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ミントとミルクと卵とバター

 「これさえあれば大丈夫」なんていうものは私の中には存在しないから、いま目の前の幸福を逃すわけにはゆかない、そのために、今朝もポットでお茶を淹れるのです。

 5月も後半の朝。我が庭に今年もちゃんと顔を出してくれたミントを一枝、それに母が先日どっさり持ってきてくれたカモミールの花を摘む。ティーポットにカモミールとミントを入れて熱湯を注ぎ、少し待つ。カップに注いで好みのミルクを入れればカモミールとミントのミルクティーのできあがり。

 ハーブティーはミルクなしのストレートで飲むのもいいけれど、私はコーヒーにも紅茶にもハーブティーにもミルクを入れるのが好き。ちなみにカモミールにもミントにも心身をリラックスさせる効果と胃腸を整える効果があり、食べ過ぎた時にはミントティー、眠れぬ夜にはカモミールティーなどと、そうやって自分を労わることもできる。もちろんドライのティーバッグでも。

 さて、爽やかなミントには卵やバターなどのこっくりした食べ物がとてもよく合う。ゆで卵をつぶして酸味のあるマヨネーズで和えたのをやわらかなパンで挟んだサンドイッチや、ミルクとバターをたっぷり使ったオムレツなどは、すごくぴったり。
 卵がなくとも、朝、ミルク入りの暖かいハーブティーにバターの香る焼きたてのマフィンやスコーンなどあれば私はほんとうに幸福、毎日を生きるために、朝のほんの一瞬でも、そういう幸福を積み重ねてゆくことが何よりも大事なのだと思う。ひとときの豊かな食事、心を満たす本、ふかふかの布団での眠り、たっぷりのお湯に浸かるお風呂の時間。

 このごろ朝の5時にはもう明るくて、いつのまにか夏至に近づいていることを知る。庭の水仙やシャガが咲いていたのはもう先月のこと、それからツツジとシモツケが咲いておわり、見上げると梅の実が膨らんでいる。庭の花も一段落かと思ったらどくだみの葉があっという間に茂り、そのうち小さばつぼみをつけ、数日前からぽつりぽつりと咲き始めた。どくだみは摘むときにすごい匂いだけれど花器に入れてみればどの花よりもぴんと立ってとてもきれいに咲いてくれる。

 子育てがうまくいかず一人反省しても、今の生活が不毛に思えても、目の前にある小さな幸福を愛でるということを諦めたくないと思う。


あなたをときめかせることができたのなら、ほんとうに幸いです。