なぜベトナム人は過剰なまでに家族を大事にするのか? ~人称代名詞は家族主義維持装置である!?~

前回はベトナム人の過剰な家族主義の理由を社会的側面から考察してみましたが、今回はベトナム語の側面から考えてみたいと思います。実はベトナム語の人称代名詞の歴史や使い方を振り返ると、家族主義と強いつながりがあることがわかります。

人称代名詞は家族内のランク付けの言葉である

ベトナム語の人称代名詞は儒教の影響を強く受けており、親、兄弟、親族などに上下関係をつけ、区別するためにつけた言葉が始まりだと考えられています。

その区別の言葉が最初は「家族」という小さな単位から親族を含む「一族」へと広がり、さらに「村落」から「社会」へと広がり、現在の「社会全体の構成員(あなたとわたし)」に対して使われる言葉=人称代名詞が出来上がったと考えられています。

要するにベトナム語の人称代名詞は「家族のランク付けの言葉」がもとになっているということです。ベトナム語の人称代名詞のほとんどが兄弟や親族に関する名詞が由来となっているのはこの家族のランク付けがもとになっているからだと考えると合点がいきます。

「あなたとわたし」によって家族から逃れられなくなる

ベトナム語の人称代名詞は家族・親族間の上下関係を社会全体に投影した言葉です。この人称代名詞の性質によって、言葉と家族の深い結びつきが常にベトナム人の頭の中にあります。

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