空港でも最後の最後までボルシチ
我が家のボルシチ
ディルが苦手な私はニンニクの芽をトッピング


赤くなかったボルシチ

目を惹きつける鮮やかなルビー色がお馴染みのボルシチも最初から赤いわけではありませんでした。
ボルシチが初めて歴史上の文献に登場したのは、16世紀にドイツ人商人Martin Grunewegがキーウを訪れた際の日誌だと言われています。
ちょうどその頃には東ヨーロッパ地域で食用ビーツの栽培が広まり、寒さに強く保存が効く、身体にも良い、スープにほのかな甘味と鮮やかな色を加えてくれるということで見事にボルシチの仲間入りを果たしたそうです。時はスペイン大航海時代でもあり、アメリカ大陸から流入してたジャガイモもそれまでのカブに取って代わりメンバー入り。さらにトマトが使われるようになるのは19世紀のことだとか。
また諸民族の往来が活発だったコサック時代にニンニクなどハーブ類が加わり、より香り豊かなスープになったと言われています。
こうして歴史の波に揉まれながら現在の赤いボルシチは確立されてゆきました。

じゃあ赤くなる前は何色だったの?と気になりますよね。
なんと【緑】でした!
諸説ありますが、ボルシチとは古代スラヴ語の【bŭrščǐ 】(hogweed: ハナウド属) が語源となっているそうです。(ちなみにウクライナ語でもhogweedはборщівник)
ハナウドを発酵させたものとそこから出る水分をスープに利用していたため、酸味とエグ味の強いスープだったようです。ちなみに現在も赤いビーツを発酵させてボルシチに加えるレシピが存在します。
この”赤くないボルシチ”は日本でも緑のボルシチや夏のボルシチとして知られていますが、実は緑のボルシチこそがボルシチのご先祖様だったと言えそうです。
緑のボルシチについてはまたいつか。

義母が実際に作る【緑のボルシチ】のメンバー
スイバの葉など

材料(4-6杯分)

  • 豚の骨つきスペアリブ 300-400g 

  • 水 1.5L

  • ローリエ 1-2枚

  • ニンニク 3片

  • ビーツ 1個 (小ぶりなら2個)

  • ニンジン 1/2本

  • ジャガイモ 1-2個

  • キャベツ 1/4個

  • トマトペースト 大さじ1

  • トマトジュース 適量

  • 植物油 適量 (あればひまわり油)

  • オールスパイス お好みで

  • パプリカパウダー お好みで

  • ドライプルーン 2-3粒

  • ディル、イタリアンパセリ、ニンニクの芽、青ネギなど

  • 無糖ヨーグルト

補足

  • お肉は豚バラブロックなどでも美味しくできます。鶏肉もさっぱり仕上がるので私は好きです。

  • ニンジン、キャベツ、ジャガイモは基本ではありますが、玉ねぎ、赤パプリカ、豆類、キノコ類などを使うこともできます。日本ではなかなかお目にかかりませんが、義母はウクライナではパースニップを加えます。

  • トマトペーストは多くのレシピで使われます。じゃあトマトケチャップは?と義母に尋ねたところ、ケチャップを使うと”ケチャップスープ”になってしまうとのことでした(笑)

  • プルーンではなくドライ洋梨を使うこともできますが、プルーンの方が日本では見つけやすいので採用しています。”カレーにリンゴ”的な要素です。

作り方

  1. 豚肉、ローリエ、ニンニク、塩大さじ1、水を鍋で茹でる。沸騰したら灰汁を取りながらさらに30分弱火で加熱し、しばらく休ませる。この工程を前日に済ませておいて蓋をしてひと晩おくとさらに良い。(ローリエとニンニクは取り除き、季節によっては冷蔵庫へ)

  2. ジャガイモを2cm角に切って水に浸しておく。

  3. ニンジン、ビーツを千切りにする。(パースニップ、パプリカ、玉ねぎ、キノコ類もこの工程に含める)

  4. 3 の野菜を植物油を引いたフライパンで火が通るまでよく炒め、トマトペーストと4等分ぐらいに切ったプルーンを加えてよくなじませる。

  5. 鍋から肉を取り出し、ブイヨンだけ再加熱しジャガイモを茹でる。

  6. その間にお肉を骨から外し一口大にカット、キャベツは千切りに。

  7. ジャガイモに火が通ったら4 のフライパンの中身を全て鍋に投入する

  8. 肉、キャベツ、水分が足りなければトマトジュースを適量加えて一煮立ちさせる。この時にお好みでオールスパイスやパプリカパウダーを少々加え、1 で取り出したニンニクをほぐして鍋に戻す。水煮のお豆があればここで投入。

  9. 塩で味を整えながら、弱火でさら15分はコトコトしましょう。

  10. 時間があれば火から下ろし蓋をして最低30分休ませる。

  11. お皿に盛り付けて、お好みのハーブとヨーグルトを添えたら完成!

補足

  • 白い洋服や白いまな板には注意してください。ビーツの色はなかなか落ちません!!!

  • 1 の工程は市販品で代用してもOK。私はコストコで買えるチキンストックを使うことがあります。

  • お野菜は基本的に同じ大きさに切りましょう。現地では野菜おろし器をを使ってビーツやニンジンをガリガリ削る方が多いです。

  • 8 のニンニクとスパイスはお子様が召し上がる場合などは省いて大丈夫です。反対にお好みで増量してもOK。


この時は骨つきの牛肉を使用
義母は包丁で千切り派でしたが
日本に来てからはおろし器派に転向しました
玉ねぎ、ビーツ、ニンジン、パースニップ
ひまわり油で炒めます
あっという間にビーツカラーに
全て鍋に投入して煮込みます
できあがり!!
付け合わせとしてニンニクの芽に塩をつけながら食べます
カレーの福神漬け的な存在?

やっぱり2日目が美味しい

カレーなど他のスープや煮込み料理がそうであるように、ボルシチもやはり2日目が美味しいです。お野菜の旨みやとろみが溶け出すのでしょうね。
ご紹介しているレシピは4-6杯分で多すぎると感じる方もいらっしゃるかもしれません。でも2日目3日目とどんどん味に深みが生まれてきますので、その変化もお楽しみ頂くために多めに作ることをおすすめしております。

さいごに

随分と長くなってしまいましたが、最後までお読み頂きありがとうございます。
今回ご紹介しているボルシチはあくまでも私が義母から教わったかなりベーシックなレシピです。今後もいいなと思った材料や工程は取り入れて進化させていきますので、その都度こちらでアップデートさせてくださいね。

まずはもっとお手軽に本場の味を試したいという皆様には、当ウクライナ雑貨店ヴィノクにてウクライナ産ボルシチの素を含む【ウクライナの恵みセット】を販売中です。どこのスーパーマーケットでも買える、肉・じゃがいも・キャベツを最低限用意して頂くだけでご家庭で簡単に本格ボルシチをお楽しみ頂けますよ。

ところで、義母は日本に来てからは”これはスープボウルだから問題ないわよね??”と言ってお椀にボルシチをよそってくれます。
ほら、やっぱり味噌汁のお友達なのかも(笑)
皆様も肩肘張らずに、身近にあるもの冷蔵庫にあるものでチャレンジしてみてくださいね。

До побачення!!
それではまた!

↑義母や友人がスメタナの代用品として使うヨーグルトはこちら

↑ひと袋が大さじ1 分なので使い切りで便利。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?